A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第70話(最終話)


次にもう1人の人物……グレリスがトリップして来たソルイール帝国での

魔力を持たない人物の事はエンヴィルークが説明する。

『エスヴァリークの騎士団長と戦った奴は無事に帰ったみたいだが、もう1人は帰った後……そのまま

そこで死んでしまった。騎士団長に致命傷を負わされてな』

そのセリフに、15人の人間達の間にざわめきが走った。

それを見て、説明するよりこれを見て貰った方が早いな……とエンヴィルークは1番奥の壁に、

まるでプロジェクターの如く手から光線を出して映像を映し出した。

『さっきの日本人? の奴は余りこの世界に居なかった様だから詳しくは俺も知らないが、

こっちの殺された奴はそこそこの期間をこの世界で過ごした上にかなり大きな事を仕出かしたみたいだから、

隣の国に居た俺にも嫌でも耳に入って来る。そしてその情報と感じた波動を拾い集めて

断片的に繋ぎ合わせた結果、この映像が出来たんだ』


しかしそこでクリスピンの口から、この場に居る人間達が全員聞きたい質問が出て来る。

「さっきから波動、波動と貴方は言っているが……波動とは何なのだ?」

『竜の波動だ』

エンヴィルークに間髪入れずに即答され、クリスピンは唖然とした顔つきになる。

『竜族が発するエネルギーみたいなものでな。人間で言う「人の気配」に値するものだ。

竜の気配で俺達は他の竜が何処に居るかと言うのを判断しているのだが、

それが何故御前達から感じられるのかまでは分からん』

「アバウト過ぎるだろ……」

何が何だかその説明じゃさっぱり分からねえよとアルジェントが言うのだが、やっぱり分からないものは

ドラゴンであるエンヴィルークにもアンフェレイアにも分からないのだから、こうして結局アバウトな

説明になってしまうらしい。


「そういやさっきチラッと言ってたけど、同じ世界の波動を俺達の一部から僅かに感じるって……俺達の中で

感じる奴と感じない奴が居るって事なのか?」

さっきの説明の中の部分に疑問を持ったジェイヴァスが質問すると、エンヴィルークは『そうだ』とまた頷く。

「誰から感じるんだよ?」

『……その銀髪の奴と紫頭の奴。それから……ああ、そっちの帽子を被ってる奴もそうだな』

「え? 俺達だけなのか?」

『そうだ』

エンヴィルークが指し示したのは日本に旅行に行っている2人、それからグレリスのバウンティハンタートリオだけであった。

「何で俺達だけ?」

『だから知らん。俺はただ単に御前達から感じただけだ。御前達の方こそ思い当たる節は無いか?』


思い当たる節と言われても……と頭を悩ませる3人。

「俺とエイヴィリンは日本に旅行しに行ってただけだし、グレリスと一緒にアメリカでバウンティハンターとして

活動してるだけって位か。その……こっちの世界に来たって言う2人がそれぞれ日本人なのと

アメリカ人だって位しか分からない以上、俺達はそこに住んでるか旅行してたって位の薄ーい繋がりしか無いぞ?」

「薄い」を強調したウォルシャンだったが、それが逆に功を奏した様である。

『薄い……ふむ、それはそれで考えられるかも知れんな』

「へ?」

何が考えられるのだろうか?

キョトンとするウォルシャンに向かって、エンヴィルークは自分の予想をぶつける。

『御前達が住んでいる、もしくは旅行している国と同じ国に居る人間だからこそ、その波動が御前達にも

少しだけくっついて来たんじゃないのかと思う』

「……良く分かんねーけど、だから俺等から波動が感じられるのかよ?」

『そうだろうな。それに……さっきの武術大会で戦ったって言うそっちの御前からは直に触れ合ったせいか

それなりの波動が感じられる』

そう説明されてもセバクターにも良く分からない。


それに、疑問の声を上げるのはこの4人だけでは無かった。

「待ってくれ。私も4年前に日本に旅行をしたんだが……私の場合はどうなる?」

アイヴォスがエンヴィルークにそう聞くが、エンヴィルークは首を傾げるだけだった。

『いや、御前からは特に何も感じないが』

「だったらさっきの理屈は筋が通らないな」

冷静にそう分析するアイヴォスだが、ここでアンフェレイアからエンヴィルークに確認が。

『……そう言えば、そのもう1人の殺された人間が来たのは少し前の話よね?』

『そうなのか? それを踏まえてもこの穴がこちらの世界に開いたのは2年前。向こうのヘルヴァナールにも

今から2年前に魔力を持たない人間達が現れたらしくてな。だから向こうで何かがあったらしいが……

波動でもそこまで詳しくは追い切れなかった』

「何だよ……微妙な所で分からなくなっちまうんだな」

『だから4年前と言えばまだこの穴が開く前の話だし、仮にその向こうの世界の話とこの穴が開いたのが

繋がっていたとしたら……そしてヘルヴァナール側からこの穴を開けたのがその波動を感じた男だとしたら、

日本に旅行をしたと言う御前でも波動に触れる事は無くなるな。竜の波動はかなり強いものだから』

もはや話が難しくなり過ぎるので、ここはひとまず話を切り上げてそのもう1人の男の話を聞く事にした。


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