A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第9話


それはポーランドの首都ワルシャワに向かった時の事。

この時は珍しく2日連続で休みがあったので、ワルシャワで1泊してポーランド観光を楽しんで来ようとした。

それが修羅場の始まりだった。

ワルシャワに約5時間かけて辿り着いたウォルシャンは、ワルシャワ市内を色々と見回って観光を大いに楽しんでいた。

そして今回の日本旅行と同じく、観光スポット巡りや土産物の購入を終えて市内のホテルに向かった。

ここまでは良かった。

だがそのワルシャワのホテルにて、ウォルシャンはとんでもない物を手に入れてしまう。


それを手に入れる切っ掛けになったのは、ホテルのレストランで夕食を摂った後だった。

(……呑み過ぎたな。少し風に当たるとしよう)

しかし軍の施設では無くホテルの中と言う事もあり、部屋に戻る途中で風に当たる事の出来る

スポットを探している内に迷ってしまった。

(んん……何処だここは?)

豪快な性格のウォルシャンは、酒が入っていてはまともな判断が難しい状況に陥っていた。

そんな彼がやって来たのはホテルの非常階段。

(上でも下でもどっちでも良いけど、どうせならワルシャワの夜景も楽しみたいから屋上に上ってみるか……)

本来ならいけないと分かっていても、酒の力もあって自分にブレーキが掛けられない状況に

なっているウォルシャンはそのまま階段を上に向かって進む。

そこからスマートフォンで写真でも撮ってみようと思い、スマートフォンのカメラも準備した上で。

そこから外に出て風を感じつつ酔いを覚まし、道に迷ってしまったんだったら通り掛かった従業員に道を聞いて

自分の部屋に戻れば良いか……と考えていたウォルシャンの目の前に、その酔いを一気に

覚ましてしまう程の強烈な出来事が襲い掛かる!!


それこそが、このワルシャワのホテルにはるばるアメリカから裏切り者を始末しに来たにも関わらず、

まさかの裏切りの連鎖を受けて追われる身になっているエイヴィリンの姿だった。

最初はワルシャワの街並みを眼下に見下ろして酔いをゆっくりと覚ましていたウォルシャンだったが、

そんな彼の耳に実弾を使った射撃訓練で聞き覚えのある音が耳に聞こえて来た気がした。

(……えっ、この音はもしかして……?)

聞き覚えのあるその音だが、今この場では聞こえてはいけない音でもある。

しかし世の中にはその音に良く似た音が幾つもあるし、何かの聞き間違いだと思いまた夜景を楽しもうとした

ウォルシャンの居る屋上のドアが次の瞬間、バンっと勢い良く開かれた。


「っ!?」

その瞬間、反射的に身体が動いた。

このホテルの屋上は客に利用してもらうためのプールが設置されていたり、屋上庭園として

草や花が植えられていたりと言う洒落た事はされていない、ただのコンクリートの地面の排気口やら

非常階段やらが設置されている無機質な屋上だ。

そのビルの屋上にある柱の陰に隠れ、音のする方の様子を伺い始めたウォルシャンの目に、

早くもショッキングな光景が飛び込んで来た。

「……!?」

パンッと音がし、その後に人間の呻き声がしたかと思うとそのまま後ろに倒れてしまう人影がある。

そしてその横には、明らかに銃を構えるシルエットの人影も存在している。

この状況で考えられるシチュエーションは限られて来る。

(映画の撮影……いや、それにしては様子がおかしい。と言う事はまさか……)

何時の間にかすっかり酔いも醒めてしまったウォルシャンの目の前では、自分が先程入って来た

屋上のドアからまた1人誰かが飛び込んで来る様子が。

そしてその人影と、さっき銃を構えるシルエットをしていた人影が何やら争い始める。


ウォルシャンは咄嗟に、ズボンのポケットから取り出したスマートフォンのビデオカメラ機能でその様子を撮影する。

ここで無闇やたらに飛び出して自分まで巻き添えを食らうよりは、多少暗くても自分で何か

証拠を残しておいた方が良いと判断したからだ。

ウォルシャンが撮影しているとも知らず、2つの人影はカキンカキンと金属音を鳴り響かせながら戦っている。

(良く見えないからハッキリとは分からないが、あれは恐らく1人が何か長めのナイフみたいな……。

そしてもう1人は普通のナイフみたいだが……)

いかんせん何がどうなっているのかさっぱり分からないので、ウォルシャンはズーム機能でなるべく

鮮明にその屋上の戦いを録画し続ける。


……だが、そんな戦いも唐突に終わりを告げる。

(あっ!?)

ナイフらしき物を振るっている男の方が、長めの武器を振るっている男の懐に飛び込んで

その喉目掛けてナイフを突き刺す。

更に人影はナイフを引き抜いて、今度はその喉にナイフを突き刺された人間の胸にナイフが突き刺さるのが

ウォルシャンの目にもハッキリと見えた。

刺された方の人影は武器を手から取り落とし、力無く背中から地面に倒れ込んで動かなくなってしまった。

「うわ……!!」

ここまで見てしまったらもう黙っていられない。

録画を終了してその人影達の元へと駆け寄るウォルシャンだが、刺した方の人間は刺された側の武器と

他にも何かを回収して非常階段を駆け下りて行ってしまった。


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