A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第18話
「……物凄く重大な話があるんだけど、良いかな?」
地図を眺めていたウォルシャンが顔を上げ、神妙な顔つきで白ライオンに向かって切り出す。
「何だ?」
問い掛けられた白ライオンも、今までのやり取りやこの空気からウォルシャンの
言おうとしそうな事はある程度予想出来ていた。
だけでそれでも、聞くなら聞くでしっかりとこの人間達の口から聞かせて欲しい。
だからあえて自分達の口からは何も言わない様にする。
そんな白ライオンの様子を見て、ウォルシャンは意を決して口を開いた。
「……俺達の居るこの世界は、どうやら……俺達が生まれ育った世界とは違う世界だと思う」
そのウォルシャンのセリフを聞いて、白ライオンの口からは納得した様なセリフが出て来た。
「やはり……今までのやり取りを見ていてうすうす思ってはいたが、何処か違う世界の人間だったんだな、御前達は」
「気づいてたのか?」
「ああ、うっすらとだがな」
「だったら先にそう言ってくれれば、俺達だってここまで悩まずに済んだんだけどな」
どこか嫌味の様な口調でそう言うエイヴィリンだが、白ライオンはそんな事は気にしない素振りのままでセリフを続ける。
「何百年以上も前からエンヴィルーク・アンフェレイアの名前がついている世界だから、その世界の名前を知らないと
言う時点で引っかかるものがあった。それに御前達の身体から魔力を感じないと言うのも、私達にとっては
初めての体験だからな」
また魔力。
「それもう何回も聞いたよ。んで結局その魔力って言うのは何なんだ?」
うんざりした様なトーンの声でウォルシャンが良い加減説明してくれ、と言わんばかりの質問の仕方をしたのだが、
それを白ライオンは手で制する。
「待て待て。その前にこの世界の説明からしなければ魔力の事も分からないだろうから、先に
このエンヴィルーク・アンフェレイアの説明からさせて貰うぞ」
「だったらなるべく短めに頼むぜ」
「出来るだけ短くする様に努めよう」
そう宣言した白ライオンは、まずはこの世界の説明をアメリカ人とイギリス人の2人にスタートする。
「この世界は遥か昔、「エンヴィルーク」と「アンフェレイア」と呼ばれる男女の神が創ったとされている。その男女の神は
男のエンヴィルークが水と地、女のアンフェレイアが火と風属性となっている様に……あ、これは魔術の話なんだが、
色々属性と言うものがある。それは後で説明するとして、2つの神はそれぞれ役割が違うのだ」
「えーっとそれは要するに、世界を創った時にどっちが何を創ったかが分かれているって言う話か?」
元軍人として分担作業には慣れっこのウォルシャンがそう聞くと、白ライオンは深く頷く。
「ああそうだ。エンヴィルークがこの世界の大陸と海を創り出し、アンフェレイアはそこに光と魔力を生み出したと伝えられている。
そうして生み出された世界はその2つの神の名前を取って「エンヴィルーク・アンフェレイア」と名付けられたと言う伝説だ。
「そうなのか……で、その神の情報はまだ他に何か無いのか?」
「さぁなぁ。私達はそこまで詳しくは無い。ただ一説によればそのエンヴィルークとアンフェレイア以外にも、もう1つの神が
存在していたって話があるぞ」
「え? 3つ目の神が?」
反射的にエイヴィリンが聞き返していた。
そうだとしたら今までの話に矛盾が生じる事になる。
「じゃあその3つ目の神様とやらについて、他に何か何か知っている事は無いか?」
知っている情報はなるべく全て聞き出しておきたい。
それが後になって何処かで役に立つ情報かも知れないから、と言うのはエイヴィリンの考えだ。
白ライオンは顎に手を当てて考え込む。
「んん……知っている情報と言われても……その2つの神と知り合いだった、と言う程度の情報しか無いのが現状だな。
2つの神がこの世界を創ったのは子供でも知っている伝説なんだが、3つ目の神については全くと言って良い程知られていない。
私達獣人族としても3つ目の神について知りたいと言う者は大勢居るし、私もその1人だ。だが情報が無いのではどうしようも無い」
「そうか……」
とにかく3つ目の神が居る、と言う情報だけでも何かのヒントになる可能性が出て来たが、まだまだ世界の説明は足りない。
次は今の自分達が居る場所についてだ、と思いウォルシャンが切り出す。
「それじゃあさ……俺達が今居る場所ってこの世界地図だとどの辺りになるんだ?」
地図を床に置いて質問するウォルシャンに対し、白ライオンは迷い無く1つの場所を指差した。
「ここだ。ここに私達のこの集落が存在している」
「ここは……何だかこの世界の「ヘソ」って感じだな」
世界地図では各国の領土が色で分かりやすく区切られている。
そのそれぞれの国が色で区切られている世界地図の中で白ライオンが指差した場所は、黒の枠線で区切りがつけられている
大きな国の上部分……「ヘソ」と言うのはウォルシャンのストレートな表現だが、その表現で言えば俗に言う「でべそ」の様な
国の出っ張りの部分だった。
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