A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第20話


「祖国……ねぇ」

祖国とまで言われると言う事は余程の影響力がある様だ。

「ああ。例えば私が身に着けているこの魔道具。これも元々はカシュラーゼが生み出した画期的な代物だ」

そう言いながら、白ライオンは自分の首からぶら下がっているペンダントを持ち上げて2人に見せる。

「これが魔道具?」

「うーん、俺達にはただのペンダントにしか見えねぇけどなぁ」

オレンジ色の土台ベースに、赤や緑などで飾り付けがされたちょっと豪華そうなペンダント。

いったいこれの何処にそんな画期的な要素があるのだろうか? とエイヴィリンもウォルシャンも疑問に思ってしまう。


「魔道具についての説明は後回しにしよう。さて、カシュラーゼが何故この世界で影響力を持っているのかと言うのは、

やはり魔術関連での影響だな。この魔道具を始め、カシュラーゼは様々な魔術のテクノロジーの結晶を生み出しては

この世界全体に広めて行く事で、各国から信頼とその魔術の実績を積み上げて行った。魔道具の他にも例えば

生き物や物体を離れた場所に一瞬で移動させる事が出来る転送装置。それから条件はあるが、その転送装置と

同じ効果をもたらす転送陣。後は今まで弓が主体だった戦場に、火薬と魔力を使って弾丸を発射する事の出来る銃とかな」

「銃だと!?」

銃、と言う単語に真っ先に反応したのはエイヴィリンである。

ウォルシャンも銃に関しては、昔は軍人で今はバウンティハンターと言う仕事の関係上身近な存在である。

だが、実はイギリスの警察は銃を携帯しない決まりになっているので子供の頃から身近な存在……と言う訳では無かった。

エイヴィリンはその生い立ちから銃の扱いにも子供の頃から手馴れている人間なので、今のその銃の単語に

真っ先に反応してしまった。


身を乗り出したエイヴィリンと、落ち着いたままのそんな対照的な異世界の人間2人に妙な気持ちになりながらも、

今は別に気にしなくても良いかと思い直して白ライオンは説明を続ける。

「……ああそうだ。その銃が発明された事によって戦場では弓から役目が変わりつつあるが、その銃は生産量がまだまだ少ない。

だから銃を持っているとは言え全ての兵士に行き渡る程流通していないからまだ戦場では弓が普通だ」

そこで一旦言葉を切り、白ライオンは村の獣人が持って来たお茶を飲んで口と喉を潤す。

「……少し話が逸れたな。とにかくその銃みたいに常に魔術に関しては世界でも頭1つ抜きん出ている。

だからその分、カシュラーゼが他国に与える影響が大きいんだ」


ここまで話を聞いていたエイヴィリンが、もしかして……と自分の予想を白ライオンに話し始める。

「もしかして……そのカシュラーゼって言う国が魔法のテクノロジーを分けてやるから、その代わり戦争に

協力しろよみたいな感じで同盟を募ったとか?」

我ながらなかなか良い線行っている予想だと思ったが、どうやら当たらずとも遠からずだった様だ。

「ん、いや……少し違うな。どっちかって言うとそのカシュラーゼに魔術関係のテクノロジーを何時も色々と

世話して貰っていたから、その恩返しの意味を込めて同盟に参加した国が複数居たって事だ」

「ああ、そうなのか」

協力関係にある国であれば、何時までもギブばかりして貰っていては気が引ける気持ちも

エイヴィリンには分からないでも無かった。


今度はウォルシャンがその戦争について質問をする。

「それでその、カシュラーゼって言う国が起こした戦争に協力した国って言うのは何処なんだよ?」

「ソルイール帝国、イーディクト帝国、アイクアル王国、そしてカシュラーゼの合わせて4カ国だ。

その内のアイクアル王国の領土がここだよ」

「えっ!?」

まさかその戦争に参加していた国に、自分達はやって来てしまっていたのか?

一瞬動揺の色を見せるウォルシャンだが、それでも何とかその動揺を抑え込んで国の説明を求める。

「そ、それじゃこのアイクアル王国の説明から頼むよ」

「ああ分かった。その同盟を組んでいたイーディクト帝国とソルイール帝国とは、実に100年以上に渡って

友好関係にある国だ。この世界地図を見ても分かると思うが、領土の広さは世界の国々の中でも1、2を争う

広さでな。その領土の広さを活かして農耕に秀でた南国として知られている、いわば世界の食料庫とでも言うべきか」


食料庫。

得意分野の農耕を活かした、実に合理的な取り引きが行われているのだろうとウォルシャンは考える。

だとしたら……とさっきのエイヴィリンと同じ様にウォルシャンは自分の考えで白ライオンに聞いてみた。

「その食料庫であるこの国は……まさか戦争でも食料関係で支援をしていたのか?」

その質問に、白ライオンは感心した表情と口調で返答する。

「ほほう、察しが良いじゃないか。まさにその通りだ。イーディクト帝国とソルイール帝国とはその食料の取り引き先として

繋がりが深いからな。だからそのカシュラーゼが引き起こした戦争の、それこそ戦地へおもむく兵士達へ食事の材料提供を

していたんだ。ヴァーンイレスの隣国でもあるからな。流石に調理済みの食事は干し肉とかパン位しか

提供出来なかった様だが、そこは現地の兵士達が調理していたらしい」


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