A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第10話


食事を摂り終えたリオスは、迎えの馬車が来るまで騎士団の詰め所で再び拘留されていた。

騎士団員の話によれば結構な距離があるらしく、この町から帝都までは馬車でも2週間程の

時間がかかるとの事。それでも、もう帝都まで行く事が決定しているのでリオスに拒否権は無かったのだが。

エンヴィルーク・アンフェレイア史上例を見ない人間と言う事もあり、リオスをここから出す訳にはいかないらしかった。

手は拘束されていたが足は拘束されていなかったので、せっかくだし……とリオスはダンスをする振りをして

カポエイラのトレーニングをしてみる。

「何をしている?」

「俺は趣味で踊りをやっていてな。その練習だ」

「そうか。まぁ良いが……壁に穴だけは開けるなよ」

騎士団員はリオスのそんな行動を訝しがったが、こちらの世界においてもやはりダンスの練習と言う理由で

通じたのでカポエイラのトレーニングはカモフラージュとしても抜群だなーとリオスは今のやり取りで感心した。


そうしてリオスが2度目に牢屋に入れられてからおよそ20分後、帝都へ向かう馬車がやって来たので

騎士団員達がリオスに付き添う形で2人一緒に行く事になった。

馬車は地球の車と比べると乗り心地は御世辞にも良いとは言えなかったが、文句を言える状況では

無い為に黙ってリオスは乗っているしか無い。

(何だか囚人の気分だ……)

内心でげんなりしながら、窓の外を見て少しでも気分を紛らわそうとリオスは考えるが、頭の中はこれからの不安で埋め尽くされている。

騎士団員と一緒にこの馬車に乗っている事も不安を煽る原因の1つになっていた。

だが、そんな不安を一気に吹き飛ばしてしまう出来事がこの後リオスに襲い掛かって来る事など、今のリオスは知る由も無かった。


遠くで空気が震える。

それは風……と言ってもただの風では無かった。

「何だ、あの黒い煙は?」

窓の外に見えた、小さくではあるがはっきりと黒い煙が空に向かって上っていく光景。

リオスは思わずそんな疑問を口に出していた。

(あれは恐らく爆発の煙か? 何か魔術で爆発でもさせたのか……?)

焚き火などであれば白い煙が上がる筈なのだが、黒煙が上がると言うのは地球においても何かが爆発したとか大きな

災害で見られる光景だとかでイメージが良くない。リオスだって当然そのイメージを持っているため今の予想に辿り着いた。


しかし今度は別の場所で煙が上がった。しかも馬車の窓から見える限りでも明らかに今度の煙の方が大きい。

「まただ。おい、あれは一体何をやっているんだ?」

が、付き添いで一緒に馬車に乗っている騎士団員2人は訝しげな表情だ。

「妙な煙だ。しかし、他の騎士団員達が調べに行く筈だ」

「あんな黒い煙が上がると言う事は、もしかすると火事とかの類いだと思うのだが」

「その可能性は高い。ルートの変更をする可能性もある」

リオスの問いかけに騎士団員達が答えた、その時だった。


「うおあ!?」

いきなり馬車が大きく揺れた。

何かのトラブルかとリオスは思ったのだが、窓の外……しかも今度はまさに馬車の目と鼻の先の家が爆発でぶっ飛んだ。

「何事だ!?」

これには付き添いの騎士団員達も馬車を降りて確かめない訳にもいかず、リオスに馬車から降りるなと言付けしてから

爆発した家の方へ馬車から降りて向かって行く。

リオス自身も馬車から降りない方が賢明だろうと思いつつも、次の瞬間馬車がいきなり走り出した。

「うわあ!?」

馬車から転げ落ちそうになったリオスだったが、軍人として鍛えられた反射神経とバランス感覚で何とか踏みとどまった。

どうやら、今の爆発のショックとその後の人々が逃げ惑う状況に馬が暴れ出してしまった様だ。

「うわ……くっ!!」

御者は一体何をやっているんだと思いつつも、この状況では逆に馬車の外に出ないと危険だと判断したリオスは

馬車のドアを自慢の脚力で蹴り破った。

そしてそのまま間髪入れずに、馬車からショックの少ない飛び降り方で石畳の地面に身を投げる。


「ぐっ……!」

何とか受け身を取って着地したリオスはすぐに馬車から離れる。その馬車は暴走したまま何処かへ走り去っていってしまった。

「はぁ、はぁ、はぁ……何が起こっているんだ一体……」

息つく暇も無いままに、リオスはひとまず周りの状況の把握をする事に。

さっきの爆発があった家の場所からは少し離れてしまったが、まだ黒い煙が立ち上っているのが見える。

それに、さっきの2回の爆発に関しても気になる所だ。 一体、誰が何の目的でこんな事をしているのだろうか?

と言うよりも、このままでは自分の身まで危険だとリオスの本能が警鐘を鳴らしている。

(とにかくこの状況を調べてみる必要がありそうだな。これは何かの前触れか?)

自分でも気が付かない内に、今のリオスはすっかり軍人の顔と目付きになっていた。

ひとまず宿屋へ戻るべきだと考えてリオスは歩き出す。今の状況で外をフラフラするのは危ない。

1番良いのは誰か騎士団員を探して付き添って貰う事だが、爆発の消火活動で出払っているのか周りを見渡しても

騎士団員の姿は見つけられない。 どうやら1人で頑張って宿屋へ辿り着くしか選択肢は無さそうである。


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