A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第26話


でも、自分達ももしかしたらその異世界のテクノロジーを体験出来るかも知れない。

そんな淡い期待を抱いたエイヴィリンとウォルシャンは、村長に1つの頼み事をしてみる。

「俺達もその魔道具って言うの、使えたりするのかな?」

「地球には無いテクノロジーだから、俺達も使えるかどうか試してみて良いかな?」

村長はいきなりのその申し出に一瞬ポカンとしたが、すぐに表情を緩くして頷いた。

「あ……ああ、分かった。それなら実際にまずは身体能力が上がったかどうかを確かめて貰った方が良いな。

魔道具はそれぞれ身に着けた生物の中にある魔力に反応して身体能力を上げるから、

まずは実際に試した方が早いだろうからな」


だがその時、あの最初に出会った獣人が村長のセリフに疑問を持ったらしくこんな質問を。

「村長、この者達は魔力が身体の中に無い訳ですから本当に効果があるのでしょうか?」

魔道具が魔力と関係のある道具なら、魔力を持っていないこの2人は一体どうなるのだろうか?

そう思っての獣人の質問だったが、村長はそれについてもこう答える。

「それは確かにあるだろうが、それも含めて実験をしてみるだけだろう」

そのセリフを最後にして村長は立ち上がり、エイヴィリンとウォルシャンを家の外へと連れ出した。

そうして連れ出された先は村長の家の前。そこで集落の獣人達監視の下、実際に地球人の2人が

魔道具を身に着けてみてどうなるのかを見てみたいと言う事だった。


「ええとそれじゃ、お前の腕輪を貸してくれ」

村長が1人の獣人から腕輪を借りる。

「どっちから試す?」

「なら俺からやるよ」

そう言ってウォルシャンが腕輪状の魔道具を受け取って、いざ自分の手首に取り付けようとした……が!!

バチィィィィッ!!

「……ぬぐああっっ!?」

「うわっ!?」

「うっ!?」

リングから強くて眩しい光、それから風船が破裂する様な破裂音、そして腕全体に広がるジーンとした痺れの様な痛み。

その3つのいきなりの出来事により、反射的借りた腕輪型の魔道具を地面にウォルシャンは落っことした。

まさに一瞬の出来事だった。


呆然とするウォルシャン、そして同じく呆然とするエイヴィリンに村長に周りの獣人達。

それ程までのインパクトが今の出来事にはあった。

「な、何をしたんだ!?」

「い、いや俺は何もしてない!! 俺がこの腕輪を着けたらいきなりすげー事になって……」

ウォルシャンもこの事態には動揺を隠せない。

「このリングには何か仕掛けがあるのか?」

「仕掛けだって? そんな事を私がしても何の意味も無いだろう」

ウォルシャンの疑問にやや怒り気味、それから疑問の色を隠さない口調で村長が答える。

「……確かに、村長が俺達にそんな事をしても意味は無い……か」


隣でそう呟いたエイヴィリンが、組んでいた腕を解いて手を差し出す。

「それじゃ次は俺がやってみよう。俺ならまた違う結果が出るかも知れないからな」

「あ、ああ」

触るだけなら問題は無いらしいこの魔道具の腕輪だが、着けるとなるとまた話は変わって来るらしい。

らしい、らしいと仮定での話しか出来ないのが2人にとっては歯痒い所だが、実際にエイヴィリンも同じ結果が

出るのであればそれは仮定からしっかりとした現実に変わる。

さっきのウォルシャンのシーンを間近で見てしまっただけあってか、やや緊張気味のエイヴィリンだがここで

自分が着けなければ話が進まない……と言う事で意を決して自分の手首にその腕輪を通してみた。


バチィィィィッ!!

「ぬぐおぁっ、はぁ!?」

またもや物凄い音と光、そしてエイヴィリンの腕にも伝わって来た痺れの様な……嫌な類の痛み。

「な……何でだ!?」

自分と同じ結果がエイヴィリンにも現われた事に、ウォルシャンは驚きの表情で素直にその感情を表現する。

「何か細工したって訳でも無いんだったら、原因は俺達にあるって事なのか?」

そう呟いたウォルシャンに、痛みと痺れが残る腕をさすりながらエイヴィリンも頷いた。

「ああ、どうもそうとしか考えられないな。だって村長が俺達にこんな事をする必要性が無いだろう?」

「勿論だ」

「で、そっちの腕輪を貸してくれた獣人もそれは同じだし……ってなれば俺達とこの腕輪はやっぱり何かが

拒否反応的なそう言うものがあるんじゃないのか?」


ウォルシャンもそのエイヴィリンの考えには同意だ。

「だって普段からこれ、身に着けてるんだろ? なのに今だけそんな細工する訳ねーだろうし、じゃあ俺達の

身体に何か異常があるって事なんだろうしな」

でもそれは一体何なのだろうか?

ただ単に異常、と言っても思い当たる節はウォルシャンにもエイヴィリンにも1つしか無い。

「もしかしたら、俺もエイヴィリンもほら……あんた等言ってただろ。魔力って奴が身体の中に無いって。

だったらそれが原因じゃねーのかな。まぁ仮定の話でしか無いからしっかり原因究明されるまでは何とも言えねーけどよ」

ともかく、これでエイヴィリンもウォルシャンも魔道具を身に着けられないと言う事がまずは証明されてしまった様である。


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