A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第10話


加害者の方は逃げてしまったものの、まだ被害者の方を調べてみれば何かあの加害者に

繋がる手掛かりが見つかるかも知れない。

そう思ってウォルシャンは倒れている人影に近寄る。

(……駄目か……)

既に2人とも息が無い。1人は頭を至近距離で撃ち抜かれており、もう1人はさっき見た通り

喉と胸をそれぞれ刺されて死んでいる。

この2人は一体どうしてここまでされなければならなかったのだろうか?

さっきから銃声らしき音がパンパンと聞こえて来ていたのを考えてみると、どうやらこの2人と

さっき逃げて行ったあの人影との間には何らかのトラブルがあったらしいと言う事までは

ウォルシャンはイメージ出来た。


しかし、先程の人影が証拠隠滅の為か色々と回収して行ったらしく特に何か手掛かりらしき物は

2人の周辺には落ちていない。

(参ったな、これじゃあの加害者の素性が掴めない気がする……)

ここは諦めて、じきやって来る警察にさっきスマートフォンで撮影した動画を見せるだけでも

何らかの手掛かりにはなるだろうと思って立ち上がるウォルシャン。

だが、そのウォルシャンの目にある物が映った。

「……ん?」

それは倒れている死体の下から少しだけ覗いている、バタバタと風でなびいている紙の束だった。

(何だこれ……)

それを拾い上げたウォルシャンだったが、この屋上の暗さでは良く内容が見えないので

一旦屋上から出て灯りの点いているホテル内部へと入る。


そしてその書類に目を通して行く内に、ウォルシャンの表情が段々と驚愕のものに変わって行く。

「これは……!?」

まさかの事実にウォルシャンの身体が震える。

もしかしたら、自分はとんでもない事にまきこまれてしまったのでは無いのだろうかと思いつつも

その書類を見る事を止められない。

その書類の内容は、自分の所属しているイギリス軍に関係のある事がびっしりと記載されていたからだ。

とは言えども別に軍内部の不祥事がどうのこうの等と言う事では無く、ヨーロッパ各国の警察のみならず

軍までもが欲しがっている情報が記載されているからだ。

結局その書類を、さっきの騒ぎを聞きつけて到着した警察に重要参考人として身柄を一時的に

拘束されるまでウォルシャンは読みふけっていたのである。


警察での事情聴取で、動画撮影をしていた事からウォルシャンは事件とは無関係だと証明された。

しかしあの資料に関しては重要な証拠物件として預からせて貰うと言う事になり、ウォルシャンは

イギリス軍の身柄受け取り人に連絡をして迎えに来て貰う事になった。

本来であればこんな事はしないのだが、事態が事態だけにウォルシャンを厳重に護衛してイギリス軍まで

連れ戻す事で目撃者の抹殺を防ぐ意味があった。

それ程までに、ウォルシャンがゲットしたあの資料に関してはイギリスとポーランド……いや、ヨーロッパ全体を

揺るがす程に大きな証拠となるからだ。


何故ならその資料には、ポーランド旅行に来る前に通達のあったあの犯罪組織の事が

一部だけではあるが書かれていたからである。

資料としてびっしりと文字や写真が印刷されたその紙の束をゲット出来ただけでも、ヨーロッパの各地でとある

裏組織による様々な犯罪の噂が事実として認められる事に繋がる。

今まで確固たる証拠を掴めないままだったのが、自分がそんな大きな組織の証拠を掴んでしまった事で

これからどうなってしまうのかウォルシャンには見当がつかなかった。

だからイギリス軍へと強制送還される事になったウォルシャンだったが、これを切っ掛けにして自分の身の回りで

不可解な事件が起こり始める。


ウォルシャンがゲットした資料からイギリス軍やポーランド当局が調べた所によれば、どうやら規模としては

ヨーロッパ全体を牛耳る組織では無く、本拠地はアメリカにある組織だと言う。

そして近年になってアメリカからヨーロッパやメキシコ等の国外へと勢力を広げて来た組織であり、ヨーロッパでも

色々なマフィアや犯罪組織へとコネクションを持つ様になったと言う。

そして今回ウォルシャンが居合わせてしまった現場は、そのアメリカの組織を裏切った裏切り者達を

組織の人間が抹殺する所だったらしい。

そこでこの資料を回収するのを忘れてしまった為に、こうしてヨーロッパでその組織の正体がばれる

切っ掛けになったのだと言う。


その後もそのアメリカの組織への捜査が続けられていたのだが、イギリス軍の調査官がアメリカへと出張する際に

空港近くで何者かに暗殺される事件が発生。

それを皮切りにして今度は軍の施設に何者かが侵入して武器や弾薬を盗まれたり、イギリス軍の港が武装組織に

よって襲撃されたりと言う様に軍への襲撃が増えて来た。

ウォルシャンもこれは恐らくそのアメリカの組織か、もしくはコネクションのあるヨーロッパの組織の仕業か……と

見当がついたのでだんだん身の危険を感じる様になった。

その後、ヨーロッパの主要マフィアからは「自分達はこの件に関しては全く無関係だ」との声明が出された為に

ますますそのアメリカの組織への疑いが強くなったのだ。


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