A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第36話
が、ただ単にバックアップと言っても何をして貰えるのか分からない。
その事をエイヴィリンとウォルシャンが聞いてみると、白ライオンの村長はこの世界で
効率良く移動する為の手段を提案して来た。
「空の旅は大丈夫か?」
「空……と言うと?」
「ワイバーンに乗って貰うんだよ」
「わ、ワイバーン……?」
存在自体を知らない訳では無い。
むしろグレリスの影響で色々とファンタジーについて教えられた事が原因で、2人も少しだけだが
ファンタジーの知識は頭に入っている。
しかし、頭の中に入っているのと実際に見るイメージとはまた話が変わって来る。
もしかしたら自分達の考えているワイバーンと、この世界のワイバーンは姿形が全く違う生き物と言う可能性がある。
だけど用意してくれるのは「空の旅」と言っていたので、その事を踏まえるとやはり「あの」イメージの
ワイバーンしか頭に浮かばない。
そのワイバーンが居る場所に案内してくれると言うので、村長に付いて集落の外れへと向かう2人。
するとバサバサと何かが羽ばたく音が2人の耳に聞こえて来て、しかもその音は段々大きくなって来る。
「……お、おおおおおっ?」
そして2人の目に飛び込んで来たのは、柵に囲まれた広場の中で翼を動かして
ウォーミングアップをしているワイバーンの姿だった。
しかもかなり大きいサイズのワイバーンが何匹も常駐している様で、翼を動かしている者が居ればエサを
食べている者、ダラーンと地面に伏せて寝ている者、その場をウロウロと歩き回って落ち着きが無い者等
様々なサイズで様々な性格のワイバーンが地球人2人を出迎えてくれた。
「あー、確かにワイバーンだこれは」
「確かに……とは、ワイバーンは御前達の世界には居ない筈では無いのか?」
感心していたエイヴィリンがその村長の疑問に答える。
「「現実には」居ない。俺達の世界では空想上の存在としてしか見た事が無いからな。実際に世界中の
隅々までもう調べ尽くされているが、俺達の世界ではこんな生物の存在は見た事も聞いた事も無い」
でも、地球で空想上の存在であるワイバーンとこの世界のワイバーンのシルエットはそんなに大差が
無い様なので2人は心の何処かで安心した。
違う点と言えばその翼が鋭く、油断すればそばに居る人間や獣人達に突き刺さりそうな位だろう。
「そうなのか。だが空想上の生物でも見た事があるのなら話は早い。どの様な生物なのかは分かるか?」
いきなりそう聞かれてウォルシャンが考える。
「どの様な……翼動かして空飛ぶって事位かな。後は何か口から炎とか吐いたて燃やしたり
冷気吐いて凍らせたりってのが出来るんじゃないかと思うぞ」
グレリスから教えて貰った限りでは、作品ごとにワイバーンの性能や出す技、それから大きさ等も空想上の
存在故に設定が違うので何とも言えない。
それをウォルシャンが伝えると、村長はワイバーンに目をやって説明を始める。
「ん……この世界のワイバーン大体御前達のイメージと合っている。後は我々獣人族や人間達が飼い馴らして
空の旅をしたり遠くに人や荷物を運ぶ為の移動手段として使用するんだ」
「あー成る程な。そう言うワイバーンもこっちで考えている奴は山程居るよ」
だったら詳しい説明は要らないらしいのだが、問題は誰がこのワイバーンを操縦するのか。
まさか俺達が操縦するのか? とエイヴィリンが聞いてみたが、村長は鼻で笑って否定する。
「はっ……そんな事はさせない。こっちでこの集落1番のワイバーンの乗り手に世界1周の旅をして貰うから安心しろ。
それにさっきやった通り御前達が武器や防具、それに魔法を使えなくとも空であれば地上の魔獣や
人間の盗賊達等は避けられるからな。食料もそれなりの分を持たせるし、足りなくなったら買い足せる様に
金も持たせる。ワイバーンも御前達3人を乗せられる様に1番大きいサイズのを出そう。それで良いだろう?」
「あ、ああ……」
エイヴィリンとウォルシャンはやはり心に何か引っかかりを覚える。
この世界の事を何も知らない自分達に世界の説明や魔力の説明等をしてくれるのは分かる。
しかし、結局使えなかったが武器や防具を支給しようとしたり魔術のトレーニングを受けさせてくれる等、
そこまでの事をどうして見ず知らずと言っても良い自分達にしてくれるのであろうか?
それだけのメリットがある様な事なのだろうか? 何か裏があるのでは無いか?
これだけはどうしても聞いておきたかったので、エイヴィリンは素直にその部分を村長に一気に問いただした。
すると、村長からはこんな答えが。
「興味本位って奴だ。私達はこの世界で長い事生きているが、まさか魔力が存在しないと言う生物に
出会える等とは思わなかった。だから御前達がこの世界でどう生きて行くのか、それを見てみたいと言う訳だ」
「……ああ、そう……」
興味本位にしてはそこまでするか? と思ってしまう2人だが、村長はそれ以上の理由を語らないので
変わった人間……いや、獣人だなと思う事にしておいた。
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