A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第7話


「言うも何も、そのままの意味だ。カシュラーゼは魔術の王国だからその魔術に関しての兵器を開発していると

言う噂を聞いた事はある。しかし、その開発されている兵器を部外者が見た事は無い、と言うんだ」

「部外者って言うと、例えばコラードさんの様な傭兵の人達とか?」

「うむ。恐らくはソルイール帝国の様に、何処か人目につかない様な場所で開発が進められているのかもしれん。

だけど、この噂が流れたのだってもう30年も前の話だし、私だって人づてに話を聞いただけだから詳しい事は知らんよ」

「30年前!?」

そんなに前から噂だけが流れているとなると、もはやその噂だけが一人歩きしているパターンだって大いに考えられるよなー、と

ロシェルは心の中で何処か呆れながら思っていた。


「まぁ……このルリスウェンの話に戻るが、他国と同じ様に兵器を開発していても工学に発展しているから必然的に

他国よりも研究開発が進められていたり精度の高い武器や防具を生み出す事が出来る。さっきの留学生や他国からの

研究に来る人間の多さがそれを証明している様にな。それ故、このルリスウェン公国と敵対関係の国からは最新兵器が

何時完成するかと要注意な国として目をつけられている。でも、その目をつけている国達が迂闊に手を出せない理由が

あるんだ。それが何か分かるか?」

いきなりのクエスチョンにロシェルは一瞬戸惑うが、頑張って回答をひねり出してみる。

「え? あー、んー……手を出せない理由ですか? うーん……俺が思いつく限りだと、魔術でバリアみたいなのが

この国に張られているか、あるいは国全体にかかっているって言う霧のせいで軍の進ませ方と言う意味でなかなか他国が

侵攻して来られないとか、そんな事位しか思い浮かばないですけどねぇ」


ロシェルの答えに、コラードは首を横に振る。

「2番目の答えは20パーセント位正解かな。霧のせいでなかなか思う様に進む事が出来ない。確かにそれもあると言えば

あるし、実を言えばこの国の騎士団の人間だって霧の中ではなかなか動く事が出来ない。公国騎士団としては地元だから

地の利を生かす事は出来るが、騎士団員だって人間だからな。霧によって先が見えない事による恐怖心との戦いもあるのだが、

それ以上に騎士団の相手は……このルリスウェンだけじゃ無くて何処の国でも一緒だが、人間だけじゃ無いんだ」

「ん? それって自然災害とか?」

「それもある。けど、他にもあるだろう?」

コラードにまた問い掛けられて、ロシェルは思いついた答えを言ってみた。

「えっと……動物、かな?」


しかし、これもまた少しだけ違う答えだった様だ。

「正確には魔獣だ。野生の動物が魔力の暴走等で凶暴になって、人間や他の動物を襲う存在。君の世界である地球にも、

そうした存在は居ないのか?」

ロシェルはそのコラードからの質問に苦笑いで返した。

「居ませんね……動物は俺達人間以外に居ると言う点では同じです。しかし、俺達の世界では普通に暮らしている人間であれば

魔獣と言う単語を目や耳にする事はまずありません。それはフィクションの中だけの話ですからね。気性の激しい凶暴な野生の

動物が人間を襲ってそれで被害を出す事はありますけど、魔獣と言う存在は地球には存在しません。神話とか怪奇現象とかで

そうした生物の存在が語られる事はあっても、実際にその姿を目にした人なんて居ませんからね」

地球にそんな魔獣とか言う存在が実際にあってたまるか、とのメッセージも暗に込められているロシェルのそんな口ぶりでの

返答に、コラードも若干苦笑いを浮かべた。

「そ、そうか。ならば君は実際の魔獣と言う存在が居る事については、この世界に来てから知ったと言う訳だな」

「そうです。今しがた貴方からお聞きしました」

「だったらこの国の説明が中途半端で終わってしまったから、全て話し終わってからまた順番に話して行こうか」


でも話が脱線し過ぎた事で、何処まで話したかコラードは忘れてしまったらしい。

「あれ、私は何処まで話したっけ?」

「え? あ、ええとほら……ルリスウェン公国に他の国が手を出し辛い理由を俺に尋ねてませんでしたっけ?」

「あーそうだったな、どうも。それでだな、何故他国がなかなかこのルリスウェン公国に攻め入る事が出来ないかと言うと、確かに

霧のせいだったりその霧に慣れているこの公国の国民性と言う理由もあるのだが、工学に秀でているからこそと言うのが最も足る

理由だ。軍事関係だよ」

「軍事関係……あ、つまりあれですか、その……何処かと軍事関係で仲が良いって事ですか?」

「そうそう、そう言う事だよ」

やっと辿り着いたその答えに、少し息を吐きながらコラードが続ける。

「軍事演習を北の隣国リーフォセリアと一緒に行っていると言う話はさっきしたな?」

「はい。兵器開発の関係で友好的な関係だと」

「そこなんだ。ルリスウェン公国が武器や防具、それから兵器をそのリーフォセリアに卸す事によって、若干言葉が悪いが、

その見返りとしてルリスウェン公国に他国が攻め入って来たらリーフォセリアから援軍がやって来ると言う訳だ」


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