A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第17話


小さなぼやきだったが、この家の中の静けさと緊張感の中で意識をしろライオンに

集中させていたエイヴィリンとウォルシャンにはハッキリと聞こえた。

「エンヴィルーク……」

「アンフェレイア?」

何の単語なのだろうかと言う気持ちを込めてそう問う2人だが、白ライオンはますます

訳が分からないと言う顔つきになる。

「何を言っているんだ?」

「いや、それは俺達が知りたいんだが。そんな単語は俺達は聞いた事が無い」

「そうそう。俺もエイヴィリンも今初めて聞いたよ、そんな単語」

「……え?」

白ライオンの顔が更に凍りつくだけに留まらず、今度はエイヴィリンとウォルシャンの周りを取り囲む

獣人達の空気までも凍りつくのが、その取り囲まれている2人にも分かってしまった程に場の空気が変わった。


「ちょ、ちょっと待て。御前達は一体何処の国からやって来た人間なのだ?」

何か恐ろしいものを見る目つき。

白ライオンを始めとする獣人達のそんな視線が2人に突き刺さるが、恐ろしいものを見ているのはこの2人もまた同じだった。

それでもその質問に答えるべく、場の空気に負けない様に声を張り上げてウォルシャンが口を開いた。

「お、俺達はアメリカから来たんだ。あ、でも俺の方は元々イングランド生まれのイングランド育ちで

今はアメリカに住んでる。アメリカとイングランドは分かるだろ?」

最後の問い掛けは、さっきからずっとエイヴィリンとウォルシャンの両方に纏わり付いている

嫌な予感を振り払うかの様なものだった。

しかし、その嫌な予感が更にこの後プラスされて行く事になってしまう。


「何処の国だそれは……イングランドにアメリカだと?」

「えっ」

もうこのレベルになると疑問形でも何でも無く、絶句と言う意味で絞り出されたエイヴィリンのリアクションのセリフ。

白ライオンのこのリアクションは流石にアメリカ人にもイギリス人にもイメージ出来なかった。

「何だよそれ、聞いた事無いとかおかしいだろ?」

ウォルシャンがそう言うものの、それは白ライオンも全く同じセリフを言い返したい場面だった。

「それは私もそうなのだが。この世界の名前である、エンヴィルーク・アンフェレイアを聞いた事が

無いと言う人間は私も初めて見たぞ。130年以上生きているのに」

「130年って……」

ウォルシャンは頭を抱えてしまった。

一体この状況は何なんだ。何がどうなってこうなったんだ。


既に脳のキャパシティを超えた事態が起こっているのはウォルシャンだけで無く、

その隣で座っているエイヴィリンも同じだった。

幾ら冷静な性格だと言われても流石に限度と言うものがある。

それがまさしく今の状況であり、自分の理解出来ない状況が起こっているのは彼もウォルシャンと同じだった。

それでも深呼吸をして、何とか冷静になろうと思ってからエイヴィリンは口を開いた。

「世界……この、世界とは?」

ここは地球では無いのか?

もしかしたら、自分達は一昔前の有名な映画で見られた光景……いわゆる「地球とは違う世界」に

やって来てしまったのでは無いか?

明らかに突拍子も無い考えだったが、そう考えてみると何故だか妙にしっくり来てしまうのもまた事実なのは間違い無い。

いや、この事実自体が間違いであって欲しいのだが。


エイヴィリンのその問い掛けに、何故かは知らないが寒気を感じてしまった集落のリーダーである

白ライオンは獣人の1人に命じる。

「おい、この世界の地図があっただろう。世界全体の奴。それを持って来てくれ」

まさかそんな事が……と思っているのはエイヴィリンとウォルシャンだけでは無く、この集落の住人である獣人達も同じだった。

願わくば間違いであって欲しいのだが、さっきからこうして顔を向き合わせて話をしている限りでは

この人間達の身体から魔力を感じない事も含めて、もしそうだとしたら前代未聞の話と言う事になってしまう。

どうにか上手い方向に話が転がって欲しいと願いつつも、白ライオンに言われた通りに世界地図を

持って来た獣人の1人からその地図を受け取り、バサバサと開いて2人の人間に見せる。

「この地図に見覚えは無いか? これがエンヴィルーク・アンフェレイアだぞ?」

まるで子供に言い聞かせるかの様な、何処か馬鹿にした口調で聞きながら地図を差し出す白ライオン。


しかしその地図を見せられた2人の人間にとっては、もはやそんな口調すらも気にならない程の

ショックを受ける結果になってしまった。

「な、んだこれ……」

「これは……冗談だろ……?」

若干古ぼけて使い込まれた感じのある世界地図。

その世界地図に描かれている「世界」は、エイヴィリンとウォルシャンが今まで生きて来た「世界」とは

似ても似つかない地形をしていた。その世界地図にはユナイテッドキングダムはおろか、アメリカ大陸も

ユーラシア大陸もオセアニア大陸も描かれていない。

そもそも地球の大陸は複数ある筈なのに、その世界地図の大陸はエイヴィリンが見てもウォルシャンが

見ても明らかに1つしか無かったのである……。


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