A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第57話


バトルが終わったは良いものの、ここのバトルが終わっただけでまだ主犯のコルネールは

アーシアを連れ去って未だに逃走中だ。

(先程はああ言ってしまったが、このままだと気掛かりだな……)

これ以上は自分の介入する事では無いと思っていたが、目の前で1人の人間が

連れ去られてしまっている以上は追い掛けて助け出すべきだと自分の気持ちがアイヴォスに伝える。

しかし、肝心のコルネールの行き先が分からない以上は追い掛け様が無い。

(部下達は全員死んでいるが……何か手掛かりは無いか!?)

部下の1人の服で自分の刀の血糊を拭い去って、その刀を鞘に収めてからアイヴォスは

3人の部下全員のありとあらゆるポケットや服の内側を探ってみる。


すると、最後に殺した斧使いの男のズボンのポケットから1枚のメモが出て来た。

(何だ、これは……)

ガサガサとメモを開いて見てみると、そのメモの内容にはコルネールの行き先らしき場所の情報が書いてあった。

(カブラークの町にあるサリスイール会館に集合……昼過ぎに?)

今の自分が居るこの町の名前は、確かイースディスの町だった筈だとアイヴォスは思い返す。

あいにくこの国の住人でも無ければこの世界の人間ですら無いので、カブラークの町も

サリスイール会館と言う場所にも心当たりが全く無い。

そこで、前にあのアーシアの家で家主のアーシアから貰ったヴァーンイレスの地図を軍服の内ポケットから

取り出して場所を確認してみる。

(カブラークの町は……ええと、ここから西に向かって進むのか)

ヴァーンイレスからエスヴァリークに向かうのであれば東に向かって進まなければならない。つまり今まで自分が

馬で走って来た方向に逆戻りしなければならないのだが、肝心のその距離が地図上では分からないのが欠点だ。


だったら分からない事はこの国の住人に聞いた方が良いだろう、との考えでアイヴォスは動き出す。

日本のことわざに「聞くは一時の恥 聞かぬは一生の恥。と言うものがある。

知らない事を人に聞けばそれは一時的な恥を書くだけで済むが、知らない事を知らないままにしていたら

一生恥をかく事になってしまう、との意味だと言うのをアイヴォスは学んだ。

しかし今の状況で言えば「聞くは自分にとって必要な事だが、聞かぬは一生の後悔」に

なってしまう可能性が非常に高い。

町の方角を聞かないでこのまま出発してしまえば、アーシアの行方や彼女がどうなってしまったのかを

永遠に分からないまま、この先の人生を歩んで行かなければならない。


だからこそ、その時に後悔しない様に生きる為にアイヴォスは倉庫の外に飛び出した。

(さっき同じ様な事を私はアーシアにも言った。だからまずは私が手本を示すのだ!!)

『自分が後悔しない様に選択するんだ』

自分が今しがた飛び出して来た倉庫の中で、アイヴォスは確かにアーシアに向かってそう言った事を覚えている。

だがそれはアーシアだけでは無い。自分にも当てはまるセリフなのだと身を持って実感している。

そして他にも実感している事としては、大急ぎで行動しなければどんどんアーシアとコルネールの行方が

分からなくなってしまうだろうと言うものがあった。

(コルネールもこの町に居たと言う事は、すなわち奴も転送装置を使って移動して来た可能性が高い。

ならばアーシアを連れて転送装置で移動する可能性も十分に考えられる!)


もしくは転送陣を使って別の場所にワープする事も考えられる。

転送装置だけがコルネールの使えるテクノロジーでは無い事もアイヴォスには分かっている。

転送装置がこの町にあるのはアーシアから聞いているし、コルネールは転送陣が使える位の魔力を

すぐに溜められるのも同じくアーシアから聞いている。

そしてその行き先はコルネールにしか分からないだろう。

そのワープ出来るテクノロジーを使って逃げられてしまったら、それでアーシアの行方も永遠に分からなくなってしまう。

こちらの世界の住人からしてみれば、アイヴォスは魔力が無い異世界の人間なのでそれだけは

絶対に避けたい所だが、まずはとにかくコルネールの居場所を掴む事が必要だ。


「長くて白い髪の毛で、顔には大きな傷があって、茶色のコートを着込んでいる男を探している。

人間が入りそうな位の大きさの袋と槍を持っている男なんだが知らないか?」

この様に、コルネールの特徴を出来るだけ道行く町の人間達に伝えて足取りを追い掛け始めるアイヴォス。

「あー、その人なら西の出入り口から出て行ったよ」

「凄く急いでるみたいだったぜ?」

「外からやって来た連中が馬を置く場所に向かったから、馬に乗って何処かに行ったんじゃねえの?」

自分が覚えている限りでもこれだけ特徴がある。

それを証明するかの様に、やはりこの町でも多くの人間がそのコルネールの姿を目撃していたと言う

結果をアイヴォスは掴んだ。町の住人達のこれ等の証言からするに、転送装置は使わずに西に向かったと

予想がついたアイヴォスはさっきのメモを見直す。

(だったらもう、ここに行くしかあるまい!)


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