A Solitary Battle High Speed Stage第25話
ニールはワラにもすがる気持ちでユフリーに頼む。
「では頼む。ただし、失礼を承知で忠告するが……俺を罠にはめようとしたりすれば
容赦はしない。良いな?」
「本当に失礼ね……分かったわよ」
いじめられていた時は、親友だと思っていた人間から裏切られてかつあげに
あったりした経験がある事から初対面の人間も用心深く疑ってかかるのも
ニールは仕方の無い事であった。
「ならそこに案内してくれないか」
だが、ユフリーは意味深な事を言う。
「いえ……今じゃ駄目。夜になるのを待ちましょう」
「何故だ?何かやましい事でもあるのか?」
ニールの問いかけにユフリーはコクリと頷く。
「ええ。その場所は見張りが多くてね。だから夜は気が緩む時間帯だから、
そこに潜入するなら夜が良いと思うわ」
「そんなに厳重な警備があるのか?」
「まぁ、結構警備体制は厳しいわね。国の研究機関だから」
「へぇ……」
だけど、油断は出来ないのでここで時間を潰すよりはその場所近くの宿屋まで行って
遠くからでも偵察をするべきだと言い、ニールは半ば強引にユフリーに道案内をさせる事に。
その途中で、ユフリーはまたまた意味深な事を言い出した。
「でも、そのギルドナンバーワンの人間は相当プライドが高いから……厄介な事を
してしまったわね……貴方は」
「厄介?」
あのエジットと言う斧使いの事を唐突に言い出したユフリーに、ニールは警戒心を強める。
「何が厄介なんだ? 確かにめんどくさそうな男ではあったが」
そんなニールの問い掛けに、ユフリーはこんな理由を述べ始めた。
「うちの酒場はギルドの受付も兼ねてるから冒険者達の情報は嫌でも入って来るんだけど、
その男は若手ホープと言われているギルドトップの人間ね。と言っても私はギルドの受付は
余り関わって無いから生年月日とかの詳しい事は知らないけど。年齢は今年で
28歳だったかなぁ? あ、でもこれだけは分かるわ。そのエジットはあの人と仲が良いわね」
「あの人?」
「この帝国の騎士団長よ」
「騎士団長? そりゃまた凄いのと知り合いだな」
「ええ。ギルドトップの実力者と言うだけあって、色々な功績を立ててるから騎士団長直々に
スカウトしてるらしいわよ。でもエジットは今の冒険者の方が楽だって言って、何時も断っているらしいわ」
(もしかして、そんな存在の奴から恨まれている今の自分は相当まずいんじゃ無いのか?)
そう考えると、早めにこの世界から地球に帰らないとますます事態は泥沼にはまって行きそうだ。
「だからそいつが俺を狙っている今の状況はまずい訳か」
「ええ、そうね。……あ、見えたわ」
そんな状況確認の会話をしていた2人の前には、港の資材置き場の奥に造られた一見
神殿の様な建物が見えて来た。
「あれか?」
「ええ。遠目で見ても分かる位に警備が厳重でしょ?」
「確かにな、余り近くに行くと見つかりそうだ。場所さえ把握してしまえば割と何とかなる。
パッと見た感じでも入り込めそうな所は幾つかある」
「分かったわ、だったら近くの宿に向かいましょう」
と言う訳で港近くの宿で身体を休ませる事にしたニールは、まずは汚れた身体を洗う事にした。
ついでに洗濯も頼んで汚れた服も洗って貰う。パンツの中に入れておいた金の入った袋と
スマートフォンは勿論取り出しておき、用意されている寝巻きに着替えて過ごす事にした。
そしてユフリーは一緒に来てくれるのかと思いきや、彼女は彼女で酒場の仕事があるのでここで別れる事になった。
「お別れだな」
「ええ。それじゃあ元気でね。何かあったらまた酒場に寄ってよ」
「ああ、それじゃあな」
2人はがっちりと握手を交わし、宿の2階の窓からニールは彼女を見送って自分も身体を休める為に
夕方まで眠る事にした。
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