A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第7話
だが、まだもう1人のターゲットがエイヴィリンには迫っていた。
もう1人……組織のベテランの人間が向かって来た所で同じく発砲したがギリギリでかわされてしまい、
更にリボルバーもベテランのキックで弾き飛ばされてしまう。
「く……っ!!」
これでエイヴィリンは素手になってしまったが、黒帯を取得しているカンフーのおかげで体術も
出来ない訳では無いエイヴィリンはその裏切り者であるベテランの男と戦う。
ベテランの人間の方もハンドガンを構えるものの、それをエイヴィリンの回し蹴りが弾き飛ばして
これでお互い条件はイーブン……にはならなかった。
「はっ!」
「っ!?」男はハンドガンが無くなった時の為の武器として、コンバットナイフの他にも何故か今はマチェーテを持っている。
このホテルに来た時にはそんな物、持っていなかった筈なのに……と思いながらも応戦するエイヴィリン。
「ぬおおおっ!!」
振るわれるマチェーテを回避し、エイヴィリンもふと思い出したコンバットナイフを
ズボンの後ろのポケットから取り出して応戦する。
リーチではマチェーテに劣るものの、取り回しの良さはコンバットナイフの方が上なので一長一短である。
そんなリーチの違う2つの武器が交じり合い、カキンカキンと金属音が屋上に鳴り響く。
「ぐっ……」
若手の中では腕が立つと言われているエイヴィリンでも、まだまだ経験不足な面は多い。
一旦男から距離を置き、今までの疑問を全てぶつけてみる。
「あんた……組織を裏切るのか?」
「裏切る? いいや、もう裏切ったんだよ」
「何故だ? あんたも世話になっただろう?」
このベテランメンバーが組織の為に色々と活躍していたのはエイヴィリンも知っている。
なのにどうして裏切るのか?
エイヴィリンにはどうしてもそれが分からない。
そんなエイヴィリンに対して、だったら説明してやるよとばかりに男が口を開く。
「世話になった? ああ、確かに世話になったさ。だけどやたらミスに厳しくなって、
今じゃ息抜きもなかなか出来やしねぇ。確かにボスの考えている事も分からないでも無いが、
俺は今までの少し緩い環境が気に入ってたんだよ。だから辞めようと思って話を付けに行ったのに、
ボスは俺を辞めさせようとしなかったんだ」
「だから裏切った、と?」
エイヴィリンの確認の問い掛けに、男はハッキリと頷いた。
「ああそうだ。こんな裏社会のドブネズミ達の間じゃ、裏切りや密告なんて当たり前の話だしなぁ。
それに俺はこの……今お前が殺したこいつと一緒に新しく組織を立ち上げて、そこでヨーロッパの
奴等とつるむつもりだったのに。お前がこうして邪魔してくれたおかげで全てがパァだぜ」
何処か投げやりな口調でそう言う男に対し、エイヴィリンは再び冷静な口調で問う。
「それで、俺がこの男を殺すのは不都合だったと?」
「ああ。抜けさせてくれないのなら裏切るだけさ。どうせあのボスにはまともに交渉しても通用しねえだろうし……が、
今回はタイミングが悪すぎた。俺が抜けようと思っていた所にミッションの依頼が来た。ここまでは良かったが
ターゲットがまさかだった。俺とパートナーになる予定だったこの男を
殺すってなるとな……お前の言う通り不都合なんでね」
だから死んで貰うぜ、とじりじりとマチェーテを構えて男はエイヴィリンに近づいて来る。
そのマチェーテの出所についても訪ねてみれば、実にあっさりとした答えがベテランの「元」メンバーから返って来た。
「そんな物騒な物……ここの支部からは受け取って無い筈だが?」
「これか? これはこの死んじまった奴の形見さ。銃火器だけじゃ不都合な事も多いってんでこいつが持ってた。
元々こいつは東南アジアの紛争地域に潜伏していたターゲットを殺しに行った事もあるから、その時に手に入れて
護身用に何時も持ち歩いてるんだってよ。だからさっき、お前を追いかける前に俺がナイフにプラスして
持たせて貰ったって訳……さっ!!」
再び上段から斬り掛かって来る男。
それをしっかりと回避してからエイヴィリンはナイフを振るうが、リーチが短いので男はすんなりとかわしてから
再びマチェーテを振り回す。
「ぬああああっ!!」
またもや雄叫びを上げながら男は鬼気迫る勢いでエイヴィリンに向かうが、今の男の言い分を聞いている内に
次第に冷静さを取り戻して来たエイヴィリンが、振り被って来たマチェーテを左手でブロック。
そこから間髪入れずに右ストレートパンチの要領で男の喉を一突きにし、1度喉からナイフを引き抜いて
更に心臓にもう一突き。
「ぐふぅっ……」
エイヴィリンがナイフを引き抜けば、呻き声と共に男はそのままマチェーテを取り落として力無く背中から
地面に倒れ込んでバトルは幕を閉じた。
だが、このミッション自体はまだ幕を閉じていない。
無事にこの場から早く立ち去らなければ、エイヴィリンは警察に捕まってしまう可能性が高い。
そう思って地面に落ちたマチェーテと、元メンバーと自分が使っていたハンドガンをそれぞれ回収して
屋上の非常階段から素早く逃走するエイヴィリン。
そんな彼は、そこで重大なミスを犯していた……。
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