A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第55話
その後、リオスは町外れの宿屋の部屋をゲット。そこでグラディシラ中を歩き回って
手に入れた情報を整理してみる。
このイーディクト帝国は商工に秀でており、農耕を得意とするアイクアル王国と言う国の間では
活発に取り引きがなされている。それから隣国カシュラーゼとの間でも魔術関係の取り引きを
数多くしている為か、この帝国も段々と近年は魔術が中心になって成り立っているらしいのだ。
(それを考えると、ホルガーは珍しいタイプの人間なんだな)
魔術が使えないと自称していたホルガーの存在は、やはりこの帝国にとってはレアなものであると言えるだろうとリオスは思い返す。
商工に秀でている国だけあって、魔術関連のテクノロジーは最近になって入って来たばっかりなのだが
その反面武器や防具と言った戦場で必要とされる制作物を輸出したり、あの鉱山跡からも分かる様に
資源がなかなか豊富な面もあってその点で他の国とテクノロジーのアドバンテージを取って来たと言える。
そんなイーディクト帝国のグラディシラでは、毎年この時季になると秋祭りが開催される。
収穫祭と言う名目ではあるものの、実の所は農耕に関しては別にそれ程でも無いのでこうしたイベントを
開く事によって得意分野の制作物の取り引きを増やしたり祭りの中の出店で街頭販売をする事で経済効果を目論むのだとか。
だったら別に、無理に収穫祭と言う名前にしなくても良いだろうにとこの話を聞いたりオスは苦笑いをしながら心の中で呟いた。
そして、その秋の収穫祭の中でワインや食事があのセンレイブ城にも運び込まれる。
当然、祭りだと言う事もあって何時も以上に警備も厳重だし、あの酒場で聞いた通り毎年人がわんさか集まる事も
あってかいざこざが必ずと言って良い程発生している。
そこでリオスは、自分だったらどうやって城に潜入するかを考えた。
(俺だったら2つの方法を考える。1つは毎年トラブルが起こっている事を利用して、今年もまたトラブルを起こして
騎士団の目がそちらに向いている時点で城に忍び込む。もう1つは食事やワインを運び込むと言う点で、上手くそれに乗じて潜入する)
そう考えて、リオスは1つ目の考えに自分でNGを出した。
(だが1つ目を成功させられる確率は低い。センレイブ城から離れた場所で毎年起こっているらしいから、城の前の警備兵が
わざわざ駆けつけて来る訳が無い。よっぽど人手が足りないなら別だが。そうなると自ずと可能性があるのは後者の方に絞られて来るか……)
あの集団のアジトで発見したメモにもそれらしき事が書いてあったのを、聞き込みをする内に段々リオスも思い出して来た。
(料理の仕出し業者をあらかじめ買収するとか、料理に毒を仕込むとか、それから兵士も部下が変装した偽者を用意するとか……)
毒を仕込む……と書いてある時点で誰かが殺されるのか、あるいは死に至る毒では無いにせよ城の人間が危険に晒されるのは
間違い無いだろうと危機感を今からリオスは覚えていた。
(ううむ、だとすれば秋祭りの日は要注意だな。幸いにも日程は1日中丸ごとやってそれで御仕舞いと言う訳だが……)
俺自身が潜入するなら如何するか? どのタイミングで忍び込むか? と言うリオスはその最善のタイミングを発見出来そうだった。
(……俺だったらそのタイミングで行く。人間の心理をついた方法でな)
秋祭りの準備はもうすぐ終わる。そして祭りの本番は今日から3日後。
(それまでに、幾つかの展開を頭の中でシミュレートしておく必要があるな)
1つ静かに頷いたリオスは、まずは体力を温存する為に少しストレッチをしてからベッドに入って早めに就寝する事にした。
そして次の日もその次の日も、リオスはなるべく宿屋から出ないで頭の中で作戦や相手が複数人だった場合のシミュレート、つまり
あの時の滝つぼでのバトルの反省をしながら次のステップに繋げていた。
軍人と言う者は個人で戦う事はある意味殆ど無いと言って良いだろう。 部隊の仲間を信頼し、そして部隊と言うチームで相手の部隊を撃破する。
リオスはその司令官となるべく、今では少佐の授業を地球で受けて来ていた。
(だけど、今は俺1人しか居ないからな。となれば1人でどうやって立ち向かうかによる……)
勿論、鉢合わせをせずに城の中へと潜入出来る事が1番良い。
しかし城の中であの集団と鉢合わせしてしまったら? 城の警備が厳重であったら?
鉢合わせについてはシミュレーションを幾つも立てる事が出来るのだが、センレイブ城の警備についてはリオス自身は全くの
部外者の為に未知の領域である。
(見取り図や兵士達の位置等を手に入れたかったのだが、あいにくこの世界ではそんな人脈も衛星写真もインターネットも無いからな……)
こう言う所はやはり地球のテクノロジーの方が数倍優れていると同時に、今の地球から違う世界に来てしまった自分が
いかにそうしたテクノロジーに頼った生活をしているのかを改めて思い知らされる事になったリオスだった。
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