A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第69話


「別の世界……?」

信じられない、と言う表情でクリスピンが問う。

『ああそうだ。そしてその3つの神は一緒に暮らし、世界をそれぞれ見守っていた。

だがそのヘルヴァナールの神とこのアンフェレイアが大喧嘩をしてしまい、結果として

2つの世界は分離しそれぞれ凄く似ている別の世界として歩み始めた』

「……で、それがこの話とどう繋がるんだ?」

もったいぶらずにストレートに言ってくれ、と言う口調のアイベルクに対して、

今度はアンフェレイアに説明をバトンタッチ。

『ヘルヴァナールは生きているわ。そして、貴方達が私達がもしもの時に設置しておいた

この石版に欠片を集めてこの神殿を地上に出してくれた事でヘルヴァナールとこの世界がまた繋がった。

そろそろ彼女とも仲直りの時期ね。感謝するわ』


アンフェレイアに続いてエンヴィルークも礼を述べる。

『大昔に保存場所をそれぞれ造っておいたから、もう何処に何の欠片があるか忘れてしまっていたが……

こんなアクシデントが起こってしまった以上はその欠片をもう1度集めなければならなかった。

色々アクシデントはあったが、魔力の結界で見えなくなっていたこの遺跡は石版に欠片を全てはめ込み、

そして最後の鍵であるそのバッジをはめ込んでくれた事で地盤沈下を自力で

切り開いて戻って来られるだけのパワーを手に入れる事が出来た。感謝する』

何が何だか人間達にはさっぱり分からない話になって来たのだが、更に驚愕の事実がアンフェレイアの口から発覚する。

『貴方達が結界を解除してくれた事で、今まで私が寝て温存していた魔力と合わさって……ヘルヴァナールと

これで道が繋がったわ』

「えええええ!?」


エイヴィリンの驚愕の叫び声と共に、それが人間達全体に繋がって行くのに時間は掛からなかった。

「道が繋がった?」

「そ、それってつまりその……別の世界への入り口が出来たって事なのか?」

アイヴォスとロシェルの問い掛けに、アンフェレイアは迷い無く頷いた。

『ヘルヴァナールって言うのはさっきも言った通り、この世界に良く似ている世界の事……。向こうにも魔力があるし、

人間も居るし幾つもの国家がある。だけど獣人は居ないわね。それから武器の精製過程は

同じなんだけど魔道具は無い所も違うわ』


でも、とアンフェレイアは物凄い事をこの後に言い出す。

『異世界から人間がやって来た、と言うのはこの世界もヘルヴァナールも同じね』

「は?」

言われた言葉の意味が分からず、あんぐりするアンリ。

それは他の人間達も一緒だった。

「異世界からやって来た……って、もしかして俺達と同じ地球からやって来たのか?」

『その可能性は高いな。何故なら同じ世界の波動を御前達の一部から僅かに感じる。後……そっちの

赤毛のエスヴァリークの男からもな』


「……俺?」

エンヴィルークから言われたセリフに、何で俺なんだ? とセバクターがキョトンとする。

『そうだ。御前はそのヘルヴァナールに向かった人間と関わりがあっただろう?』

「俺が?」

未だに何の事かさっぱり分からないセバクターに、エンヴィルークがストレートに確認する。

『魔力を持たない人間と関わらなかったか?』

「……もしかして、俺と武術大会で戦った……!?」

その確認でハッとした顔つきになるセバクターに、エンヴィルークは満足そうに頷いた。

『そうだ。俺も実はその武術大会を観戦に行っていたのでな。その男からは強いヘルヴァナールの波動を感じた。

向こうの世界とは昔は物理的に繋がっていたんだ。人間が感知出来ない場所でな。しかし大喧嘩の後は

魔力で封印を掛けてファーレアルが道を閉ざしてしまった。だが……世界の繋がりそのものまでは切れなかったらしく、

向こうの世界の情報も色々と入って来てたんだ。そしてそれは俺もアンフェレイアも知っている』


けど、とエンヴィルークは遠い目になった。

『……その男はそれ以降、姿を消した。俺はそれ以上の情報は分からないが、ヘルヴァナール側と

繋がっていたのを色々と仕入れていたのはアンフェレイアの方が多い。だからこいつに聞いてくれ』

そうやってエンヴィルークから説明を任せられたアンフェレイアは、仕方無いわね……と呟いて

その魔力を持たない男の事を話し始めた。

『その男の名前は孝司。地球の日本に住んでいる日本人ね。茶色の髪の毛で……年齢は詳しくは分からないけど

50歳は行ってるわね。住んでいるのは東京の三鷹って所。それと……ああ、ムエタイって言う

古式武術? を習っているわね』

「ムエタイだって?」


その話に真っ先に反応したのは、同じくムエタイを習っているロシェルだった。

『ええ。貴方もそうなの?』

「はい、俺もムエタイ習ってます。俺達はそれぞれでそのセバクター団長と戦ったって言う

男の話を聞いてましたが、そうなると……」

そう言いながらセバクターの方を振り向くロシェルに対し、セバクターは腕を組んで頷いた。

「ああ、間違い無いだろうな。俺よりも明らかに年上みたいだったし、そのムエタイとやらがそいつの

使う素手の武術だったとしたら全てつじつまが合う」


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