A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第59話


『俺達の住処を勝手に掘り起こされる訳にはいかない。勝手に荒らそうとする奴は、

絶対あいつの怒りを買うから早く止めなければな!』

ドラゴンはアイクアルの集落に向かって飛ぶ。予想飛行時間はトータルで1日半の時間を掛けて辿り着く予定だ。

だが流石に休憩無しで飛ぶのはきついらしく、海を渡った後に何処かの町で1日分の休憩を挟む。

本気で飛べば半日らしいが、人間達を乗せているし他のワイバーンにも無理をさせる訳には

いかないとの事での休憩スケジュールだ。

その休憩中にドラゴンがワイバーンに回復魔術を掛けていたのだが、彼(?)曰く

簡単な回復魔術も使えるとの事だった。

だけどやはり地球人達には効果が無いらしく、それは何故なのか未だに不明だったのだが、

ドラゴンがここに来てやっとその理由に1番先に辿り着いた。

『そう言えば、御前達の身体には魔力が無いのだったな?』

「ああ、そうだよ」

『だったら……この世界の魔力に御前達の身体が拒否反応を起こしたのかも知れない。

そう考えるとしっくり来るんだ』


唐突にそう言われても、魔力と縁の無い地球人達は何が何やらさっぱりだった。

それを横で聞いていたアンリが、もしかして……と自分の武器の槍を見つめる。

「それって……もしかして生成過程で行われる「魔力注入」の話か?」

『武器と防具の話なら恐らくそれだと思うがな』

「……何だそりゃ?」

ウォルシャンが「意味が分からない」と言う顔つきになるがエイヴィリンの方は違った。

「そう言えば、あの集落で俺達に本当にサラリとだが獣人の誰かが話していた気がする。

この世界の武器だったか防具だったかには、生成過程で魔力が含まれているんだ……って」

エイヴィリンの思い出話にクリスピンも頷く。

「そう、魔力注入とはその話だ。この世界では全世界共通で武器も防具も魔力を幾らか混ぜて貰い、

その注いだ魔力を生き物達の体内の魔力と反応させる事で使用者が自分の限界以上の

力や速さを引き出す事が出来る。技術は本人次第だがな」


クリスピンの説明に、RPGに詳しいグレリスが食いつく。

「えっ、それじゃ俺達の身体にその魔力が流れ込もうとしたんだけど、その魔力を異物だと

俺達の身体が反応してあんな事になったのか?」

「そう……らしいな」

今までの説明やアイベルクの身にも起こった現象を思い出し、セバクターも神妙な顔つきで頷いた。

「でも武器と魔道具と防具でそれぞれその現象が起こった時の様子が違ったじゃないですか。それはどう言う……?」

レナードの疑問にはフォンが答える。

「武器は外側に向かって魔力を放出しているんだ。例えばセバクターとかクリスピン将軍の様な

ロングソードだったら、柄から体内に流れ込む様に魔力を放出する。だから一瞬だけ触るのは

大丈夫だったとしても、握ったり持ったりするのは拒否反応だったんだろう」


それと、とクリスピンの胸当てを例に出してフォンは続ける。

「この胸当てみたいに防具とか魔道具は自分の身体に触れさせる物だから、内側に向かって

魔力を放出してるんだよ。だから装着する事で体内の魔力と反応する様になっていて、

普通に持ったりする事は出来るんだけど、装着出来なかったのはおそらく内側に向かった魔力が

身体の中の魔力に反応したんじゃ無いか?」

フォンの細かい説明で、何とかその場に居る地球人達全てが理解出来た。

「息を吸い込むのとかはどうなんだ? 空気中に魔力が含まれているらしいけど」

「それはごく微量だから問題無いと思うぞ。この武器と防具と魔道具の魔力は身体全体に

魔力が染み渡る位に魔力を放出し、そして融合させるからな」

アイヴォスの疑問にフォンはそう答え、ようやくこの場面で今までの謎の現象の理由が明かされる事になった。


その現象も明かされて再び獣人達の集落に向けて一行はスタートし、エスヴァリーク帝国から東に

向かって海を横断した赤茶色のドラゴンとワイバーンの飛行部隊は、どんどんあの獣人達の集落である

「ルルトゼルの村」に近づいて行く。

だが、近づくに連れてドラゴンが妙な事を言い出した。

『何だか……嫌な予感がするんだ』

「え?」

真っ先に反応したアルジェントに対して、ドラゴンは嫌な予感の内容のセリフを続ける。

そしてドラゴンが『一旦さっきの町に戻るぞ』と判断して一行は地上でドラゴンの話を聞く事にする。

「おいおい、一体どうしたんだよ。まだ海を越えたばかりだろ?」


アンリがドラゴンに対して疑問の声を上げるが、ドラゴンはこんな事を言い出した。

『これは俺のカンなんだが、このまま突っ込んで行くのは危険過ぎる気がしてな』

「危険って……?」

フォンがドラゴンの発言に首を傾げると、その疑問に対しての答えを言い出したドラゴン。

『御前達人間にはまだ感じ取れない距離だと思うが、俺達竜族はかなり先の魔力まで感じ取る事が出来る。

この世界の地図で言えば最大で半分位先までな。で……その獣人族の集落からはかなりの魔力を感じる。

普段はこんなに魔力を感じないんだが……』

「かなりってどれ位だ?」

『正確な数までは把握出来ないが、かなりの人数分だ。人間の魔力、獣人の魔力、それから魔獣の

魔力はそれぞれ性質が少し違うからはっきりと分かる。中には魔獣の魔力も混ざっているみたいだが、

それでも俺が感じるのはそのほとんどが獣人の魔力だって言う事だ』


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