A Solitary Battle Another World Fight Stories 2nd stage第6話


ひとまず、目の前に傭兵として旅をして来たコラードの存在がある事だし……とロシェルは

コラードにこの国の事を聞いてみる事にする。

「それではまず……コラードさん、でしたっけ?」

「そうだ」

「コラードさんにお聞きしたい事があります。この国の事について詳しく教えていただけませんか?」

「ああ……このルリスウェン公国か。良いだろう」

そう言う事ならば、とコラードはこのルリスウェン公国について説明し始めた。

「まずこの国の特徴から説明するとしようか。君をここに連れて来た時もそうだったのだが、全体的に

曇りや雨の日が多い。晴れている日が1年を通して全体の30パーセントもあれば良い方だ」

「え……何だか気分が沈みそうですね……」


若くて元気が良いと周りから良く言われる自分とは対照的だな、とロシェルはひしひしと感じる。

「まぁ、暗い日が多いから他所から来た人間は大抵そうなってしまう。それは何故かと言えば、この公国

自体が深い霧に包まれているからでな。そのおかげで、どうしても暗くなったり雨が降りやすかったりするんだ」

今日はそうでも無いみたいだがな、と窓の外の太陽が昇っている景色を見ながら話をコラードは続ける。

「しかし公国の統治者は違う。「月の弓」と呼ばれる熱血な大公が治めている国で、先程他所からやって来た

人間は気分も暗くなってしまいがちになると言ったが、それも2ヶ月も住み続けていればだんだん気分も

晴れて来る。その大公のおかげでな」

「大公のおかげ?」


人々の気分を明るくする為の政策等を行っていたりするんですか? とロシェルが聞いてみるが、実際の所は少し違うらしい。

「いいや、いわゆるその……カリスマ性? とでも言えば良いのか。大公は人を惹きつける何かを持っているんだ。

それが何かは私にも分からないが……「月の弓」と呼ばれるゆえんも、夜の闇を切り裂く位に明るい性格で、その明るい性格を

矢に見立てて公国全体に飛ばす事によって暗くなりがちなこの国の天気を切り裂いて明るい未来を作り出す……とか言う話だったな」

「は、はぁ……」

何だか良く分かんねーなー、とロシェルが凄い微妙な顔つきになりつつも、黙ってその国の話の続きを聞く。

「それで、だ。この国そのものはエンヴィルーク・アンフェレイアの世界中でも特に工学に秀でた国だ。他国からもわざわざその工学を

学びに多数の留学生がこの国の工学学校にやって来る。しかも来るのは学生だけじゃない。他の国の魔術師や騎士団員、

それから鍛冶屋なんかも工学が応用できる武器の技術や知識を研修と言う名目で学びに来るのだよ」

「そこまで他国の人間がこの国に来るってなると、非常に武器の面に関しては発達してそうですね」

「勿論。武器だけでは無く、防具だって同じ様に発達しているし、日常生活に必要な色々な機械や工業用品も最初に

生み出したのがこのルリスウェンと言われる位だからな」


何処か自慢気な口調でルリスウェンの事を話すコラードに、ロシェルは問いかけてみた。

「もしかして、コラードさんはこのルリスウェンの出身なんですか?」

「えっ? 何故そう思う?」

「口調が誇らしげですからね」

ロシェルのその指摘に、ほう……とコラードは感心したリアクションを見せる。

「確かに私はこのルリスウェンの出身だ。さっきから思っていたが、君はなかなか鋭いな」

「恐れ入ります」

ロシェルは頭を下げた。

「良いよ頭を上げて。結構洞察力がある様だな……」

頭を上げたロシェルにポツリとそう呟いたコラードは何かを考え込む様子を見せるが、すぐに首を横に振った。

「……何か?」

「いや……何でも無い。そう言えば話の途中だったな。この公国はそれ程までに工学に優れている国だから、

これもさっき少し話した様に騎士団でも工学兵器が造られていて、その事から北側の隣の国であるリーフォセリア

王国とは友好的な関係だ。度々軍事演習も一緒に行っている。君も軍人ならば興味があるのでは無いか?」


そのコラードの問いかけにロシェルは肩をすくめて返す。

「興味も何も、俺はこの世界にこうしてやって来る前は軍事演習の真っ只中だったんですよ。ですからこの世界の

軍隊の事についても非常に興味深いですね」

「軍事演習真っ只中か……もしかしたら異世界にやって来てしまった原因と何か関係あるのかもしれぬな?」

そうコラードは疑問を持ったが、今考えても仕方無いとばかりにルリスウェン公国の説明を続ける。

「まぁ、今はまだ分からないか。そんな訳で工学に秀でている為にだな、この国では新たな兵器の開発に余念が無い。

ソルイール帝国の事件と一緒だな」

「ですね。でも、軍隊だったら新兵器の開発とかは何処でもやっていそうな気がしますけど?」

ロシェルは地球のセオリーに当てはめてそう尋ねてみる。

「確かにそうだな。この世界の何処の国でも新次第の兵器の開発はしている、と聞いた事があるのだが……ソルイールは

その異世界人の1件で判明したとは言え、カシュラーゼだけは噂に過ぎないんだ」

「……と、言いますと?」

噂に過ぎないとはどう言う事なのか? と思いながらロシェルはコラードの次のセリフを待った。


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