A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第27話
「まさか魔道具が使えないなんて……」
まだ状況が飲み込めないと言った口調で村長が呟くが、それは現実なのだから認めざるを得ない。
「しかし、普通に町や村で生活するならまだしも武器が無いとこの世界で旅をするのはきついだろう。
それから防具も要るだろうしな。武器とか防具は使った事はあるか?」
「武器と防具……まぁ、それなりにはあるけど」
2人とも武術経験はそれなりに長いので、色々と武器の類の扱いも習得している。
エイヴィリンからそれを聞いた村長は1つ頷くと、獣人達に武器とそれから人間用にフィットしそうな
防具を持って来て貰う事にする。
「サポートするのであればこれ位はしないといけないだろう。しかし、サポートすると言っても我々だけでは
どうしようも無い時もあるだろうから、武器と防具位は装備しておいた方が良いだろうしな」
「何でそこまでこだわるんだ?」
その武器と防具の装備にこだわる村長に、ウォルシャンが疑問を抱いて質問する。
「御前達の世界には魔獣と言う存在は居ないのか?」
「魔獣?」
首を傾げたエイヴィリンに、村長は納得した表情を見せる。
「……その様子だと、どうやら御前達の世界には魔獣は居ない様だな。それじゃ武器と防具が
揃うまで色々と魔獣について説明しておこうか」
その名称から何と無く予想は出来る2人だが、魔獣と言うのが自分達のイメージと違う可能性も
あるのでここは素直に聞いておく。
「「魔獣」と呼ばれる事もあれば「魔物」と呼ぶ者も居るが、どっちでも構わん。私は魔獣と呼んでいるから
それで説明させて貰う。魔獣はこの世界に存在している魔力がねじれる事で生まれる、普通の生物とは違う存在だ」
「違う存在って事とか、ねじれるって言うのは分からないが……もしかしてその魔獣ってのは忌み嫌われてたりする?」
エイヴィリンの質問に村長は頷く。
「その通りだ。そう言えば魔力の説明もまだしていなかったか。魔力はこの世界に存在している生物全て……例えば
草や木、その石でさえも魔力を持っている。勿論私の中にもある。生まれつき魔力を持って生まれて来るのが
この世界の生物だが、空気中に漂っている魔力が原因は分からないがねじれる事から生み出される
魔獣と言う者が居る。自然発生するタイプと、その生まれた魔物から更に生まれる魔物の子供の2種類だ」
「ああ、繁殖しちまうのか」
そうなったら何か厄介な存在だなと思ってしまう。
地球でも繁殖し過ぎた野生生物を駆除した、なんてニュースが流れるのはそう珍しい事でも無いからだ。
「そうだ。だが私達獣人族には獣人族のテリトリーがある様に、魔物にも魔物それぞれのテリトリーがある。
だからお互いのテリトリーを汚さなければ問題は無いのだが、旅をするとなるとどうしてもそのテリトリーに
踏み込まなければいけなくなってしまう事もあるだろう。だからその時に丸腰で対処するのは難しい。
Eランクならまだしも、対抗出来てもせいぜいはDランクと言う所だろう」
「ランク……?」
まさか魔獣もランク分けがされているのか? とウォルシャンが聞いてみると、どうやら答えはYESの様だ。
「そうだ。ギルドと同じくこの世界の魔獣は5つのクラス分けがされている。下からEクラス、Dクラス、Cクラス、
Bクラス、そして最も強いのがAクラスとなる。目安になるのはその魔獣を初めて捕まえた時に国が測定した体力値、
魔力値、素早さ、それから単独行動か群れて行動するかの違い、凶暴性等を全て総合して
世界基準でランクが決められて情報が共有されるのだ」
要はしっかりと魔獣ごとに強さがランクで決められているらしいのだが、2人は今の村長のセリフの中で
聞き逃してはいけない単語を耳にしてしまった様なので、それについても説明を求める。
「魔獣は分かった。しかし……ギルドとは何なんだ?」
「何かの名前か?」
「冒険者ギルドと言う組合の事だ。ギルドの情報は全世界で統一するシステムになっているから、他国に行っても
登録し直す必要は無い。この世界で生きている獣人や人間達はほぼ全員がギルドに登録していると言って良い。
冒険者ギルドと銘打っているが、実際は仕事を世話する場所でもあるからな。だから仕事の当てを探したりする方も
居れば、仕事の求人を出す方もギルドに登録しなければならないんだ」
「ふむふむ、そう言う施設ならこちらの世界でもあるから分かるぜ」
言うなれば職業安定所みたいなものだろう、とエイヴィリンとウォルシャンは納得したので、ならば自分達も
登録しようと思ったのだが村長は何故か渋い顔つきになった。
「いや……それは止めておいた方が良いと思うぞ。色々と御前達には不都合が考えられるからな」
「え? 何で?」
「この世界で生きて行く為には登録するのが一般的じゃないのか?」
地球人達の頭には当然疑問が浮かぶ。
登録するのは止めておけ? それはさっきと言っている事が違うじゃないか。
そう思って疑問をぶつける2人だが、疑問をぶつけられた側の村長にも言い分はあった。
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