A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第54話
この違和感の正体を、リオスは必死に自分の脳が記憶しているこの世界での今までの
出来事から思い出そうとする。
そして、この世界の思い出の最初辺りで当てはまる部分があった。
(そうだ、確かあの時……)
それは最初の町で、因縁のあるあの集団と戦う前の話だった。
あの時はあの集団がアジトから出て行ったのを見計らって、アジトになっているその一軒家にリオスが侵入。
そしてそこで、驚くべき事が書いてあるメモが驚くべき所に置いてあった事を思い出した。
(今思い出しても、本当に何であんなメモをあんなずさんな場所に置いておくのやら)
流石に危機管理がなって無さ過ぎだな、と改めてリオスは他人事ながらため息が出てしまう。
だけど今はそのメモの置き場所に関してはどうでも良い。そのメモの内容が肝心だ。
(確か、あのメモには城に潜入するとかって書いてあった筈だ。それから料理の仕出し屋も仲間にしてあり、その料理を
運ぶメンバーで検問を突破するとも。しかも、騎士団員がどうのこうのとまで……)
ワインは余り関係無いが、料理と言うキーワードに結びついて段々リオスの顔が険しくなって行く。
(となれば、今までの出来事から察するにあの集団の次のターゲットは……ま、まさか……)
そこまでの事を考えているとすれば、非常にまずい事を自分は知ってしまったのでは無いかと柄にも無く身体が震えるリオス。
だが、それと同時にまだ解決していない疑問もフラッシュバックして来た。
(待て……となれば、何故あの集団はあの滝つぼに現れたんだ? 確かに騎士団に逮捕して貰った筈。
なのにあの滝つぼで戦ったのは間違い無くあの時の集団だった。一体どう言う事なんだ?)
流石にリオスもエスパーでは無いので、他人の考えを読める訳では無いがある程度の予想は出来る。
(あの時の集団があの町の騎士団に拘束されたとして、そこから考えられる行動は今の所3つだ。まず、騎士団員の目を
盗んで脱獄したのが最もオーソドックスか。次に、拘束されたがあのメモやあのアジトの家宅捜索だけでは証拠不十分で
釈放されてしまったケース……これも無くは無いだろう)
そして3つ目。これはリオスが最も考えたく無い事だ。
(もしかすると、あの時の騎士団員もあの集団が買収していた? それもあり得なくは無い話とは言えども……可能性は低い。
何故ならそんな事が出来るのは余程の金や人脈がある人間に限られるだろう)
そんな事が出来る人間は今までに殺されてしまった権力者達位のものだろうが……と考えを巡らせるが、幾らこのワインショップの
前で考えてもラチが明きそうに無かった。
(歩きながら考えれば、頭の回転も良くなるかもな)
人通りが多い事に十分注意しながら、リオスは再び歩き始めた。
しかし、その後で色々な場所を見て回ったのだが結局リオスの考えは纏まらずに終わってしまう。
(後、俺がまだ見ていない場所と言えば……)
メインストリートから視線を斜め上に移すと、この国の最高権力者が住んでいる場所の全景が見て取れた。
センレイブ城。イーディクト帝国の皇帝が居を構える場所。
(が、あそこに俺が入るのは不可能だろう。言うなればアメリカのホワイトハウスと同じだ。警備も厳重だろうし、夜でも
騎士団……それも今までに出会った町の騎士団とは一線を画する程の実力を持っている騎士団員が寝ずの番を
しているのは容易に想像が出来る)
当然セキュリティチェックもされるだろうから、ただでさえ魔力の無い異世界人の自分が正攻法でのこのこ出向いた所で
すぐに怪しまれて拘束されて牢屋に入れられるのが落ちだろうな、と言う所までリオスには想像出来た。
しかし、あのメモに書いてあった「城」のワードがそのままあのセンレイブ城の事だとすれば、やっぱりリオスが最も考えたく無い
ターゲットに行き着いてしまうのも事実だった。
(仮にターゲットがそうだったとして、何故そのターゲットを狙うんだ? 余りにもリスクが高すぎるのでは無いかと思うが)
とにかく、その最悪の予想が外れる事をリオスは勿論願っているが、もしその予想が当たっているのならどうにかするべきだと思う。
(面倒な事に巻き込まれる訳には行くまい、と思っていた筈なのにな。けど、俺がここまでこの面倒な事に執着する理由は
自分でも何となく分からんでも無い)
恐らく、そのターゲットが殺されてしまったらもっと面倒な事になるのは目に見えていた。
だからこそ、その面倒な事態を回避する為に自分は行動するのか……と考えてみるのだが、もしかしたら奴等の目的は
違う所にあるのかも知れないとも予想を浮かばせてみた。
(ん? 待てよ……その連中が城に潜入する理由と言うのはターゲットを殺す為じゃなくて……)
凄い突拍子も無い話ではあるが、その可能性も低いながらある確率が無いとは言えないものだった。
(気になるな。もう少し調べてみる必要がありそうだ。このまま自分1人で考え込んでいたって結論は出せそうに無い。
まだ陽は昇っているので町の喧騒が収まる日没までは時間がある)
自分の立てた幾つかの予想がどれだけ正しいのかを確かめるべく、怪しまれないレベルでの聞き込みを始めようと
リオスは再び町の喧騒の中に足を進ませ始めた。
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