A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第12話
そんな悪い結果しか見えない様なコラードの予想に激しく気分が落ち込みながらも、
ロシェルはふと思い出した質問があったのでそれをコラードに尋ねる。
「……あ、そうだ。俺の身体からは魔力が感じられないって話を1番最初にしていただいたと
思うんですけど、どうして俺の身体から魔力が感じられないって分かったんですか?」
「ああ、それは魔力の気配だな」
「気配?」
人間の気配と同じ様な物なんですか? とロシェルが聞いてみたがコラードは少し違う、と答えて続ける。
「何と言うかな、その……ピリピリしている感触だ。身体全体が痺れている様な、しかし生活には支障が
無い程度の感触。魔力が強い人間程その感触は強くなって行く。しかし、君の身体からは全くその感触を
感じ取る事が出来ない。どんな人間であろうと、魔力のそのピリピリした感触を感じ取る事が出来る筈なのに
君の身体にはそう言う感触が無い。だからこれは変だぞ、となった訳だ」
「ふむ……でも、俺の方もコラードさんからは感じ取る事が出来ないですけどね?」
「……え?」
ロシェルは素直に自分のその感触を言葉で表現しただけだったのだが、コラードの顔に明らかな動揺と驚愕の色が浮かんだ。
「何故?」
「何故って言われても……俺が聞きたいですよ。コラードさんは魔力を持っているんでしょ?」
「勿論だ。成人男性の平均値よりは若干低いけどな」
でもそれを感じ取れないなんて、それは絶対におかしい……とコラードは考え込む素振りを見せた。
「考えてもやはりそれは変だ。私は正真正銘この世界で生まれてこの世界で育って来た人間だからな。
だから異世界人の君からそう言われても私は変だとしか思えない」
でも、この状況ではお互いの魔力に関する違和感を確認する術は考え付く事が出来そうに無かった。
「でも、俺は別に今すぐにでも知りたいって訳じゃありませんので何時か分かる時が来ればそれで良いですよ。コラードさんは?」
「そう言われれば私も同意見だ。非常に心に引っ掛かる事ではあるが、今のこの状況で2人で考えても仕方無いだろうし」
少なくとも、今はそれ以上に考えなければいけない事がある筈なのだ。
「とにもかくにも、今はまず君のこれからの生活をどうにかしなくてはいけないだろう。君の当面の目標としてはエスヴァリーク帝国に向かう事だったな」
「はい。地球に帰る為なら何でもやりますってさっき言いましたから」
「ならば移動手段を利用する為の金を稼いでからだな。君の世界でも金を払って物を買ったりサービスを受けたりするだろう?」
「そこは一緒です。でもギルドに登録出来ないかも知れないんですよね?」
「ああ、それが今の重要な問題だ」
そこをどうにかしなければ、エスヴァリーク帝国に行く為の金を稼ぐ事も出来やしない。
ロシェルもコラードも、腕を組んでうーんと唸りつつ考える。
考えた末、腕組みを解いたコラードがこんな提案を。
「それじゃあ、私の助手として働くと言うのはどうだ?」
「助手……ですか?」
確かコラードは傭兵をやっている筈だからその助手になると言う事だよな、と考えるロシェルにコラードは頷く。
「そうだ。今の私は傭兵の仕事が少なくてな。少し金が必要なんだ。だけど1人ではなかなか金を稼ぐのも時間がかかる。
そこで、君にも依頼の一部を手伝って貰おうと思う」
「俺が? え、でも……それってギルドからの依頼なんですよね? ばれたら色々とまずいんじゃありませんか?」
コラードはギルドに登録しているとは言えども、赤の他人の自分が手伝うと言う事になってしまうと色々と身分証明とかを
求められた時にまずい事になるのでは無いか、とロシェルは懸念する。
だが、それを聞いてもコラードはしれっとした顔をしている。
「その辺りは今頭の中で大体考えている。と言うかだな、別に君に全てを任せてやるつもりも無い。依頼を受けるのはあくまで私だ。
君にはそのサポートをして貰うだけで、取り分をその分しっかりと君に分ける。それだけだ」
「え、ええ……」
「それから、簡単な荷物運びの依頼とかであれば君に代わりに行って貰うと言う事も出来る。1度依頼を受けて、依頼人からサインさえ
貰ってしまえば誰がやった所で分からない。身代わりで依頼を受けて、取り分をパーティを組んでいる人間に分配すると言うのは良くある話だからな」
「あ、成る程……」
何だか凄く腑に落ちないし、心の中でロシェルはそんなのチートも良い所だろ、と思っているのだがそれがこの世界の裏事情であれば
むやみやたらにそれを規制する事など出来ない。
(俺1人だけが異世界からやって来た人間だからこそ、大多数の声に自分の意見がかき消されてしまい裏事情もうやむやにされてしまって
終わりなのは目に見えるからな……)
それに、エスヴァリーク帝国に向かう為であれば多少の裏事情でのやり方もこの場合止むを得ないだろう。
だって、自分自信が「地球に戻る為には何だってやります」と言ってしまったのだから……とロシェルは先程の自分のセリフに若干の後悔を覚えるのだった。
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