A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第37話


ともかくこれで移動手段に関しては何とかなりそうなので、まずはこの世界の何処に行くかが問題である。

「此処から1番近い遺跡って何処なんだ?」

「アイクアル王国の西の隣国、エレデラム公国の遺跡だ。アイクアルの東の遺跡よりも少し距離が

近かった筈だから、そこから北に向かって右回りで次々にルリスウェン公国、リーフォセリア王国と

各国を巡って行くと良いだろう。魔術が効かないと言うから、もしかしたら遺跡に掛けられている

魔術の結解を通り抜けられる事が出来るかも知れんな」

「結解か……」

そう呟くエイヴィリンだが、実際にその結解がどう言うものなのかさっぱり分からない以上は何とも言えなかった。

アイクアル王国にも遺跡はあるとの事だが、それよりも近い場所にあるのがそのエレデラム公国と

言う国の遺跡だそうなのでまずはそこから向かう事にした。


先程の村長の説明によれば、エレデラム公国と言うアイクアルの隣国は「強運過ぎる」国なのだとか。

他国から何回も戦争を仕掛けられた事があるものの、戦争を始める前に相手のトラブルで

戦わずに済んだとか天気が味方してくれて相手の軍勢が撤退してしまったとか……とにかく

そう言った運の強いエピソードには事欠かないと言う。

しかし何回もそんな強運のエピソードを歴史書に記して来ているせいか、強運「過ぎる」国で

あるとして気味悪がられる事も珍しく無いらしい。

(この世界にいきなり来てしまった事自体が、間違い無く俺達にとっては不運でしか無い。

そのエレデラムとか言う国は異世界からやって来た俺達にも強運で味方してくれるって言うのか?)

エイヴィリンは最初から疑って掛かる姿勢である。

実際の話、村長からそのエピソードを聞かされた時にエイヴィリンの隣で「嘘くせー」とウォルシャンが

小声で呟いていたので、その感想にはエイヴィリンも100パーセント同意していた。

既に今までの人生で最大の不運に見舞われているこの2人だからこそ、余計にそれが信じられない。

それでもそのエレデラム公国に地球への手掛かりがあるかも知れないなら行くしか無いのだ。


そして何の因果か、エイヴィリンとウォルシャンが乗るワイバーンのパイロットはまさかのあの最初の獣人であった。

これだけでも非常に気まずい。

「……あ、ええと……さっきは悪かった」

申し訳無さとその気まずさでウォルシャンが謝罪をするものの、肝心のその獣人にはプイッと無視されてしまった。

やっぱり気まず過ぎる。

村長曰く、この集落で1番のワイバーンの乗り手だそうだが「下手さがナンバーワン」と言う可能性もあるし

「コントロールの荒っぽさがナンバーワン」と言う可能性も否定出来ないのがきつい所だ。

それでもワイバーンを操縦して目的地まで向かってくれるとの事だったので文句を言える立場では無い。

エイヴィリンとウォルシャンはこうなったらこのこの獣人のコントロールテクニックを信じるしか無かった。


「それじゃ色々お世話になりました」

「ああ、地球に帰れる様な手掛かりをあの欠けているピースと一緒に持って来て、無事に此処に1周して

戻って来られるのを願っているよ」

村長から激動のメッセージが述べられたのを切っ掛けにして、2人の大空の旅がスタートした。

世話になったと挨拶はしてみたものの、最終的にはこの獣人の集落に戻って来るのが約束でもあるので、

次に再会出来るのを村長は楽しみにしている様である。

とは言ってもこの世界は広い。それもかなり広い、と村長が言っていた。

地球の地図と見比べても縮尺が違う可能性もあるので、地球よりも狭い世界なのかも知れないし

逆に大きな世界なのかも知れない。

その上、遺跡の場所も全ての国で分かっている訳でも無ければ分かっている以外の場所にも

新たな遺跡が発見出来るかも知れない。

後は自分達の存在そのものがこの世界では異端の存在なので、それが良い方に転がるかも知れないし

悪い方に転がるかも知れない。

「かも知れない」の連続でまだまだ仮定の段階でしか無いのだが、実際に仮定の段階なのだからしょうがない。


特に魔法王国カシュラーゼと言う国に目を付けられてしまったら、それだけでかなり遺跡調査がし難くなる事は

簡単に予想出来る、とまで村長の白ライオンには言われている。

だからこそ、2人はカシュラーゼを1番後回しにする事で意見を一致させていた。

そもそも遺跡と言うもののイメージが2人には全く湧かないので、何かこう石造りのだだっ広い建物で、

ファンタジーな世界だから内部は魔物が徘徊していて最深部にはボスっぽいのが居て、トラップが

満載している……そんなイメージしか今の所は思い浮かばなかった。

2人がこの世界で戦う上で有利な点と言えば、魔術の類が一切効果が無い事……位なのだがそれも

回復魔術と防御魔術「も」効かない点で殆ど有利では無くなってしまう。

しかもこれ等の情報はグレリスから全て聞いたゲームの情報なので、普段ゲームには全くと言って良い程に

縁が無い2人はやっぱりイメージがそれ以上浮かばない。

でも、行き先がそこしか無いのなら行くしか無いのだ……。


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