A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第15話


その集落の方に歩いて行く間に、今度はエイヴィリンがスマートフォンのGPSで

位置情報をチェックしてみるが、結果はウォルシャンのスマートフォンと同じだった。

だったら本当にこの集落の人間に、ここは何処なのかと言う事を聞いてみなければ

自分達の変える手段は見つからないと言う事になる。

幸いにも2人とも財布があるので、道中の交通費に関してはカード払いでも何とかなるかも知れない。

東京にも田舎はある筈だから、せめてここが東京の田舎の何処かであればそれに越した事は

無いのだが……と思いつつ、民家が立ち並ぶ集落の入り口のアーチを2人が潜ろうとした時だった。


「……ん?」

「どうした?」

「いや、今なんかそのアーチに描いてある文字が一瞬読めなかった気がして……」

エイヴィリンが突然不穏な事を言い出しながら指を差す方向には、確かに木製の大きな、

しかし年月が経って汚れている上に所々欠けて古びているアーチに描かれている「ルルトゼルの村」の文字が。

「ルルトゼルぅ……? 何だか日本っぽく無い地名みたいだが、そんな村が日本にあるのか?」

旅行に来るに当たって事前に日本について色々と下調べをしていたウォルシャンは、日本は中国の

影響を受けてチャイニーズキャラクター……「漢字」で書かれた地名がその殆どであると言う。


しかし目の前にあるそのアーチに描かれている文字は、どう見ても2人が日常生活で使用している

アルファベットの綴りだったのだ。

「何かほら、テーマパークとかその辺りの話じゃないのか? そう言う所に俺達は置き去りにされちまったとか」

「ありえるな」

ネズミの国のテーマパークがこの日本にもあるので、もしかしたらそれに影響を受けたテーマパークがあるのかも知れない。

でもそんな所にどうしてわざわざ自分達を置き去りにするのだろうか、と思いながらもアーチを潜って

すぐ右側にある民家へと向かう。

集落の中は昼間だと言うのにも関わらず人の気配が余りしないのが不気味だが、幾らかは人の気配がするので

その気配の主が善人である事を祈りながらエイヴィリンが民家のドアをドンドンと黄色い手袋をはめた手でノックする。

しかし次の瞬間、エイヴィリンとウォルシャンは自分の目を疑う光景に直面する事になった。


「……誰だい?」

「えっ!?」

「な……」

それは確かに「人」であった。間違い無く「人」だ。

「人」なのだが……明らかにその成り立ちがおかしい。

何故なら動物の足にそれから動物の手が生えている人間……いや、もはやそれは「人間」では無くて

「動物」と呼んだ方が良いのでは無いかと言うシルエットである。

しかもそれ以上に2人を唖然とさせたのは、その出て来た「人」の頭が明らかに狼の頭部だった事だ。

(まさか、いや……そんな事がある筈が無い!)

(そうか、これはもしかして……)


冷静な態度が崩れつつあるエイヴィリンと、頭の中で出た結論に自分で納得したウォルシャンは同時に口を開いた。

「あ、あんたは動物なのか?」

「それ、着ぐるみか?」

同時に2人の男から問い掛けられた目の前の狼男は、左右に立っている2人を交互に見比べて一言呟く。

「……1人ずつ喋ってくれないか?」

最もな言い分のその願い出に対して、それじゃまずはエイヴィリンから話し出そうと思ったのだがどうやら

目の前の狼男のセリフはまだ続きがあるらしい。

「それに、何で御前達からは魔力を感じる事が出来ないんだ?」

「へっ?」

「魔力?」

いきなり訳の分からない単語が狼男の口から出て来たので、話し出そうと思ったエイヴィリンも

そのエイヴィリンに順番を譲ったウォルシャンも再びフリーズしてしまった。


「魔力って何なんだ?」

「何訳の分からない事を言ってるんだよ。そもそも俺達が先に質問してるんだからそれに答えてからにしてくれないか?」

「ああ……分かったよ。じゃあそっちの銀髪の人間から先に話せよ」

別に言われなくても2人はそのつもりだったし、何だか傲慢な口調が気に入らないのだがここは我慢して

エイヴィリンから質問をぶつけてみる。

「あんたは動物なのか?」

「ああそうだ。俺は普通に獣人だけどな。と言うかそれを言うなら御前達人間だって分類的には動物だろ?」

若干小馬鹿にした様な口調でそう言う狼男にまたイラつきがありながらも、冷静な性格のエイヴィリンは

顔に出さずに態度を押し留める。


その横でウォルシャンが今度は自分の質問をぶつける。

「あんたのその身体とその頭、良く出来てるな。そんな精巧な着ぐるみは見た事が無いんだが何処で買える?」

もし買う事が出来る日本なら土産の1つとして持って帰りたい所だったが、狼男の表情がその瞬間

呆れと怒りがミックスされたものに変わって行く。

「着ぐるみって何だ?」

「着ぐるみは着ぐるみだろ。ほら、人間が中に入って動物とかキャラクターの真似するあれだよ」

「そう言うのを着ぐるみって言うのか。だとしたら人を馬鹿にするのも大概にしろよ。何処の世界に

俺みたいな獣人が着ぐるみとか言う奴に入ってわざわざ人をビックリさせなきゃならねーんだよ?」


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