A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第14話


「うぐぅ……あっ、あててて……」

「むぅ……な、何が起こったんだ……?」

突然ベッドの下から溢れ出した光の刺激に、エイヴィリンもウォルシャンもお互いに

一時的に視界を奪われてしまった。

その状況からようやく回復しつつある2人だったが、その回復が終わり切らない内に次なる

ショックが自分達の目に飛び込んで来たのはすぐの事だった。

「……え?」

「な、何だこりゃあ!?」

身体をガバッと起こしたのはウォルシャンが先だった。

エイヴィリンはそんなウォルシャンと対照的にスローモーに身体を起こすが、キョロキョロと

周囲に視線を巡らせているのはウォルシャンと同じだった。


何故なら今まで自分達が居たのは、部屋の電気が点いている赤坂のホテルの一室の筈だった。

それが何故か、地面は乾いた土に所々草が生えている。

それにホテルの窓から見える東京の街並みは明らかに夜だったのに、今は太陽がさんさんと

降り注ぐ屋外の真っ昼間の時間帯。

「な、なぁ……これは一体どう言う事だ?」

ウォルシャンがエイヴィリンにそう問い掛けてみるものの、エイヴィリンは冷静な口調で呟く。

「俺に聞かれても困る。とにかく今の時間と日付だけでも確認しよう」

一先ず時間を確認すれば、あのホテルに居た時からどれ位の時間が経っているかが分かる。

それだけでも自分達がどの様な手段で何処まで運ばれて来たのか、位は幾らか予想出来るので、

2人はほぼ同時に腕時計とスマートフォンで時間を確認する。


だが、スマートフォンで時間を確認したエイヴィリンも腕時計で時間を計ったウォルシャンも

また同時に目を見開いて驚きの表情をそれぞれの顔に浮かべた。

「……あれっ?」

「な、何故だ……!?」

驚きのリアクションに関してはエイヴィリンの方が大きかった。

赤坂のホテルに着いて、土産を置いてそのまま夕食に向かおうと思っていた2人が時計で

事前に時間をチェックした時は18時35分だったのに。

その時間から僅か6分しか経っていない18時41分の時刻を示している。

その上、時間がそんなに経過していない事よりも更に恐ろしい事に2人は気が付いてしまった。

「……なぁ」

「何だ?」

「時間、進んでなくないか?」


ウォルシャンの質問に、エイヴィリンもジッとスマートフォンのディスプレイに表示されている時計を

見つめてみるものの、体感時間では明らかに1分……それから2分と経過している筈なのに

時計は一向に18時41分から動かない。

ウォルシャンの場合は時計の針が止まってしまっている状態なので、その状態で他人が見ても

ウォルシャン自身が見ても時計の電池切れだと言う事で片づける事が出来るのかも知れない。

だが、エイヴィリンの持っているスマートフォンのバッテリーはまだ76パーセントも残っているので、

ディスプレイに表示されている時計がその時間から動かないと言うのは明らかな異常事態だ。

アナログな物では無く、デジタルの最新式のスマートフォンをこうして持ち歩いていると言うのに

これはどう考えてもおかしい。


2人がキョロキョロともう1度周囲を見渡せば、そこはどうやら何処かの道の真ん中。

土の地面は程良く整備されており、足跡もうっすらとだが見えるので人の通り道だと言う証拠になる。

「……ここは日本なのか?」

「ちょっとGPSで調べてみる」

今度はウォルシャンが自分のスマートフォンを取り出し、宣言した通りスマートフォンに内蔵されている

GPSを起動させて現在の自分達の位置を調べてみる。

……筈が。

「あ、あれっ? 位置情報が見つからないだと!?」

「バカな、そんな筈は……っ!?」

エイヴィリンも冷静さを失いつつウォルシャンのスマートフォンのディスプレイを覗き込んでみるが、そこには

確かに英語で「位置情報が見つかりません」との表記が光っていたのである。


「位置情報が見つからない……と言う事は、この辺りは電波も届かない程の文明社会から

隔絶された場所だと言うのか?」

「だとしてもだ、こんな場所に何故俺達が居るのかと言う事からまずは調べなければならないだろう」

そう、エイヴィリンの言う通りだと言うのはウォルシャンにも分かっている。

まずはとにかく現状を把握する事。

周囲の状況や自分の持ち物を把握し、それから行動するのが大切である。無暗に当てずっぽうで

行動した所で良い結果が得られる事は殆ど無い。

だからまず、エイヴィリンが今の自分達の状況を口に出しつつ確認する。

口に出す事で自分の考えている事がウォルシャンにも伝わるからだ。

「今の俺達は赤坂のホテルでは無い所に居る。そして周りを見る限りでは遠くに森が見えるし、うっすらとだが

何かの集落らしき場所も見える。俺達の持ち物はスマートフォンに腕時計……それから財布。これで全部か?」

「ああ。食べ物とか飲み物は俺は持っていないが、エイヴィリンは?」

「俺も無い。となれば、まずはあの集落らしき場所に向かおう」

人が居るかも知れないので、その集落の人間を捕まえてみれば色々と分かるだろうと言う事で2人は

迷い無くその集落らしき場所へ向かって歩き出した。


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