A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第8話


ポーランドのホテルで運悪くそんな状況に鉢合わせてしまったのが、サッカーで有名な

マンチェスター出身のイギリス人ウォルシャン・マイトフィル。

188cmの身長に87kgの体重と、イギリス人の平均身長をはるかに上回るガタイの良さの持ち主である。

そんな大きな体格の持ち主である彼だが、決して太っている訳では無い。

元々筋肉質な身体つきをしているウォルシャンは、職業もイギリス陸軍に所属している軍人だったのだ。

元々大柄な体格で生まれて来たウォルシャンは、その大柄な体格に見合う豪快な性格で

幼少の頃から色々なスポーツに興味を持つ様になった。

クリケット、サッカー、テニスにラグビー等を経験していたウォルシャンだが、彼が今でも続けている

スポーツが中国生まれの武術である太極拳だった。


それもエクササイズでは無く、古型の太極拳法である楊式太極拳。

108もの型を有しており、6歳から始めたウォルシャンはその全てをマスターするのにかなりの

時間が掛かったのだと言う。

サッカーやラグビーの様なチームプレイも好きだったが、集中して取り組む事の出来る武術である

太極拳の様な武術系のスポーツも好きだったウォルシャン。

そのまま大学を卒業するまで太極拳を続け、インストラクターの資格も習得した彼は大学卒業後の

進路をどうするか考えていた。

勉強もまぁまぁ出来た部類ではあったのだが、いかんせんスポーツと比べると出来は悪かった。


なので、これらのスポーツの経験を活かして何が自分に出来るのかと言うのを考えてみた所、イギリス陸軍の

軍人であった父親の影響でこれ等のスポーツを始めたと言う事もあって同じくイギリス陸軍人の道を選んだウォルシャン。

本当にただ、自分のやって来た事を活かせそうな道に進んだウォルシャンだったのだがどうにもその道は彼にマッチしていたらしい。

そしてイギリス軍に入隊してからは勿論イギリス軍の軍人として、サンドハースト王立陸軍士官学校に

在籍していた過去を持つ若手の士官としてウォルシャンは活躍していた。

サンドハースト王立陸軍士官学校はアメリカ等の士官学校の4年間教育では無く、1年……正確には

44週間と言う短い期間で卒業後に少尉として任官される。


だから生まれてからイギリスの大学をストレートで卒業して21歳、そのまま士官学校に入学して卒業すれば

22歳で少尉に任命される。

ウォルシャンはこのルートで卒業し、丸6年間勤務して2年前の2014年の28歳の時に除隊。

その時は大尉(キャプテン)の地位にあったが、除隊する切っ掛けは彼自身の単独行動が原因だった。

その少し前の2013年にウォルシャンは少しだけ休暇を貰い、アメリカまで「旅行」にやって来ていた。

ここまでは軍人も一般人も関係無く良くある話なのだが、このアメリカ旅行……と言う名の情感に許可を貰った

逃亡生活に来る前の段階でウォルシャンが取った行動に問題があったのだ。

それは「見てはいけないものを見てしまった」事。

そしてその出来事こそが、彼とエイヴィリンが出会う切っ掛けになった事件だった。


その事件が起こる半年程前から、ヨーロッパの各地でとある裏組織による様々な犯罪の噂が流れていた。

それは麻薬の取引から大量殺人事件までありとあらゆる犯罪に手を染めているもので、グレートブリテンでも

イングランド、アイルランド、スコットランド、ウェールズ問わずに裏組織による犯罪がささやかれていた。

しかし確固たる証拠を掴めないままだったのもまた事実。

一説によればヨーロッパの裏社会を牛耳るだけの規模の組織だとも言われており、何時何処で何が起こるか

分からないのでヨーロッパ各国は警戒を怠らない様にとの通達が出されていた。

勿論ウォルシャンにもその話は伝わっていたが、自分がまさかその裏組織の人間に狙われる立場に

なってしまうとは………と言う展開が待っている事等、その通達の時点では予想出来なかった。


いや、予想出来たと言えば予想出来てはいたのだが……狙われるのであれば「イギリス軍」と言う組織単位での

話であって個人的に狙われる事は無いだろうと考えていた。

情報を知りえる者が複数存在するのであれば、その情報を知りえる者達を纏めて排除してしまった方が

手っ取り早く解決出来るだろうと言うのは当たり前の話だ。

しかしその情報を知ってしまったのが「1人」なら、その人間を消してしまった方が話が早いので、いわば状況によって

変わるケースバイケースである。

その状況に陥ってしまった原因は、イギリス軍の行動が原因では無く彼自身の行動にある。

元々旅をするのが好きなウォルシャンは、軍の非番の日にはイギリスを抜け出してフランスの首都パリ、

ベルギーの首都ブリュッセル、アイルランドの首都ダブリン、オランダの首都アムステルダム等に日帰り旅行をしに出掛けていた。

特にスペインに向かった時は物価が安く、イギリスの半額位の値段で買う事が出来るので重宝したのだと言う。

だが、その日帰り旅行が趣味だったウォルシャンが趣味の中で今のアメリカ在住の未来に繋がる出来事に遭遇してしまうのだった。


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