A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第4話


しかし、組織の崩壊は刻一刻と迫っていた。

それはエイヴィリンがペンシルベニア州の17歳までの義務教育を終えて高校を卒業し、

18歳になった2か月後の事。この時点で組織に入って8年目、殺し屋としてのキャリアも

長いエイヴィリンがめでたく義務教育を終わらせたと言う事と誕生日を迎えた事が切っ掛けで、

組織のボスは長年の計画として考えていた他地域への進出を決める。

今まではアメリカの裏社会で活動していたエイヴィリンの組織だったが、更なる規模の拡大の為に

ヨーロッパの裏社会に君臨している色々な国のマフィアとのパイプを色々なビジネスで繋いだり、

アメリカの隣国であるメキシコギャングとも移民の密入国を手引きするビジネスで取り引きが

あったりしたので、この機会に国外への進出を決めたのだ。


だが、それが崩壊の第1歩だった。

今までは少しのミスなら許されていた組織が、他国への進出を切っ掛けにして1度のミスでも

起こそうものなら即制裁を加えると言うものだった。

いや、今までが逆に甘かったと言うべきなのだろうか。

メキシコのカルテルは、もはや軍隊レベルの装備を揃えている世界で1番恐ろしいギャングとまで

言われているし、戦争まで実際に引き起こしている。

イタリアのマフィアも世界的に有名で、裏社会とはまるで縁の無い一般の人間にも映画等の影響で

「イタリア=マフィア」とイメージする人が少なくない。


そうしたマフィアやギャングと関わりを持つと言う事は、関わった組織から腰抜けだとか甘ったれだとかと言う

レッテルを貼られない様にしなければならない。

甘い部分を見せたら、場合によっては自分達に不利な取り引き内容を持ち掛けられたりその甘い部分に

愛想を尽かした組織の人間が裏切って違う組織に行ってしまう可能性だってある。

だからこそ、舐められない様にする為にはまず身なりと組織のやり方を見直しておかなければならないと

ボスが決断したからだった。

そのボスの方針転換は勿論エイヴィリンにも守って貰う事になった。

幾ら今までヘマをしていた人間であろうが、逆に優秀な人間であろうが組織の一員である以上は

組織のルールに従うのが当たり前の話だからだ。


そしてそのやり方が決められてから、今までは緩い雰囲気が一部で見られていた組織の中の空気が変わって行った。

何だか何時もピリピリしたムードが漂う場所になり、複数の組織と本格的な繋がりが出来た事で仕事量も

目に見えて分かる程に増える。

しかもそのどれも失敗出来ない様なミッションばかり。

だから組織のメンバー達も何かとギスギスしたり疲労が溜まって行く。

それでも国外への進出と言う新しい1歩を踏み出した事で、この組織がもっと大きくなると言う期待も

あったからこそ組織が崩壊するのを防げていた面もあった。


エイヴィリンの活動も今までは義務教育があったので、ギリギリ学校の時間に間に合う

アメリカ国内の領域だけで収まっていた。

それが義務教育を終えた事で時間に縛られる事も無くなったので、まずは隣国メキシコや逆隣の

カナダと言ったアメリカ国外への活動へと徐々にシフトして行く。

2年後の20歳の時には既に、1年間の中でアメリカ国内に居る時間よりもアメリカ国外に居る時間の方が

長くなると言うスケジュールで「仕事」が組まれていた。

若いからこそ、今の内に色々な世界を見てそしてその世界各地で仕事をする事によって経験を積ませよう、と

言うのがエイヴィリンを始めとする「義務教育を終えた20歳以下の若手のメンバー」に対しての

ボスの教育方針となった。


当然若手メンバー達の指導役としてベテランのメンバーがそれぞれパートナーとして1人ずつ付く事になる。

エイヴィリンにもパートナーが付いてヨーロッパやメキシコ、更には少し距離を伸ばしてアフリカや南米にも

時には飛んで色々な地域でターゲットを追い詰め、そして手に掛けて行った。

狙ったターゲットは絶対に逃がさない。

いや、「逃さない」と言うよりも「逃せない」と言った方が正しかった。

ターゲットを殺すのに失敗してしまえば、今度は自分が組織から命を狙われる立場になってしまうからだ。

その為にもエイヴィリンを始めとする組織のメンバーは、若手からベテランまで例に漏れずに事前に綿密な

計画を練って行動し、想定外の事態が起きてもターゲットを追い詰められる様に計算して

計画を練らなければならない。


それもこれも、全ては組織のボスが対外勢力に自分の組織の弱みを見せない様にしている結果だった。

「あの組織を敵に回すと恐ろしい」

「あの組織に仕事を頼めば、どんなターゲットでも必ず始末してくれる」

敵対勢力やターゲットには走した恐怖心を植えつけさせ、仕事を依頼したい人間からはそれ等の

実績の上に成り立つ信頼を得て組織の規模も少しずつ大きくなって行く。

仕事でも趣味でも、人の役に立とうと思うのであれば「リスペクトされる事」が何よりも重要だ。

リスペクトも出来ない様な実力で人の役に立とう、等と言う事は大きな間違いである。

だが組織が大きくなる事によって、組織がまた1歩崩壊の道を歩んで行く……。


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