A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第38話


手合わせも終了して、コラードは城下町でギルドの仕事を引き続き請け負う元の生活に戻って行った。

ロシェルは手合わせ終了後にコラードを見送ってから、クリスピンに仕事を請けさせて貰える事になった。

手合わせで負けてしまった事については確かに自分のプライドをズタズタにしてしまったが、だからと言って

落ち込んだままで居る訳にも行かないので、今は気持ちを切り替えて城の手伝いをする事で

少しでも早くそのショックから立ち直れる様にしようと意気込んでロシェルはクリスピンに仕事の内容を尋ねる。

「それで、俺はまずどうすれば良いですか?」

「そうだな……武器庫が最近色々と物が多くなって来たから、武器庫の整理を頼むとするか」

「武器庫……ああ、丁度良かった……」

「え?」


丁度良かったとは一体どう言う事なのだろうか? と疑問に思ったクリスピンが率直にそのまま尋ねてみると、

ロシェルはその理由を話し始める。

「さっきは負けはしましたけど、これでも俺も軍人ですからね。この世界の武器には非常に興味がありますから、

色々な武器を見てみたいと思ってたんですよ。本当はコラードさんに武器屋に案内して貰う予定だったんですけど……」

「あの爆発事件が起こってしまったから行けなかったのか?」

「そうです」

「そうか。なら私が付き添うから説明がてら整理を手伝って貰おうか」

「分かりました」


と言う訳で2人は武器庫へと向かって歩く。

その武器庫は鍛錬の時に取りに行きやすい様に、鍛錬場の近くに造られているなかなか大きな部屋だ。

さっきのコラードが使っていた斧やナイフ、それからオーソドックスなロングソードや槍、弓等の騎士団で使用している

全種類の鍛錬用の武器を保管しているらしく、他にも幾つかの鍛錬場があってここと同じく別の武器庫がその近くに

それぞれ設置されているのだとか。

「1日で全てやれとは言わないから、取りあえずは1番狭いこの場所からやって貰う」

「それでも結構ありますね……」

1番狭い……とクリスピンの口から出て来たそのセリフを、ロシェルはにわかに信じる事は出来なかった。


グルリと目で見える範囲を見渡してみるだけでも、かなりの数の武器が保管されているのは一目見て明らかだったからだ。

「これでこの城にある武器庫で1番狭いレベルなんですか……」

「そうだ。さぁ、私も手伝うから一緒に整理をして行こう」

もはやその光景が当たり前のクリスピンにとっては如何と言う事は無いので、ロシェルをサポートすると言う形で

武器庫の整理を始める筈だった。

……のだが、この後に信じられない出来事が2人の身に襲い掛かって来る事になろうとはこの時は当然2人は予想していなかったのだった。

「それじゃあ、この辺りの使われていない武器をまずは向こうの方に移動したい。通路は狭いから武器をぶつけない様にしてくれ」

「はい」

この世界にやって来てからこうして武器を手に取るのは初めてだなーと思いつつ、まずは目の前の壁に立てかけてある槍の柄を

2本両手でギュッと握り締める。


……その瞬間。

「ぐぅお!?」

「な、何だっ!?」

それはいきなりの事だった。

ロシェルが槍の柄にそれぞれの手をかけた途端、手のひらの部分からいきなり何かが破裂する様なパンッと言う音と共に

フラッシュライトの様な光が一瞬現われ、更に手のひらに鋭い痛みがこれも一瞬だけだが走ったのだ。

「な……んだよ、これっ!」

「何だ!? どうした!」

驚きの声を上げて、クリスピンがロシェルの元へと駆け寄る。

「いや……分かんないです。俺がこの槍に触ったら、光と音と痛みが同時に襲って来て……」

「何……?」


ロシェルの証言にクリスピンは訝しげな表情をしながら自分でも黒手袋に包まれた手で槍を触ってみるが、特に変化は起こらない。

「……何も起こらんが」

「えっ? そんな!」

「ほら。私が触ってみても何も起こらないが」

ロシェルが取り落としてしまった槍の柄を、実際にロシェルの前でクリスピンは握ったり離したりしてみるが確かに何も変化は起きない。

「ちょ、ちょっともう1回触ってみても良いです?」

「ああ、そうしてみてくれ」

しかし、万が一の事があっては危険なのでクリスピンには2歩程下がって貰い、ロシェルは再度槍を握ってみる。

「うぐぁ!!」

「うお!?」

結果はさっきと全く同じ。ロシェルが槍の柄を握った瞬間、光と音とそして痛みが再び襲って来たのだ。


「い、一体これはどう言う事だ!?」

「俺に聞かれても困りますよ! ああくそっ、痛ってえな!」

どうやら、槍には触る事が出来ない何かがロシェルにはある様だ。

しかし肝心のそれがロシェルにもそしてクリスピンにも分からないままなのだ。

「駄目だ、槍は無理みたいですよ」

「ううむ、弱ったな……。それならば別の場所を片付けてくれるか?」

「分かりました」

ならば……とクリスピンは別の武器を片付けて貰う様にロシェルに指示を出して作業を改めて開始する……つもりだったが、

まだそこで別の問題が起こってしまう事になるのであった。


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