A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第58話
息を切らしながら、1人の騎士団員が会議室に飛び込んで来た。
「せ、セバクター将軍……大変ですっ!!」
「何事だ?」
「ドラゴンが……赤茶色のドラゴンが城の敷地内に降りて来ました。そのドラゴンは
人間や獣人の言葉を理解している様なのです!!」
「えっ!?」
「何だとっ!?」
エイヴィリンとセバクターを始めとして、会議室内に一気に緊張と動揺とざわめきが走った。
そして同時に、ロシェルやエイヴィリン達が出会ったドラゴンに間違いは無いと言う確信があった。
「そのドラゴンは何か言ってるのか?」
「はい、ええと……緊急事態だから魔力を持たない人間達をすぐにここに呼んで来てくれと!!」
「俺達を?」
「しかも緊急事態って何なんだ?」
ロシェルとグレリスがそう呟くが、とにかく緊急事態との事なので一同はドラゴンが
降り立ったと言う中庭へと急いだ。
『話している時間は無い。今はとにかく俺と一緒に来てくれ』
「な、何でだよ!?」
ウォルシャンがドラゴンを見上げながらそう言うものの、ドラゴンはかなり焦っている様子である。
「何があったか話してくれなきゃ、俺達はここから動かねえぞ」
腕組みをしながらそう言うグレリスに対し、手短にドラゴンは話し出した。
『御前達を運んで来た、あの狼頭の獣人が乗っているワイバーンとさっきすれ違った。
その手には間違い無く欠片が握られていたんだ』
「えっ?」
ガレディが欠片を握ってワイバーンで飛んで行った?
「一体どう言う事だ? 欠片ならまだこの城に……」
エイヴィリンがそう問い掛けていたのだが、そのセリフを遮ってシーディトが口を挟んで来た。
「あれ? そう言えば俺さっき会議の前に見たぞ。欠片を保管してある城の部屋の方向に向かうのを。
でも会議室も同じ方向だったからてっきり会議室に行ったのかと思ってたんだが……」
「はあっ!?」
「何でそれを早く言わねーんだよ!?」
一斉に非難の目をシーディトに向ける全員だが、ドラゴンはそんな人間達に対してまた焦った様子で口を開く。
『あの欠片をどうするのか分からないが、とにかく持ち逃げした事は本当みたいだ。奴を追うぞ!』
「追うって言っても……」
どっち方面に向かったか分からない以上、ガレディを追い掛けるのは難しいだろうとアイベルクでさえも思ってしまう。
だけど、そこはドラゴンのパワーで何とかなるらしい。
『俺は竜族だからな。世界中を飛んでいる竜の情報なんてすぐに分かるんだよ』
「……うーん、ファンタジーだな」
「この世界ではそれが普通だったりするのか?」
「いや、俺も流石にこんな事は聞いたことが無い。竜族の生態についても謎の部分は多いからな」
何だか妙に納得してしまったジェイヴァスと、思わずセバクターに問い掛けたアルジェントは
そのセバクターの回答を聞いて苦笑いを浮かべた。
ドラゴンは自分の超高性能なGPSシステム(?)を使い、すぐに飛び去ったガレディと
そのワイバーンの居場所が判明する。
『どうやら西に飛んで行ったな。恐らくは獣人達の集落に向かっているのだろう』
「集落って言うとあそこか。でも何で集落があるって分かるんだ?」
あそこに前に行った事があるのか? とウォルシャンが質問すると、ドラゴンからは予想以上の返答が。
『行った事がある以前に、元々はあそこの地下に俺の住処があるんだよ』
「へ?」
地下、と聞いて今度はエイヴィリンが1つの記憶を引っ張り出した。
「まさか、あの穴……」
『とにかく行くぞ。まだあいつとすれ違ってそれほど時間は経っていないから、東から向かえば
先に回り込める可能性がある! さぁ早く!』
「俺達も着いて行って良いか? ワイバーンで」
『着いて来られるなら着いて来い。引き離されるなら後は知らんぞ』
と言う訳でドラゴンの背中にエイヴィリンとウォルシャンとグレリスが乗り込む。
アンリが乗って来たワイバーンの背中にレナードとアルジェントが。
クリスピンのワイバーンにロシェルとアイベルクが乗り込んでこちらも準備完了。
そしてセバクターとフォンが用意したワイバーンの背中には、セバクター側にジェイヴァスと
エヴェデス、フォン側にアイヴォスとリオスが乗り込んだ。
『それでは行くぞ。遅れるなよ』
場所は分かるだろう、と事前に全員で地図をチェックしてから1匹のドラゴンと4匹の
ワイバーンがアイクアル王国に向かってエスヴァリーク帝国から飛び去って行く。
ドラゴン曰く、『全てに決着がついたら事情聴取でも何でも受けてやる』との事だったので
今はセバクターも諦めざるを得なかった。
その道中で思っていた事は全員が同じだった。
「何故いきなりガレディがこんな暴挙に出たのか」
「ガレディは何回もコソコソと何処の誰と通話を繰り返していたのか?」
何としてもガレディを捕まえてその事を聞き出し、そして地球に帰れるかも知れない
キーアイテムを返して貰わなければならない。
頭の中でガレディへの恨み言をそれぞれ呟きながら、盗人となったガレディよりも先回りするべく
一同はあの獣人の集落へと大急ぎで向かうのであった。
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