A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第8話


「つまり、そのリーフォセリアのおかげで軍事力には困らないと言う訳ですね」

「ああそうだ。君の居る世界はそう言う関係とかは無いのか?」

またもや地球の事を聞いて来るコラード。ロシェルがこのエンヴィルーク・アンフェレイアの軍事関係の事が

気になる様に、コラードも傭兵だけあってかやっぱり地球の軍事関係が気になるらしい。

「ええ、こっちは沢山そう言う例がありますね。長い長い歴史の中で幾つもの同盟が色々な国で結ばれ、

そして……消えて行きましたから」

自分の住んでいるヨーロッパでも、ドイツ、オーストリア・ハンガリー、イタリアによる秘密軍事同盟が1882年に

あったし1940年には第二次世界大戦の中で日独伊三国同盟も結ばれたりした。

そうしていずれも内部の分裂等が原因で同盟が崩壊して行く末路を取っていた。

「消えて行った?」

「ええ……同盟を結んだ国が裏切ったり、他の国との戦争に負けて崩壊しちゃったりしましたから。逆にお聞きしますけど、

ルリスウェンとリーフォセリア以外でこの世界でのそう言った国同士の関係は?」


幾つの国があるのかまではまだ聞いていないが、このルリスウェン以外の国名も今までのコラードとの会話の中で聞こえて来た為に

そうした同盟があってもおかしく無いだろう、とロシェルは思う。

「ああ、あるよ。まずそうだな……ここ、ほら。この地図の中央のだな、やや左側を統一していたのがヴァーンイレス王国だった」

「だった、って事は……」

その先のロシェルのセリフに続ける形でコラードの説明は続く。

「そう言う事だ。滅亡したんだよ。他国が一斉に同盟を組んで来て呆気無くと言う奴だ。まぁそれもしょうがない部分もあると言えばある。

元々はその……軍事力よりもどちらかと言えば畜産や農耕が盛んな国だったから、騎士団があったとは言えどもそうした軍事力の面に

関しては他の国より劣っていたからな」

「あ〜……」

腕を組んで納得した様にロシェルは頷く。

「凄く言葉は悪いですけど、要は軍事力の面に関して弱小国だったと言う事ですね?」

「そうなるな」


そこでロシェルは次の疑問に行き着く。

「ん、待てよ……コラードさん今、同盟国がこの王国に攻めて来たっておっしゃいましたね?」

「ああ。その同盟の話を君が振って来たからな」

「そんなにそのヴァーンイレスって言う国は何か反感を買う様な事をしていた国だったんですか? それとも領土問題的な面での侵攻とか?」

今の段階で思いつくだけの戦争の理由を列挙してみるロシェルに、コラードは正解の答えを言う。

「それは後者だ。反感を買うと言うか……ヴァーンイレスとカシュラーゼは元々揉めていたんだ。10年もの長い間な。10年と言えば1人の

人間が十分に成長してもおかしくない。それだけ長く燻っていたせいもあって、業を煮やしたカシュラーゼは同盟を組んでいたソルイール帝国、

イーディクト帝国、アイクアル王国の4カ国で攻め入ったんだ」

「うわ、それは結構な戦力差じゃないですか?」

自分も軍人だからこそ、4カ国の軍勢が一気に攻めて来た時の事を考えてロシェルは思わず身体が震えてしまう。


ロシェルのそんなセリフに、コラードは物凄く神妙な顔をして腕を組んで壁に寄り掛かって遠い目をして呟いた。

「もう、それは悲惨だったって話だな。実を言うと私もその戦争に傭兵として呼ばれていたんだけど、丁度別の以来で遠くに居たものだから

参加出来なかった。だから傭兵仲間から聞いた話しか無いのが残念なのだが、それを聞いただけでも一方的な蹂躙戦争だったらしい」

「そりゃまぁ……その戦力差だとそうなるのも仕方無い気がしますね……」

元々戦争に慣れていない軍事面での弱小国と言う事にプラスして、敵対していたカシュラーゼ軍とその同盟国が合わせて4カ国が

領土侵犯の為に攻め込んで来たと言うだけでも完全なる敗色濃厚の負け戦になる事は、素人が考えても火を見るより明らかだった。

「農耕に秀でていたからそれだけ食料の栽培に適した領土の広さや地質等があって、それを狙ってその4カ国が事前に配分を決めていたんだ。

どの国がヴァーンイレスのどれだけの領土を持って行く、と言う事をしっかり決めた上で、そして東西南北の4方向から一気に攻め入ると言う

用意周到な計画だと言う話だった。だから、2ヶ月もすればヴァーンイレスは完全に陥落してしまったよ」


結局、数の暴力には勝てなかったと言う事だよとコラードが言うと、ロシェルもそれに賛同した。

「確かにね……どんな武術の達人だって、凄い極端な話になりますけど30人を同時に相手に出来る訳がありませんよ。

俺だってそんな状況になったら逃げますもん。でも、4方向から同時にそのヴァーンイレス王国は攻め込まれてしまった訳でしょ? だったら

逃げ道なんて無いですよね?」

「そう。逃げ道を完全に封じた上で、数の暴力で持って一気に攻め落とす。戦略としては数に物を言わせたオーソドックスな戦法だ」

今のヴァーンイレス王国だった領土は、もうすでにその4カ国が境界線を引いているよ……とコラードは地図を指差してロシェルに教えるのであった。


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