A Solitary Battle High Speed Stage第24話
帝都の人間に場所を聞き、診療所へと辿り着いたニールは診察を受ける。
検査の結果軽い脳震盪を起こしているのと、打撲や擦り傷、切り傷と言った傷が
結構あったので皮袋の中身の金で治療を済ませてもらった。
(それほど大きな怪我じゃなくて良かった)
安堵の息をニールが吐きながら診療所を出ようとすると、そこに1人の男が入って来た。
「おい、そこで怪我人が出た。少し薬と包帯を分けてくれ」
入って来た男は推定年齢40代半ばの自分よりも年上であろう顔つきに、ピンク色の
髪の毛をしているガタイの良い体躯。更にあの山道で見かけた騎士団員達とベースの
作りは同じだが、装飾と装甲が豪華な鎧を身につけている事から騎士団の上位クラスの
人間である事は容易にニールにも想像が出来た。
だけどさっきの事もあってか、気になる事は気になるものの別にそこまで気にするほどの事でも
無いと思いその男をスルーしてニールは診療所の外へ。
そんなニールが男の横を通り過ぎる時に、男が何かに気がついた様な表情をしてニールの
後ろ姿を目で追っていた事は、追われているニール自身は気がつかないままに。
診療所を出たニールは再び腹ごしらえをする為に酒場……では無く、今度は表通りのいかにも
料理屋と言う出で立ちの店へと入る。木目調の店内には落ち着いた雰囲気の青いクロスが
かけられているテーブルが幾つも並んでおり、人気店なのか客で結構席が埋まっているが
騒がしくは無くむしろ静かなので落ち着いて食事が出来そうだ。
(料理を食ったら、何処かでシャワーでも浴びられる様な場所があればそこで汗を流したいもんだな)
ついでに服も結構ドロドロになって来ているので着替えたい所なのだが、運ばれて来た料理に
手をつけ始めて食べていたニールの前に1人の人物が座った。
「ここ、相席させて貰っても?」
「……ああ、構わない……が?」
料理を食べる事に夢中になっていたニールの前に現れたのは、あの集落の酒場で出会った
金髪の女店員であった。
「えっ……」
「何故ここに、と言う顔をしているわね。私は元々ここから派遣されているのよ。あそこはこの店の
チェーン店の1つ。人手が足りないから手伝いに行って、さっきここに戻って来たって訳。
さぁ、ご飯を食べたらこの店の2階にある私の部屋まで来て貰うわよ」
ニールの求めている答えを彼が問いかける前に全て話した女は、有無を言わせずに店内の混雑を
利用してニールを逃がす事無く部屋に連れて行く事に成功したのであった。
やっぱり女はニールの事を怪しい人間だと思っていたらしく、騎士団に引き渡さない代わりに自分が
何者なのかをニールは説明する破目になってしまった。女はユフリーと言うらしく、この酒場チェーンの
店員として働いているらしい。そして、この世界に生まれ育った生物なら必ず持っている筈の魔力が
ニールからは一切感じられ無かった事からおおよそニールが何者なのかと言う見当をつけ、その予想を
ニールに話して彼自身も認める事になってしまった。
「と言う訳で、俺は君の言う通り異世界から来たんだ。だから俺は元の世界に戻りたい。
このエンヴィルーク・アンフェレイアと言う世界がどう言う世界なのかは知らないが、何か元の世界に
戻れる様なヒントみたいな物は無いか?」
騎士団等に捕まってしまえば異端な人物として目をつけられ色々と面倒な事になるかもしれないと
考えたニールは、一刻も早く地球に帰りたかった。
そんな彼の質問にユフリーの口から思いもよらない答えが!!
「あくまで噂程度だけど……この帝都に、貴方がその地球って言う世界に帰る為のヒントがあるわ。それで良いなら」
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