A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第10話


と言う事で、コラードに持って来て貰った自分の海軍の軍服に着替えてから2人で家の外に出る。

「如何すれば宜しいですか?」

「君の習得している戦い方に名前があればそれを教えて貰いたい。それと、その戦い方には型があると

君が先程言っていたからそれを見せて欲しいと思う」

「はい。俺の習得している戦い方はムエタイと言います。と言いましても、俺が軍に入隊する前から習い始めたんですけどね」

そのセリフにコラードは首を傾げる。

「ん? 軍に入ってから習い始めた訳じゃ無いのか?」

「そうなんです。元々俺はこのムエタイを14歳から習い始めました。身体を動かすのが俺は好きだったので、

父親からやってみたらどうだ、と勧められてムエタイを習う事に決めたんですよ」

「ではそのムエタイと言う物が、地球独特の戦い方なのだな?」

「もっと他にも地球の戦い方はありますけど、確かにその解釈であっていますよ。それで、このムエタイと言う物はパンチ、キック、

それから肘、最後に膝の4つの部類の攻撃があります」

ふむ、とロシェルの説明にコラードは頷いた。

「膝と肘か。痛そうだな」

「ええ。肘と膝を使った攻撃がムエタイの特徴でもありますし、ダメージを与えるのも非常に効果的なんですよ」


地球ではこのムエタイの戦い方によるダメージの大きさはよく知られている話だ。

ムエタイは元々、南インドの古武術であるカラリパヤットがタイに伝わって形成され、アレンジされて現代の形になった

格闘技だと伝えられている。 肘と膝による強力な打撃がムエタイの迫力でもあり特徴でもあるので、その特徴を存分に

生かした戦い方でムエタイはタイ国内のみならず世界中の国々で良く知られ、良く使われているメジャーな格闘技だ。

投げ技や関節技の最強を他の格闘技に譲るとしても、ムエタイは打撃系格闘技の最強であると言う説を唱える人間も少なくは無い。

ロシェルは少し腰を落として右手を顔の横に、左腕を脇腹の横から前に伸ばしてムエタイの構えを取る。

「まずはムエタイだとこう言う構え方をします。……そう言えば、先程変わった構えをする異世界人の話がありましたよね?」

「ああ。でも、私が聞いた話の構えでは無いな。もっとこう……独特と言うか。倒されてしまった騎士団員の連中も詳しくは

良く覚えていないと言う話だったから、私はそれ以上の事は知らないぞ」

「そうですか……」

だったらムエタイ使いでは無さそうだな、と思い直してロシェルは基本的なパンチから始める。


ロシェルは今のムエタイの他にも古式ムエタイも習得しており、グローブをつけないでトレーニングをする事もある。

そのおかげで彼の手は割とゴツゴツしており、筋肉質ではあるが細身の身体の為に素早さとパワーを兼ね備えている。

パンチ、キック、肘のコンビネーション、膝、飛び膝蹴り、回転肘打ち、飛び肘、ハイキックからの回し蹴りに繋げる連続キック等を

一通りコラードに見せてみた。

「ほおーう……なかなか素早い動きを見せるな。接近戦だと結構強敵になりそうだ」

「ええ。接近戦に持ち込めば何とかなりますから。ただ、コラードさんの様にリーチのある武器を持っていると結構きついですね。近付け無いですよ」

そうロシェルに言われて、コラードは腕組みしていたその腕を解いて右手で背中に背負っている長い武器を取り出した。

「それじゃあ、私の戦い方を見せる時が来た様だな」

「はい、お願いします」


コラードがロシェルと初めて出会った時から背中に背負っていた、一目見ても長いリーチを持つのが分かる武器。

それは槍でも無く棍棒でも無く、若干変わった形をしている斧だった。

「槍……ですか?」

「いや違う。これは斧だ。先端が尖っているからそう誤解される事も良くあるけどな」

「斧……」

何だか一般的に考えている斧とは違うなーとロシェルは感じる。

先端はコラードの言う通り確かに尖っているし、刃の側面は両側とも確かに叩き切れそうなくらいに手入れがきちんと

されているから納得出来ると言えば出来た。

「俺の認識だとハルバードっぽいんですけどね」

「そう言われる事もあるにはあるが、れっきとした斧と認められているんだ。とにかく、戦い方を見てくれれば分かる事もあるだろう」

「ではコラードさんの戦い方をお願いします」


ロシェルのそのセリフで、コラードは斧を振るい始めた。

基本的な振り下ろしから始まって、そこから今度は1度上に振り上げてぐるんと斧を回転させ横になぎ払い。

しっかりぐるっと1回転して、元の位置から前に鋭く突き出す。

斧が風を切る音が響くが、そのダイナミックさよりもロシェルはコラードのテクニックに感心していた。

(この人、上手いと言うよりも凄い……こんなに長い獲物を振り回しているのに、全く身体の心がぶれない。

やっぱりそれだけのテクニックを身につけて、そして戦場で活躍して来たってだけのキャリアの持ち主って事なんだな……)

こんなベテランの冒険者に出会えて、ロシェルは少なからずショックを受けずには居られなかった。


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