A Solitary Battle High Speed Stage第23話
路地裏へと着地したニールは、とりあえず表通りに出る為に路地裏を歩き回る。さっき少しばかり
睡眠をとったとは言ってもまだ十分に眠れてはいなかったのだが、そこはカラリパヤットのトレーニングで
培ったこの疲れにくい身体のおかげでそこまでの疲れは感じていなかった。
だが、そんなニールにはまたもやトラブルが待ち受けているらしかった。
この帝都の地理には当然全く通じていないニールは適当に路地裏を歩き回るしか無かったのだが、
何回路地裏の角を曲がって別の路地裏に入ったのだろうと自問自答し始めた時だった。
(おい……何かやってるぞ)
ニールの視線の先には、1人の男の老人がいかにもと言う荒くれ者達に絡まれている光景があった。
その時、ニールにはその老人がいじめられていたかつての自分と同じだと言う事に気が付いた。
そう考えると、自然と足取りは荒くれ者達の方に向いていた。
「おい、何してるんだ?」
「何だぁ、てめえ?」
「見りゃー分かんだろ、金借りてんだよ」
「それはつまり恐喝じゃ無いのか?」
「ああー、うっせーなぁ!!」
荒くれ者の1人が殴り掛かってきたが、ニールはそのパンチを手で弾いてその男を後ろに投げ飛ばす。
それを見た他の荒くれ者達が色めき立ち、ニールに向かって来た。
(なかなか多いが、あの山道の時に向かって来たあいつ等程では無い事だけは確かだ!!)
1人が蹴り掛かって来たのでそのキックをして来た左足のすねを自分も左足の裏を使って蹴ってブロックし、
そのままの流れで左足を使って相手の胃袋を確実にキック。
その男が倒れた所で次に殴りかかって来た女の腕を取って突っ込んで来た勢いをそのまま後ろに
逃がして投げ飛ばす。だが次の瞬間、ニールが投げ飛ばした隙を狙って別の女がニールの後頭部に
良いハイキックを放つ。
「ぐぅ!?」
急所の塊である頭に不意打ちを食らい、そこに今度はさっきキックをブロックした男の左ストレートが
ニールの顔面へ。続いて投げ飛ばした女が立ち上がって来て今度はダッシュからの膝蹴りをニールの胸へ。
「ぐへぇ!」
最後に今まで黙っていたリーダー格らしき大男が膝蹴りでよろけたニールの頭に思いっ切りパンチを
食らわせれば、そのショックでニールは気絶してしまった。
「……あれ……」
気絶してしまったニールが目覚めたのは何処かの天井……では無く、あの時の路地裏のままであった。
すでにあの時の荒くれ者達も老人の姿も無く、どうやら倒れっ放しだったらしい。
すでに日は高く上り、喧騒が聞こえて来る。だが……。
(金とスマフォは……ああ、無事だな)
パンツの中に隠しておいたのが幸いして、どうやら金もスマートフォンも無事だった様だ。
基本的にここまでさらけ出そうとする人間はいない。金と一緒に纏めて入れておいた方が
便利だろうと言う事でスマートフォンもそこに入れておいた事が功を奏した様であった。
(くそ……やられたか。やっぱり大人数相手にするのは挟み込まれない様にするべきだったのに……油断した)
自分の慢心が原因だった。あの時大人数に山道で勝てたから、今回も勝てるだろうと思って踏み込んで
行ったらこのざまである。カラリパヤット歴20年、カラリパヤットのインストラクターの資格もインドまで行って
習得して来たのに、これじゃあ不甲斐無さ過ぎる結果では無いか。
頭もまだズキズキする。余り動かさない方が良いよなーと思いつつ、ニールは帝都だから何処かに診療所位は
あるだろうと考えて路地裏からの脱出をまずは目指して歩き出す。
しかし、そんな診療所を目指すニールの目の前にとんでもない人物がこの後姿を現わす事になろうとは、
この時のニールには想像も出来ない事であった。
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