A Solitary Battle Another World Fight Stories Final stage第2話


アメリカからやって来た2人だが、お互いに生まれ育った環境が違う。

銀髪の若者であるエイヴィリンはアメリカ生まれのアメリカ育ち、つまり国単位で見れば地元。

しかし紫頭のウォルシャンはアメリカでは無く、かつてそのアメリカが独立をさせて貰おうと

戦争を仕掛けたイギリスの人間である。

イギリスから見れば戦争を仕掛けられた側、になるのだが元々イギリスはアメリカを

植民地支配していた為に、その植民地支配から逃れる為の戦争だった。

そして、この2人のアメリカ人とイギリス人の間でも壮絶な争いがあった。

今でこそバウンティハンター仲間として活動してはいるものの、その仲間として活動するまでの

経緯には文字通り「殺るか殺られるか」の関係だった。


「殺る」側の人間だったのがエイヴィリン・ガウンディ。現在23歳。

ペンシルベニア州の田舎町で生まれ育ったエイヴィリンは、どちらかと言えば貧しい家庭に生まれた。

それでも両親は彼に目一杯の愛情を注ぎ、なるべく不自由させない様にとの思いでエイヴィリンを育てた。

エイヴィリン自身も物心が付いた頃からその両親の愛情には気が付いており、何時か

自分が立派になって金を沢山稼げる様になったら恩返ししたいと思っていた程だった。

……彼が10歳になるまでは。

しかし、その生活は本当に唐突に崩れ去ってしまう。

「あ……ああ……」

スクールバスの中から見えるその光景は、まだ10歳の子供にとっては衝撃的だった。

何故なら、朝の学校行きのスクールバスの窓から見えた自分の家がオレンジ色の炎に包まれて

燃え上がっていたからであった。

自分が学校から帰る時にはそんな話が学校からされていなかったと言う事もあり、帰りのスクールバスに

乗った時から家に着くまでの間にその火災が起こったのだと後でエイヴィリン自身が知る事になってしまう。


何故ならその火事が起こっている家を見た数日後、精神的ショックで病院で寝込んでいたエイヴィリンを

何者かが誘拐すると言う第2の事件が発生した。

その事件の首謀者こそが、エイヴィリンの両親と歳の離れた姉を殺害した上に証拠を全て残さない様にするべく

彼の生家に爆弾を使って火を放って、骨組みが崩れる程の大火事を引き起こしてエイヴィリンを孤児にしてしまった男だった。

その事をエイヴィリン本人が知ったのは誘拐されてからすぐの事だったので、勿論最初は自分の家族を

殺した人間……つまり家族の仇と言う思いから何度も何度もその男を殺す為に色々なやり方を考えた。

だが、いざそれを実行しようとしてもその男の下には優秀な部下が何人も付いているばかりか、

たかが10歳の年齢の子供では知力も体格も男の部下にすら敵わなかったのもあって諦めざるを得なかった。


そしてボスを殺す事を諦めてしまったエイヴィリンが、そのボスの元に引き取られてから2か月後にまたもや

衝撃的な事実がボスの口から告げられる。

「御前の家族全員、3人とも殺し屋だったんだよ」

目の前の男が言っている意味が分からなかった。

今、この男は何と言った?

両親と姉が犯罪者だって? それも殺し屋?

「……どう言う、事だよ……」

その言葉を絞り出すので精一杯なエイヴィリンの心に、容赦無く現実が突き付けられて行く。

「御前の家族の失敗が原因で、私達の仕事に大きな支障が出た。仕留める筈のターゲットを

仕留められなかったと言う事は、すなわち報復されろ恐れもあればサツの連中に目を付けられる事にも

繋がる結果になるからな。だからこそ、まずは仕留め損なったターゲットを他の奴が殺す。これは足が付かない鉄則だ。

もう1つ足が付かない様にしなければならないのだが……それはもう、ガキの御前にも分かるだろう?」

「わ、分からないよっ!!」


本当は分かっていた。

でも認めたく無くて、反射的に出てしまったエイヴィリン自身の心の叫び。

その心の叫びも、組織のボスにとってはガキの駄々にしか聞こえていなかった。

だから、そのやり方を目の前で実演する。

座っているデスクの引き出しから、まるで文房具でも取り出すかの様な手つきでリボルバーの黒い拳銃を取り出した。

そしてその銃口をエイヴィリンの左斜め後ろに居る、エイヴィリンをボスの元に連れて来た男に向けて発砲する。

ターゲットが唖然とする途中で、発砲されたその銃弾は眉間を撃ち抜いて絶命させる。

脳漿と鮮血を周囲の地面に撒き散らし、男はそのまま後ろに声も無く倒れ込んだ。

「あ、ああ……」

目の前で起きた光景に脳のキャパシティが限界を超え、1度だけエイヴィリンはクスッと笑ってしまった。

これがエイヴィリンが初めて目の当たりにした、目の前で人が死ぬ瞬間だった。

「これで分かっただろう。この男は4日前に殺しの依頼をヘマしたんだ。私の耳に入っていないとでも思っていたらしいがな……」

へたり込むエイヴィリンの耳に、ボスのそんなボヤきが飛び込んで来た。

しかし目の前で起きた出来事が余りにもショッキング過ぎて、ボヤきは右から左へとエイヴィリンの頭の中を通り抜ける。

そして同時に、彼の心の中で何かが壊れる音がした。


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