A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第8話
しかし、こんな時間に開いている食べ物屋がこの町にあるかどうかがリオスには1番の不安材料だった。
現代の地球であれば自動販売機等があるので夜中にこうして腹が減っても何とか食べ物や飲み物を
買う事が出来るのだが、ここはリオスにとっての普通の世界では無い為その常識も通用しない可能性は十分にある。
それでももしかしたら……と言う僅かな希望を持ってリオスは宿を出た。
睡魔に空腹が勝つ事も珍しい今の状況で、まだ夜も明けきらない町を歩く。
流石にこの時間帯だとリオスの足音以外に何も聞こえない為に少々不気味ではあったが、今のリオスにとっては
空腹の解消が先だった。
(やはり無駄足だったか……)
だけどやっぱり深夜の町で開いている食べ物屋等、考えてみれば地元のヨーロッパでもそうそう無い。
まして異世界のこんな町で開いている可能性は低い事は少し考えれば分かる筈だった。
(あぁ、何だか思考が鈍ってるな)
やれやれと自分の愚かさにかぶりを振って、もう諦めて宿に戻って二度寝すると決めたリオスが踵を返した……その時。
(……ん?)
こんな時間に、自分以外に誰か居るのか?
リオスが踵を返した視線の先には、小走りで駆けて行く人影があった。どうやらリオスの軍服は上下黒ずくめの為
気が付かれなかったらしい。 何だかその人影が気になったリオスは、道を聞くのにも丁度良いと思って後を追いかけ始めた。
だが、自分よりも明らかに速いスピードでその人影は駆けて行く。
(何をそんなに急いでるんだ?)
そこまで急ぐなら、体力を消耗して余計に腹が空くだけなので別にもう追わなくても良いかとリオスは追跡を中止。
人影は闇の中へと消えて行った。
(しょうがない、帰ろう)
走った事によりバサバサに乱れてしまった自分の銀髪を手で軽く纏めて整え、リオスは再び道に迷いながら宿屋へ歩くのだった。
(慣れない場所を歩くと言うものはやっぱり神経を使う。しかしさっきの人影……こんな時間に何やら慌てていた様な……気になるな)
でも、今更になってやっぱりその人影を気にしようとしてももはやその人影の気配も形も視界に捉えられなくなってしまった
リオスはその思いを吹っ切って足を進めた。
結局、そのリオスは宿屋で睡眠を取ってから普通に朝食を摂る事によって空腹を解消する結果となった。
「ふぅーーっ……」
宿屋のブレックファーストを満喫して、走り回った事から来る疲労と筋肉痛を抑え込んでリオスは宿を出る。
この世界に来て2日目の朝だ。
今日の目標は何としてでも働き口の宛てを探す事。 大金を稼げるリスクがあるとは言っても、また騎士団の摘発が入って
追い掛け回されるのは御免なので闘技場のバトルは最終手段だ。
昨日、働き口を求めて色々な店に飛び込んだのは夕方。そうなると、日中と店じまいの時間帯ではまた反応が変わるかもしれない。
いや、変わって欲しい。
こんな訳の分からない世界で飢え死になんてたまったものでは無い。
リオスはまだまだ死にたく無いので、気合いを入れて朝からの就職活動に力を入れる事にする。
すると、悪い事ばかり続いていた気がするそんなリオスに働き口とは別の情報が回って来た。
地道に聞き込みを続けると、昨日の夕方から夜にかけて連続でこの町に住んでいる有力者が殺されたとの事だった。
唐突な展開だ……と思いつつ、ふとリオスは今日の夜中に見かけたあの奇妙な人影の事を思い出した。
(まさかな……)
そうそう都合良く行く訳が無いだろうと思いつつも、やはり気になる事は事実だった。
自分には関係の無い事だと思いつつも、軍人として色々な紛争に参加したりして国の問題を解決して来た性分からか
一応報告しておこうとリオスは町の騎士団の詰め所へと向かう。怪しいなら報告しておくのに越した事は無いからだ。
だが、そこでリオスは再びピンチに見舞われる事になる!!
「……何故だ」
騎士団の詰め所で怪しい人影の報告をする筈だったのに、今のリオスは何故か詰め所の中に設置された簡素な牢屋に入れられていた。
こうなってしまった経緯は実にシンプル。
リオスは町の人間に騎士団の詰め所の場所を聞き、その通りに確かに辿り着いた。
が、そこに居た騎士団員に事情を話そうとしたら奇妙な事を言われたのだ。
「魔力?」
現代の日本では聞いた事などまず無いと言って良いワードが騎士団員の口から出て来た。
騎士団員の話によれば、この世界では人間が魔力を持っているのが絶対の事であるのだとか。
しかしリオスからは魔力が一切感じられ無かったので、明らかに怪しいとの話だ。
そして、昨日の夜にリオスが町を夜中に出歩いていたのを見たと言う人が居るらしい。
しかも、昨日の夜にもまた有力者が1人殺されたらしく、そうなると騎士団としては当然怪しいリオスに疑いの目を向ける事になる。
当然、リオスには殺人を犯した記憶は無い。
必死に否定するリオスだったが、自分が殺人を犯していると言う事を完全に否定出来る証拠以前に、魔力が無い人間と言う事で
取り調べの必要があると判断されて牢屋に入れられてしまった。
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