A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第11話
そのアメリカの組織に関しての調査が進められる中で、自分の身に危険が迫っている事を
感じていたウォルシャンにイギリス軍から一時的な避難命令が下る。
恐らく、ウォルシャンが情報をゲットしてしまった事に組織の連中が気がついたのでは無いか……と。
だからあえて敵の本拠地であるアメリカに逃れる事で敵の目を欺き、ほとぼりが冷めた事で
軍に戻って来いと言う通達だった。
しかしそれは良く考えてみれば、自分達が被害をこれ以上受けたくないからウォルシャンを
生け贄に捧げるのと同じ事じゃないか、との反発も軍内部からあった。
それでも軍の決定には逆らえず、ウォルシャンは一時的に身を隠すと言う名目でアメリカの
デトロイトへとやって来たのである。
その軍の上官から言われたのは、「アメリカのCIAに知り合いが居るから、今まで調べた情報を
持ってそこに駆け込め。他国内部の事にはイギリス軍が手を出せる状況では無いから、
自分でアメリカの組織に頼んでくれ」との事。
ますます体の良い生け贄状態にされてしまったウォルシャンだったが、それでも結局は
アメリカのデトロイトまでやって来た。
治安が悪い場所の方が逆に身を隠しやすいだろうと言う軍上層部の判断だった。
なのでその情報を持ってイギリスからアメリカにやって来たウォルシャンは、CIAにその犯罪組織の
極秘情報を提出しようと目論んでいた。
だが取引の当日、現場であるデトロイトの空港の人気の無い場所に着くとCIAの連中が全員殺されており、
そこで出会ったのがあの時の加害者……エイヴィリンだったのである。
ウォルシャンも当然狙われた。
「悪いけど、俺の秘密を知ってしまった以上は生かして置くのは無理だ。死んで貰う」
あの時のマチェーテを片手に向かって来るエイヴィリンだったが、それを素早く避けてウォルシャンは彼の足にローキック。
が、エイヴィリンもすぐに立ち上がりウォルシャンの手を掴む。
だがウォルシャンは手をつかまれた瞬間、彼の腕を素早く握って背負い投げを繰り出す。
「っ!?」
背負い投げを決められて後ろへと転がるエイヴィリン。
だがまた彼はすぐに立ち上がって素早い足払いをかけそのままマウントポジションを取る。
ウォルシャンはそんな彼に対して、跳ね起きの要領で腰を浮かせる。
するとエイヴィリンの身体が前のめりになって四つん這いになるので、エイヴィリンの左腕を右腕に、
エイヴィリンの左足を右足に絡ませる。
そして空いている左手で、自分から見てエイヴィリンの左肩を思いっきり押した。
そうするとテコの原理でエイヴィリンの身体はいとも簡単にひっくり返り、逆にマウントポジションを取られてしまう。
軍隊格闘術を習う過程で習った、クラヴマガのテクニックが今ここで発揮された。
「ぐうっ!?」
そのままエイヴィリンを押さえ込んだウォルシャンに、エイヴィリンは間髪入れず素早くチョップを首筋に
叩き込まれて気絶してしまった。
そうしてその窮地を脱出したウォルシャンであったが、エイヴィリンは絶対に獲物を逃がす事はしないので
意識が回復した後に身を隠しそうな場所を徹底的に推測する。
(電車や飛行機のチケットを取ったと言う情報は無し。だとすれば徒歩かタクシーで移動した可能性が高い。
でも、ここの近くには身を隠せる良い場所がある。行きそうな場所と言えばこの辺りかな?)
彼の見つめるノートパソコンの画面には、デトロイトの廃墟の画像が映し出されていた。
ウォルシャンに押さえ込まれてしまった時に、咄嗟の判断でエイヴィリンはウォルシャンのズボンのポケットに
小型発信機を押し込んでいたのである。
その発信機のもたらす位置情報からウォルシャンの行き先に見当をつけて、そのデトロイトの廃墟に
行って見るとビンゴ。
廃墟なら万が一の時にも見つかり難い……とウォルシャンは踏んだのだろうが、発信機を付けられている
状況では無駄な努力に終わってしまった様だ、とエイヴィリンは確信した。
(えっ!? な、何で奴が!)
ウォルシャンはまさかの奴が現れた事にびっくりしたが、その上運悪くエイヴィリンに見つかってしまう。
「見つけた……!」
当然、即座にウォルシャンは逃げ出した。
「待て!」
勿論エイヴィリンも逃がす事はしまいと追撃に入る。
廃墟はとても広く、今2人が追いかけっこをしているのは5階建てのビルの中。
工場だったらしくとても広いのが特徴的だ。
(しぶとい奴だ……!)
後ろを時折振り返ればエイヴィリンはコンバットパイソンを片手に追って来る。
とにかく今の自分に出来る事は逃げる事だとウォルシャンは自分にそう言い聞かせ、
縦横無尽にビルの中を逃げ回る。
だがそんな鬼ごっこも長くは続かず、最上階の行き止まりの部屋に出てしまった。
(くそっ!)
咄嗟に側にある大きな木箱の陰に隠れ、耳を極限まですませる。
心臓の音がとてもうるさくなり、汗も頬を流れるのがウォルシャンには分かる。
「ここまでだな。大人しく出てくれば苦しませずに殺してやる」
ジャキッとパイソンの発射準備を整え、エイヴィリンが部屋に入って来た。
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