A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第62話


まだ寝ぼけている他のメンバーも次々に起こして、外の様子を宿屋の中から伺う一同。

しかし中から見聞き出来る情報には限界があるので、ここはクリスピンとアンリと

セバクターが外に様子を見に行く事にした。危険かもしれないが、このまま宿屋の中で

もたもたしていて訳も分からずに殺されてしまうよりは遥かにマシだからである。

その考えで偵察へと出た3人だったが、ものの5分もしない内に戻って来てしまった。

しかもかなり焦りの表情が3人に出ている。

「あれっ? 戻って来るの早くないか?」

ジェイヴァスがそう聞いてみると、焦りが前面に押し出されている表情のまま最初に口を開いたのはアンリだった。


「それ所じゃない。さっさとこの町から立ち去らないとまずい!!」

「えっ? どう言う事ですか?」

「獣人だ! 獣人の大群がこの町に攻撃を仕掛けて来ているんだ!!」

「はぁっ!?」

ロシェルの質問にアンリが答えると、まさか……と言う顔つきでエヴェデスが声を上げる。

しかし声を上げないにしても、他の地球人達もそして地球人達の見張りとして残ったフォンも気持ちは同じだった。

『獣人達が何故ここに?』

この町は15人が援軍と合流してから向かおうとしていたあの獣人の集落からそんなに距離は離れていない。

そして獣人の大群。

だから考えられるのは、やっぱりその獣人の集落が何か関係しているんじゃないか……と言う事だけだった。


「獣人達は恐らくその集落からやって来ているみたいだ。だけどここでいちいち相手にしていたら時間が足りない。

集落に向かって原因を探り、獣人の流出を止める!」

クリスピンがそう判断するが、自分達だけでは明らかに戦力不足だと言う事は地球人の誰もが分かっている。

「援軍は!?」

その気持ちを乗せたアイベルクの質問に、セバクターは首を横に振った。

「アイクアルから1番近いルリスウェンでも、援軍が来るまではかなりの時間が掛かる。

だから俺達で出来る限りの事をしなければならない!!」

だけど、それこそ敵の中枢に飛び込む等と言うのは余りにも無茶苦茶な作戦だ。

「おいおいちょっと待てよ!! 俺達だけで敵の中心に飛び込むなんて全滅するのが良い所だ!!

ここは外から少しずつ切り崩して行くべきだ!!」

アルジェントが自分なりに頭を捻って考え出した戦略を提案するものの、「中心から一気に叩き潰す」

グループと「外側から少しずつ切り崩して行く」グループに分かれる。


外側から切り崩して行けば、数が多いかも知れない集落の獣人達と持久戦を強いられるのが目に見えている。

だからと言って中心に突っ込んでも、敵が何か罠を仕掛けている可能性もあるしそもそも

敵の中心が何処なのかが分からないのも問題だ。

だからとにかく最初は相手の情報を知るべき……なのだが、この町にどんどん獣人達が

向かって来ているのでそんな調べる時間も無い。

まさにどう言う作戦を取ろうとも、敗色濃厚と云う言葉がピッタリだ。

こっちの圧倒的な数の少なさと情報の少なさにプラスして、この戦場がセバクターやフォン、アンリ、

クリスピンのホームグラウンドならまだしも完全にアイクアル領内なのでアウェイ状態だ。


完全に行き詰ってしまったので如何しようも無い……と思っていた15人だったが、彼等は

獣人達の襲撃とその対策で頭が一杯で大事な存在を忘れていた。

バサッ、バサッと何処からか聞き覚えのある音が、エイヴィリンの耳にまず聞こえて来た。

「……ん?」

その音のする方を見上げてみると、夜が明け切る前なので藍色になっている空の彼方から

猛スピードでこっちに向かって来る赤茶色のドラゴンの姿が。

「あっ……おい、あれっ!!」

大声で叫びながら空を指差すエイヴィリンに対し、一旦言い争いをストップして他の14人も空を見上げてみる。

「あれっ、あのドラゴン……!?」

そう言えばあのドラゴンは、この町に入る前に色々な話を聞かせて貰ってから『違う場所で俺は寝る』と

言い残して何処かに飛び去って行ったきり、今の今まで全く姿を見ていなかったと15人は思い出す。


そしてそのドラゴンは宿屋の前の道にゆっくり着陸し、15人に声を掛ける。

『獣人の集落で何か怪しい動きがあったみたいだ。すぐに向かうぞ』

「やっぱりあそこか……でも、俺達だけじゃどうしようも無い気がするんだけどな」

早く行くぞ、と急かすドラゴンに対してストップをかけるウォルシャンだが、ドラゴンは次の瞬間とんでもない事を言い出した。

『あれ位だったら俺とワイバーン達で一部は割と何とかなる。ただし、御前達にも掃討を手伝って貰うぞ』

「……正気か?」

反射的にフォンがそう聞いたが、ドラゴンの答えは変わらない。

『正気だとも。1度俺は集落に偵察に向かったんだ。確かに数は多いが、獣人と言えども人間と獣の

ハーフだぞ。だから1人1人の戦闘力は俺とワイバーンに掛かれば大した事が無い。

更にもっと言ってしまえばあいつ等は寄せ集めのガーディアン達らしい。動きも統率力も無駄があり過ぎる。

だからその4人……この世界の人間はおろか、そっちの異世界人達でも切り抜けられる戦力だと俺は見ているがな』


A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第63話へ

HPGサイドへ戻る