A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第9話


(俺が殺人!?)

冗談じゃ無い。そんな質の悪い冗談があってたまるか。 何としてでもここから出して貰わねば……とリオスは頭を回転させる。

けど、現実は現実。そうそう都合良く脱出の手立ては見つかりそうに無かった。

木の壁と床で出来た牢屋に、明かり取り用に作られた窓が1つ。そこには鉄格子がはまっており、入り口には見張りの騎士が1人。

リオスは脱獄とか脱出に関しての知識やテクニックはあいにく持ち合わせて居なかったし、そうしたものが

あったとしても見張りが居るのであればうかつな行動も取れやしない。

軍人だからと言っても色々なタイプの人間が居る。

確かに体力トレーニング等もするのだが、例えば軍の内部に存在している音楽隊等の専門性を活かした職種についている

軍人だって多数居る訳だし、後方支援の人間で事務処理メインの仕事をしたりする軍人も大勢居る。

リオスの様に軍人が全員戦える人間と言う訳では無いと言う事も、そうした軍の編成を見てみればやはり事実だ。

(あーあ、何でこんな事になったんだ……)

もう踏んだり蹴ったりだなとリオスはふて腐れてしまい、ゴロンと壁に吊られている吊りベッドに横になる。

クールな彼でも人間。腹の立つ感情だって当然持ち合わせている。

いずれどうにかしなければならないとは思いつつも、今の所有効な手立ても見つからないので今は身体を休めておこうと

思いリオスはそのまま眠りについた。


そんなリオスが目を覚ましたのは約20分後。

「おい、起きろ」

騎士団員の声に起こされて、リオスはむくっと身体を起こす。

いよいよ事情聴取か……と思いつつも、脱出するなら何処かで隙を作るべきだとも考えつつ立ち上がった。

「俺の処遇が決まるのか?」

牢屋の外に立っている騎士団員に問い掛けると、その騎士団員は1度頷いてから口を開いた。

「そうだ。さぁ、外へ出てもらおう」

凄く釈然としないが、それでもリオスは外へ出るしか無かった。

だがこの後、リオスにとってはまさに寝耳に水の事態が!!

「殺人容疑の件だけに関して言えば釈放だ」

「は?」

思わずそんな声がリオスの口から出てしまったので、騎士団員の顔つきがリオスと同じくきょとんとしたものになる。

「不満か?」

「……いや。ただ、何故いきなり釈放なのかと言う理由が聞きたいだけだ」

そのリオスの質問に、騎士団員から釈放の理由が告げられる。

ここに囚われていた事が、どうやらリオスにとっては有利に働いた様だ。


何と、町を出ようとしていた有力者が白昼堂々と殺されたそうなのだ。

その殺した人物の仲間達は捕まったそうだが、殺した人物本人には逃げられてしまったらしい。

勿論白昼堂々の殺人だった為に目撃者も居る事は居たのだが、暗殺者の一団は顔を黒い布で覆って目元のみを

さらけ出していた為、個人個人の体格は大まかに分かっても顔までは分からなかった。

色々な体格の人間を捕まえた結果、ガタイの良い男から細身の女まで計6人。

とりあえず、捕まえた実行犯の一味に魔力が無い人間の事を聞いてみたのだが、全く知らないと言う。

魔力を使った嘘発見器にかけても反応が無かったらしいし、魔力のプロテクトもその人間達にはかけられていなかったから

これは本当だ……とリオスは説明されたのだが、その方面に詳しく無いリオスは言っている事が良く分からなかった。

「一言で言えば、俺が殺人したと言うのは間違いって言う事で良いのか?」

リオスの質問に、騎士団員は肯定の返事で答えた。


だが、殺人の疑いが晴れても「殺人容疑の件『だけ』に関して釈放となった」リオスはまだここから出られない。

何故なら、魔力を持たない人間が現れたとなればそれはこの世の常識を根底からひっくり返してしまう事になるからだ。

この町の設備ではその魔力がどうのこうのと言う事について研究出来る程の物が無い為、リオスはひとまず帝都に護送される事になった。

これが映画とかであれば、誰かが唐突に助けに来てくれたりとかしてくれるのだろうか?

そんな事をリオスはふと考えてみるのだが、馬鹿馬鹿しいと思って考えるのを止める。そんな事がそうそう都合良く起こる筈も無かった。

(そんなのは作り物の中だからこそ起こるものであって、俺がこのまま護送される確率が1番高いだろうからな。いや、その確率は100パーセントか)

結局そのままリオスは迎えの馬車が来るまで逃げられない様に再び牢の中へと入れられる事になったのだが、

飲まず食わずのままでは帝都に連れて行けないとの事で騎士団員達が食事を摂らせてくれる事に。

まさかこんな形で食事が再び摂れる事になるとは……と苦笑いしながらもさもさと食事を摂るリオスだったが、この先

どうなってしまうのだろう……と言う不安な気持ちの方が大きいのが今の事実であった。


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