A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第21話


「アイクアルって言う国の事は大体分かった。じゃあ残りのイーディクトって所とソルイールって言う所について説明頼むよ」

「ああ。イーディクトとソルイールはどちらもカシュラーゼの隣国だ。カシュラーゼの北側にあるのがイーディクトで、

西側にあるのがソルイール帝国。イーディクトは商工に秀でている国で、カシュラーゼとは魔術関連の書物や

開発道具等の取り引きをしていた。だから戦争の時もヴァーンイレス王国に攻め込むカシュラーゼの

軍事関係の武器や物資の支援を、その商工に秀でている面でサポートしていたんだ」

「ああ、このアイクアルが食事関係ならそっちはそれ以外の物資のサポートって訳か。じゃあ残りの

ソルイールって所は、カシュラーゼをどんな面でサポートしてたんだ?」

余りダラダラと説明をされても覚え切れないので、なるべく手短かに説明して貰おうと2人は思っている。


だがそのソルイール帝国の話をする前に、部屋の中に居る獣人の1人が白ライオンを呼び寄せる。

「村長、ソルイールの事について少々宜しいですか?」

「ん、ああ……」

一体何だと思いつつ、ヒソヒソゴニョゴニョボソボソと2人の後ろでその2人に聞こえない様に色々と

何か打ち合わせを始めた。

「何か、感じ悪くないか?」

「ああ……」

エイヴィリンとウォルシャンも小声で彼等獣人達に聞こえない様にそんな会話を交わす。

そしておよそ30秒後に白ライオンが2人の前に戻って来た。

「待たせたな、それじゃ続きを話すとしよう」

「……ああ、頼むよ」

文句の一言でも言ってやりたかった2人だがそこは我慢し、再び説明を聞く姿勢に入る。

だが、その文句を言いたかった気持ちが一気に吹っ飛んでしまう程の衝撃的な話がこの後、

エイヴィリンとウォルシャンに待ち受けていた!!


「そのソルイール帝国なんだが、戦争の時には物資では無く騎士団の人員を戦場に送り込んで

支援をした国だ。好戦的な皇帝が治めている国だからそれも無理は無いだろうな。カシュラーゼの

魔術によるヴァーンイレスへの攻撃の支援で、ソルイール帝国は騎士団を送り込んで戦争の

突破口を開いた事で知られている。いわば戦争を終わらせる為にとどめを刺した国だ」

「つまりそれは、カシュラーゼが魔術主体で戦ってソルイールが人員を送り込んだって事だな」

「そうだ。自分達の得意分野を活かした戦い方で、それこそあっと言う間にヴァーンイレス王国は滅んでしまったよ」

自分達の得意分野を活かして戦う事は戦争では当たり前の話だ。

例えば地形に関して地元の利があるとか、兵士の動かし方が他国よりも優れているとか、ある特定の

分野の武器の扱いが上手い部隊にはその武器を存分に活かした戦い方をして貰うとか、理由は様々だ。

話を聞く限りでは一見、数でのゴリ押しをしてそのヴァーンイレスを滅ぼした様に思えるものの、

カシュラーゼとその同盟国はそれぞれの自分達の役割を意識した戦術を考えたりバックアップをしていたらしいので、

基本的な戦争のやり方は分かっているらしい。


そしてその戦争の話が終わったと思えば、ソルイール帝国に関しての話はまだ白ライオンからあるらしい。

「今しがた、御前達の後ろに控えているその連中から聞かされて思い出した話があるんだが……御前達から

魔力を感じない事に関して質問がある」

「えっ、俺達に?」

「って言っても魔力とか魔術とかの説明なんてされてないから分からねーよ、俺等はさ」

説明をさっきから色々と受けているとは言え、このエンヴィルーク・アンフェレイアの右も左も分からない様な

レベルのそんな自分達に、一体何の質問がこの白いライオンはあるのだろうか?

「別に内容自体は難しい質問では無い。だが、そのソルイール帝国ではある事件が起こったんだ。

それについての質問でな」

「ある事件?」

知らない世界の知らない国で起こった事件の質問が、どうして自分達に?

エイヴィリンとウォルシャンの頭の中が、ますますクエスチョンマークで埋め尽くされる。


そんな2人に対して、白ライオンはまず衝撃の話を繰り出す。

「そのソルイール帝国にも、どうやら御前達と同じく魔力を持たない人間が現れたらしい」

「へ?」

「何ぃ!?」

余りにも話の内容がショッキングだった為、エイヴィリンは絶句してウォルシャンは白ライオンの方に身を乗り出す。

明らかに2人が動揺しているのを見つつ、その話を白ライオンは続ける。

「少し前だったか……確か……9〜10ヶ月位前か。それ位前の話になるが、魔力を持たないその人間が

ある事件を引き起こした事で、世界中でこの話は知られる事になった。勿論、我々獣人族にもその話が

伝わって来たのだが……何か知らないか?」

そんな質問が投げ掛けられた2人だが、頭の中がパニック状態になってしまっている為にすぐには返答出来そうに無かった。

「……まぁほら、まずは茶でも飲め。落ち着いてからゆっくり答えてくれれば良いからな」

木製のカップに入ったお茶を数人の獣人達に用意させ、白ライオンはパニック状態のそんな2人に差し出すのだった。


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