A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第34話


エイヴィリンとウォルシャンの説明に村長は関心のセリフを漏らした。

「途方も無い数だな。こちらの世界では魔術で大体どうにかなってしまうから、

特に言語が国ごとに違うとか言うのは無いな。そうか……世界が違えば言葉の成り立ちも違うんだな」

「ああ。俺達の世界の神様は、なんで世界でこうも沢山言語を作ってしまったんだろうって

時々思うよ。俺達がこの世界に来る前は別の国に旅行してたんだけど、その国は英語とは

まるで違う言語を使うから旅行するのも一苦労さ。文字だって国ごとに綴りが違ったり、

そもそも形自体が違ったりするんだぜ」

「ならばそちらの世界の国はどれ位あるのだ?」

「正確には覚えてないけど、確か200近かったと思う」

「こっちの20倍って感じか。こちらの世界では文字も共通しているな。だとすればそちらの

世界で生きて行くにはなるべく多くの言語を覚えなければいけなさそうだな」

「旅行が趣味ならそう言うのも良いかも知れないけど、自分の国から出ないなら生まれてから

覚える1つの言語だけで十分って国もあるからそんな心配しなくても大丈夫だ」


口の動きが英語とはまるで違う言語を持っているこの世界で出来る事はまだ沢山ある様なので、

これからの自分達はこの集落を出てもっと大きな村や町で地球に帰る為の情報収集をするしか無いだろう。

だからこの集落から1番近い村や町の情報を聞こうと思った2人だったが、そう言えば……と村長が

何かを思い出したらしい。

「そうだ、この村には不思議な穴が開いているんだがそれは何か関係あるのかな?」

「あるのかなって聞かれても……まぁ、それじゃとにかく見せてくれないか?」

異世界からやって来た自分達にこの世界の事を聞かれても分からない。

むしろ教えて貰う側なのでどうしようも無い事だけは分かる。


そしてその不思議な穴と言うのは一体何なんだろう、と思いながら村長の後に続いて行くと、

集落の出入り口とは真逆の方向にある小さな林を抜けた更に先の広場になっている場所に、

確かに暗くて深そうな穴がポッカリと開いている。

深さは底が見えない程に深いらしいが、それに少しだけ比例するかの様に穴の広さも大きい。

楕円形になっているので正確な長さは測れないものの、ちょっとした体育館位の奥行きはあると

エイヴィリンとウォルシャンには思えた。

穴の向こう側はまた林の木々に囲まれており、実質この穴の広場で行き止まりになっている。

「この穴って一体何なんだ?」

「この穴は2年前に突然ポッカリと開いたんだ。元々ここには何も無い広場でみんなの屋外の

集会場として使っていたんだが、ある日の昼過ぎに突然地震が起こったと思ったら地面が崩れて

この穴が出来たんだ。丁度その時は誰もここに居なかったから被害は出なかったんだが、この穴の事を

聞き付けたアイクアル王国がこの中に何があるのかって言う事で調査団を派遣して来た」


そりゃそうだよな、と思うエイヴィリンとウォルシャンは、じゃあその結果はどうだったんだと言う疑問を

村長にぶつけた。

「ここから何か見つかったのか?」

「いいや……それが穴は見た目よりも深い物じゃ無かったから、結局地震による地面の陥没で結論が出た。

我々としても穴をこのまま放っておいたら誰かが落ちたりする可能性があるから調査団が帰った後に

塞ごうと思ったんだが……」

「だが?」

何だか歯切れの悪そうな顔付きと言い方をする村長。

しかし自分からこの穴を見せて来た上に、ここまで引っ張っておいてこれ以上の説明は無し……等と言う事に

なったら地球からやって来た2人としても寝覚めが悪い。


「その後にまた何かあったのか?」

先を聞きたい気持ちが滲み出ている口調でウォルシャンが質問すると、意を決した様子で村長は首を縦に振った。

「……ああ。その穴を埋める為に穴の周りの地面を掘り始めてそこから土を穴の中に落としていた時だった。

……ちょっとこっちに来てくれ」

手招きをして白ライオンが2人を導いた先……林で丁度行き止まりになっている方の穴側に向かうと、

そこには奇妙な物が存在していた。

「何だこりゃ?」

それは掘り起こされた地面に埋まっていたと一目で分かる、キングサイズのベッド位の広さがある何かの

石板の様な物だった。長方形の枠の様な区切りの中に、所々欠けているものの何かの文字が読み取れる

部分がヒビが入って何枚にも分かれている。


(いや、これはもしかして……)

偶然出来上がったヒビ、と言うよりも何かの区切りの様なヒビの入り方に1つの既視感を

覚えたエイヴィリンがポツリと呟く。

「石版みたいだけど、俺にはジグソーパズルに見えるんだよな」

「ジグソーパズル……」

エイヴィリンの呟きにウォルシャンもハッとした表情になる。

「成る程なぁ、そう言われてみれば確かにジグソーパズルってのがしっくり来るな」

「ジグソーパズル……と言うのは?」

「ああ、ジグソーパズルってのは……」

2人だけで納得されても困るとばかりに質問して来る村長に、エイヴィリンとウォルシャンは

ジグソーパズルについて自分達の持てる知識だけで何とか詳しく説明し始めた。


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