A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第18話


「この火事を引き起こしたのは貴様だな。騎士団の詰め所まで来て貰うぞ」

「え? 俺!?」

まさかの騎士団員からの要求にロシェルの身体が強張って、その要求に従う事を拒否する。

「え、いや、無理です……」

「そうはいかない。貴様がこの火事を引き起こしたのは目撃証言もあるから可能性がかなり大きいだろう。

聞く所によれば、貴様はこの館の場所を住人達に確認していたと言う話が今の段階でかなり

出ているんだ。重要参考人だから拒否権は無い。来て貰う!!」

と言う訳で、この世界でのスタートに失敗してしまった形のロシェルは当然公国騎士団員からの

厳しい尋問を受ける破目になる。

その尋問を受ける流れの中で、自分が魔力を持たない人間と言うこの世界の異分子的な存在である事が

結局ばれてしまう事に繋がってしまうのであった。


その後騎士団の人間で話し合った結果、魔力を持たない人間がこの世界に現れたと言う事で騒ぎに発展すると

厄介なので一先ずロシェルは城で調べられる事に。

「後で取り調べを行う。それまで大人しくしているんだ」

ロシェルに騎士団の詰め所まで来る様にあの館の前で声をかけ、結局最後は半ば強引にその異世界人を

詰め所まで連れて行ったショートカットの黒髪の若い騎士の男がロシェルを牢屋の中に突き飛ばして、牢屋の鍵を

かけつつ鉄格子の向こうからそう告げる。

「ちょっ、ちょっと待ってくれよ! 俺は何もしてねぇってー!!」

精一杯の声を出してその騎士団員を引き留めようとするが、そんなロシェルの努力は無駄に終わってしまった。


(あーあ、何でこんな事に……)

コラードの持って来たあの依頼のせいだよ、と責任転嫁したくなる気持ちでロシェルは一杯になりながら、カビの臭いが

漂うこの冷たく乾いた牢獄の壁に腕を組んでもたれ掛かった。

とにかく今の状況を整理しなくては……とロシェルは頭をフル回転させる。

この世界に来てまだ今日で2日目。1日目は自分が倒れていた所をコラードに拾って貰い、それから意識を取り戻し、

この世界の事やコラードの事、それから魔力関連の事について教えて貰った。

そして2日目になり、エスヴァリーク帝国の騎士団調の所に向かう為に金を稼ぐと言う事を決め、コラードの依頼の

アシスタントをする事で金を稼ぐ事にした。

(そして、配達の依頼を受けてあの屋敷に行ったらあの荷物が爆発して……)


最終的に、その爆発事件の重要参考人としてこうして城の牢屋まで連れられてしまったのだ。

(コラードさん、今頃如何してるのかな?)

すでに1時間はとっくに経過しているので、今頃は待ちくたびれているのだろうか?

それともあの火事の場所に向かって、自分の目撃情報を集めたりしているのだろうか?

(考えても分からないけど、でもやっぱり俺の命の恩人だからな……)

心配だよなーと思いつつも、何も出来ない今の状況に歯がゆい思いをロシェルは隠せずにギリッと歯軋りをした。

しかし、それと同時にあの配達の依頼を持って来たのもコラードだった。そもそもあの依頼の依頼主があんな

爆発物を運ばせると言う事自体が非常におかしいのだ。

事前に配達する荷物の中身を少しでもチェックしないのであろうか? 確かにプライバシーの問題もあるだろうし、

強引に荷物を開けてしまう様な事があればそれはギルドの信用問題になって来るだろうから開けられないと言う事も

大いに考えられるので一概に決めつける事も出来ないよなー、と思うロシェル。


となれば……と異世界の海軍の軍人の考えは段々と悪い方向に向いて行く。

(命の恩人に向かってこう言う事は思いたく無いけど、考えられるのは……)

しかしその時、コツコツコツと牢屋の外から足音が近付いて来る。 その足音の方にロシェルが視線を向けると、そこには

先程の黒髪の騎士を始めとした数人の騎士団員が殺気をみなぎらせながら歩いて来るのが目に入った。

(そーとーピリピリしてんなー……)

あれだけの爆発事故、そして大火事を引き起こした原因が自分にあると思われているからそう言う感情がむき出しに

なってしまうのは仕方無いにせよ、頼むから何とか無実だと言う事を認めてくれないかとロシェルは考える。

(でも、こうなった以上は俺がどうにかするしかねーじゃねーかよ……!)

どうやらエスヴァリーク帝国に行くまでは相当長い道のりになりそうだ、とロシェルは色々な感情を頭の中で

巡らせながらため息を吐いた。


「大公が直々に貴様に会いたいと申しておられる。出ろ」

「やっぱりこうなるんだな……」

異世界の人間と思わしき、身体に魔力が存在しない人間がこうして突然現れたとなれば当然こう言った結果に

なるのはロシェル自身も大いに予想出来ていた。

ならば大公の元へ向かって、まずは爆発事件の事をしっかり自分の口で話すしか無いだろうと意気込みながら

ロシェルは厳重に騎士団員達に周囲を囲まれて歩いて行く。

逆に言えば、その弁解に失敗してしまった場合にはその後の事を考えたくも無い状況に陥るのは透けて見えるので

そのプレッシャーに自分の意気込みが負けそうになっていたのだが。


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