A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第29話
「ちょっと休憩させてくれないか……」
「俺も……流石に限界だぜ」
残りの武器が全て使えるかどうかを試した結果、何とその残りの武器全てで同じ現象が出てしまった。
予想していた事でもあるが、同時に2人の腕には痺れと痛みが最後の武器を試してから
3分経った今でも残ったままである。連続で痺れや痛みを受けていれば当然
こうなるだろう……と思いながら2人は休憩させて貰う事に。
何故こんな事になるのかさっぱり分からない。エイヴィリンとウォルシャンは元より、
この集落から武器を持って来たそれぞれの獣人達もそして村長も。
しかしまだ2人の実験は終わっていない。
次は防具の実験が待っているのである。
「あー……防具の実験はもう良いや……どうせ結果見えてんだろ」
「そうそう。また触っただけでビリビリ来やがる様なそう言うのがさぁ」
エイヴィリンもウォルシャンも既にやる前から分かっている……との口ぶりだが、それでも万が一
使えるんじゃないかと言う期待もある。
「一応試してみたらどうだ? 触れるかも知れないぞ?」
「……」
村長のセリフに、強い疑いの視線をその防具に向けるエイヴィリンとウォルシャンだが、
どうせやらなきゃいけないならさっさと済ませてしまうべきだろう。
そう思い、腕の痺れが収まった彼等は再び立ち上がって地面に置かれた金属製の防具と
革製の防具それぞれに近づいて行くのだった。
「魔道具も武器も防具も全て駄目って一体どう言う事だよこれ!?」
「俺等、何か特異体質なのか?」
この世界に生きている生物から見れば魔力を持たない人間と言うだけで十分な特異体質なのだが、
村長はその事についてしばし考え込む。
「武器と防具、そして魔道具の時でその現象が起こる条件に違いがある……だと……?」
防具も結果的には全て駄目だった。
木製と金属製の武器、革製と金属製の防具、そして銃の全てを試してみてこの様な結果になってしまった。
正式には「全く駄目だった」と言う訳では無い。
最初武器のトラウマもあって触れる事に若干躊躇していた2人だったが、いざ防具に触ってみると……何も起こらない。
「あれ? こっちは大丈夫みたいだな」
「おお、本当だ!」
さっきのトラウマが少しだけだが払拭されただけでも、かなり2人には安心感が芽生える。
だったらこの防具の中で自分達にフィットしそうな物を後は選ぶだけ、と思って2人は胸当てと
スネ当てを選んで装着してみる。
バチィィィィィィッ!!
「ぐうおおおぁああ!?」
「うぐぁぁあっ!!」
予想外の場所でそれは起こった。
2人がフィットさせる為にそれぞれ胸と足に防具を押し当てた瞬間、武器の時よりも強いかも知れない
痛みと痺れがあの時の音と光に襲い掛かって来た。
幾つもの修羅場を潜り抜けて来た、そしてさっきの武器のショックで慣れて少し耐性が出来ていた2人でさえ
かなりのショックを感じるものだったのだ。
「な、何っ……またか!?」
村長も獣人達も、流石に3度目ともなれば余り驚きを感じない筈だったのだが、最初にエイヴィリンと
ウォルシャンが防具に触った時に何も起こらなかった事からすっかり油断していた。
「……触るのは良いみたいだが……着けるのは駄目らしいな」
「何なんだよ一体。何でそんな中途半端な反応なんだよ!?」
冷静につぶやくエイヴィリンとやり場のない怒りに震えるウォルシャン。
しかしそう言っても、身に着けた瞬間にこうした反応が起こるのだから文句を言った所で解決には至らない。
「と言う事は俺達、武器に触るのもダメなら防具を身に着けるのもダメって事だろ? それじゃもし
この世界で戦うって事になったら……」
「素手で戦うか、身の回りでこうした反応が出ない物を武器にして戦うしか無いだろうな」
「ジャッキー・チェンじゃあるまいに……」
まさか異世界に来てまで地球のアクションスターであるジャッキー・チェンの名前が出るとは思いもよらなかったし、
映画の中の話だから実際にはそうそうああやって上手い事戦えるのかと言われればそうでも無い。
しかし、今の自分達が痺れや痛みを感じているのは紛れも無い現実。
そして自分達が習っているカンフーにも太極拳にもそれぞれ武器を使った戦い方がある訳だから、
身の回りにある武器を代用してそれでピンチを切り抜けるのは必要なスキルでもある。
勿論元々持っている武器を無くしたり奪われたりしない様にするのが1番だが、それが100パーセント
そう言う状況に陥る事は無いのか? と聞かれれば答えは「NO」だからだ。
それ以前に戦わずして地球に帰れるなら話は別だが、この異世界だし何が起こるかはさっぱり分からない。
現に初っ端から獣人達とは1度トラブルになりかけていた訳でもある。
ならばその「ジャッキー・チェン戦法」を駆使して、この痛みが出ない様な物を使って戦うのであれば
何とかなるかも知れない。
しかしそんな事を考えていた2人は、この異世界特有の戦い方を思いついた。
「あ、そう言えば魔術は? 魔力が無いとやっぱり魔術って使えないのか?」
そう聞いてみるウォルシャンだが、村長は即座に首を横に振った。
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