A Solitary Battle High Speed Stage第27話


やっぱり、あれだけのバトルや逃走劇を繰り広げて身体がよっぽど疲れて

居たのであろうニールは夕方どころかそれこそ真夜中に目を覚ました。

(結構寝過ぎたか……。でも、この時間帯なら潜入するのには丁度良い時間だな)

窓の外は現代の地球の様な真夜中も起きている人間が多い景色等では無く、

普通の生活をしていればやはり眠くなる夜にはきちんと眠っているのだろう、月明かりでしか

把握出来ないもののそれでも人気が無い事が良く分かる静けさと闇が支配していた。


が、良く考えてみれば今からこのまま潜入するのには不安しか無い。

潜入先の内部情報も把握出来ていない上にもっと何の研究をあの場所でしているのかと

言う情報も手に入れたい所である。

(急ぎたい所だが、今の俺1人で乗り込むのはちょっと無理か。せめて内部情報が分かった上で

乗り込む事が出来れば……)

ニールはしばし考えて、どうにかならないものかと作戦を練る。

(余り聞き込みとかの目立つ行為は騎士団やギルドの連中に見つかりそうだから避けるべきか。

それにあの建物は警備が厳重なだけあって、恐らく一般人が入り込めそうな場所では無さそうだ。

だったらやはり強行突破……いやいや、それこそ絶対にやってはいけない事だろう。

とすればつまり行き着く答えは……)


その10分後、ニールはあの建物の様子を窺う為に港にやって来ていた。協力してくれそうな人物も

居ないし、あのユフリーと言う女は何処かキナ臭い感じだ。ましてやギルドの受付にはほとんど

関わって無いと彼女は言っていたものの、それこそ何処まで信じて良い情報なのか分からない。

むしろ、酒場がギルドの役目を兼ねているのであれば、ユフリーとギルドで顔見知りになっている

人間が居る可能性が非常に高い。

(結局、回り回ってこう言う展開になってしまったか。まぁ、考えてみればこっちの方が楽と言えば楽か)

そう考えながら、ニールは落ち着いて見張りの動きを観察する。資材置き場の中には歩き回る

見張りが1人、それから正面の入り口の前に直立不動の2人。

見える範囲内ではそれだけだが、恐らく他の場所にも見張りが居るだろう。

しかし、ここでずっとこうして居たって始まらない。要は上手く建物に近づく事が出来ればそれで良いのである。

(ステルス作戦しか無いか)


覚悟を決めて、ニールはまず近くの廃材の山の陰に隠れる。そこから石畳になっている地面でも

音を立てない様なスムーズでしなやか、それでいて遠くまで移動出来るだけの脚のバネを利用した

飛び込み前転で積み上げられている木箱の陰に移動。そこで見張りがこちらに来たので上手く場所を

移動して見張りの視界に入らない様に緊張感マックスでステルス作戦を継続。

(ここまでは順調だ)

建物は港に造られている物とは言え、良くある港の倉庫とは違う。何だか研究施設と言うよりは

コンベンションセンターの様な雰囲気だ。真夜中なので自分の姿が見張りにでも発見されない限りは

見つかりにくいと言う所が救いだろうか。


(でも問題はあの入り口のドアマンみたいなポジションの2人だな……。しかもドアマンはドアの横に

立っているけど、丁度をドアの前を塞ぐ様にして2人が横並びで立っているから少しでもうかつに

ドアに近付こうとすれば俺が見つかる可能性がほぼ……いや、間違い無く100パーセントだ)

ならば別の入り口を探すしか無いと考えたニールは注意深く建物の構造に目を凝らす。

すると1つだけ、何とか潜り込む事が出来そうな小窓を発見した。

あそこからなら細身の体躯をしているニールであれば何とか入る事が出来そうだったので、

見張り達に見つからない様に用心に用心を重ねてニールは素早く行動を始めた。


A Solitary Battle High Speed Stage第28話へ

HPGサイドへ戻る