A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第39話


「ぐぅあ!」

「ま、まさか防具も駄目なのか……?」

これで6度目。それも今度は武器では無く胸当てを自分の胸に当ててみたらこの現象が発生したのだ。

「防具は触る程度なら良いけど、身につけるのは駄目って事ですか……?」

「どうもそうらしいな」

あの槍を触ってからの不可解な現象を体験した後に、他の武器や防具を整理する為にロシェルは

行動し始めたのだがまたもやその不可解な現象に襲われる事になったのである。

あの時の槍に始まりコラードが使っていた物と同じ種類のナイフ、それからロングソードにショートソード、

ハルバード、長弓に短弓に斧と言った全ての武器が駄目だった。

一瞬触る程度なら良いのだが、しっかりと手で握るとあの不可解な現象が起きて拒絶反応が出てしまう。


そして防具関係の方はもっと駄目だった。

最初にロシェルが防具を持ってみてその不可解な現象が起こらなかったので、どうやら防具は触っても

大丈夫だとホッと息を吐きつつ整理をする事に。

(地球でも、中世とかのヨーロッパの戦士はこう言うのを着込んで戦ってたんだよなー)

学生の時に教科書で学習して来た、地元ヨーロッパの現代までの戦いの歴史。

それを思い出しながら、ちょっとしたワクワク感もあってロシェルは胸当てを試しに軍服の上からつけてみる事にして……

その瞬間に胸全体にあの現象が襲い掛かって来たのだ。


「って事は、俺……この世界じゃかなり不利な状況になってるって事じゃ無いですかね?」

この武器庫において初めて経験したこの現象を通じて得られた答えは、どうやら自分は武器や防具の類を

装備出来ないのでは無いかと言う考えだった。

しかも、防具の場合は触るのは良いけど装備は出来ないと言うのがまた良く分からない状態なのだが

実際そうなのだから如何しようも無い。

他も試してみようと言う事で篭手やスネ当て、更には頭に被る鉄製のヘルムも着けてみようとしたのだが、

やはり装着する前に謎の現象によって装着出来ず仕舞いになってしまった。

「もっ、もう止めて良いですか? 流石に痛くてしょうがないんで」

「ああそうだな。しかし、確かにお前の言う通りこの世界で生きて行くのであれば不利な状況だろう」


例えばこれがフィクションの世界だったら、勇者が最強の武器屋防具を手に入れて魔王に立ち向かったりする

展開がお約束なのであろう。

だけどロシェルの場合はこうして自らの身体で体験した通り、武器も防具も一切装備不可能と言う地球に

居た時には考えられない、まさにありえない事態に陥っているのだ。

「例えばこの前みたいに路地裏で襲われた時の様に、この先で何かの敵に立ちはだかられた場合には俺の場合……

この肉体の格闘だけで勝負するしか無いって事ですよね?」

「そう言う事になるな」

しかもロシェルが遭遇する可能性がある敵と言うのはそれだけでは無い。

ロシェルはまだ出会った事は無いのだが、このエンヴィルーク・アンフェレイアと言う世界にも野生動物の類が居る。

地球にも熊やライオン、シャチやサメと言った凶暴で恐れられる動物は居るが、仮にこれが地球であればそうした凶暴な

野生生物に対応する為のそれなりの装備をしっかりとロシェルは身につける事が出来るのでそこまでの心配は無い。


が、装備が出来ないとなれば心配は遥かに大きくなるのは想像に難く無かった。

「それに、お前の世界には居ないと言っていたが……この世界には魔物が存在するからな。野生動物が魔力の

異常暴走をして、突然変異によって凶暴化してしまった異形の存在が」

「そ、そう……ですよね!?」

クリスピンの言う通り、野生動物の他には地球では考えられない魔物と言う存在がこの世界にはあるのだ。

「凶暴化したって事は、人間を襲うって言うのは当たり前なんですよね?」

「そうだが。だからお前はかなり不利な状況になるのだ。エスヴァリーク帝国に向かうと聞いた時はまだこの事を知らなかった

訳だが、この様な不可思議な現象が出てしまうと分かった以上……何かしらの対策を練らなければいけないだろう。

それはお前が1番感じている事だと思うがな」

「……はい」


このまま丸腰でエスヴァリーク帝国に向かうのは余りにも危険過ぎる。

幾らロシェルが軍人であり、ムエタイ使いであるとは言えどもムエタイ最強なのはあくまで人間同士の戦いの話で、

この世界でまだ目にした事が無い野生動物や魔物に対して圧倒的な力の差があるのでは無いのか、と言う事は

地球の野生動物の例えに当てはめてみれば容易に想像がつく事だった。

しかも、爆発事件だってまだ解決していないので今の状況ではまだエスヴァリークに向かう事は出来ない。

「移動手段とかはそのエスヴァリークに行く時にまた考えますけど、だったら……誰か魔物の対策が得意な傭兵家業の

人とかに護衛をお願い出来るだけの金を稼ごうと思いますよ。爆発事件の容疑が晴れたらその時から改めて……ですけど」

「ああ、それが無難だろうな」

とにかく、武器や防具が装備出来ないと言う事が分かっただけでもリスクを回避出来たと言えるので、ひとまずは触るだけなら

大丈夫である防具の整理をクリスピンはロシェルに任せる事にしたのであった。


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