A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第52話


「どうやって手掛かりを見つけたのだ?」

まさか勘や偶然が重なって見つかったのかと思ったアイヴォスだったが、どうやらそうでは無い様だった。

「カシュラーゼ軍は知らない、それこそこのヴァーンイレス王国の民しか知らない筈の魔石の

発掘場所があるのよ。そこは本当につい最近……私が裏切り者について調べ始めた数日前位に

見つかったばかりのレベルの場所だし、最初にヴァーンイレス王国軍が見つけた場所。

だからその見つけたばかりの、資源の貴重な産出地をカシュラーゼ軍に荒らされる訳にはいかないって事で

口外しないって言う約束が交わされた。でも……」

「すぐに荒らされた、と?」


言い難そうに口ごもるアーシアのセリフの最後は、それを察知したアイヴォスが代弁した。

「そう、カシュラーゼ軍にね。何故分かったかって言えば、その場所が荒らされた場所で仲間割れか何かをしたのか、

カシュラーゼ軍の人間の死体が見つかったからよ」

「だからカシュラーゼ軍の仕業だって事か……」

それならカシュラーゼ軍に誰かが噂を流して、そしてそこが荒らされたと納得が行く。

……のだが、そのアイヴォスの考えとは少し違う結論がアーシアから伝えられた。

「いえ、そうじゃ無いわ」

「えっ?」

「その殺されたカシュラーゼ軍の装備を身に着けていたのは、私の顔見知りのヴァーンイレス王国軍の人間だったのよ」

「……と言う事はまさか、その殺されたヴァーンイレス王国の人間も裏切っていたのか? それなら口封じに

殺されたって話になると思う。それとも……ヴァーンイレス王国軍の人間を殺して、カシュラーゼ軍の服装を

着せる事でカシュラーゼ軍の仕業に見せ掛けた偽装だって事なのか?」


思い付く限りの可能性をその頭脳から導き出したアイヴォスに、アーシアから真相が伝えられる。

「2つ目が正解。カシュラーゼ軍がやった様に見せ掛けて、ヴァーンイレス王国軍に裏切り者が居ないと思わせる

手口だったの。だって普通ならカシュラーゼ軍にその場所が知られる筈が無いんだからね」

「何故そう言い切れる?」

「その新しい魔石の発掘場所が見つかった時から、ヴァーンイレス王国軍の私の顔見知りの人間の死体が

見つかるまでの1週間、私はずっと内部の調査の為にその発掘場所の前で他の解放軍の仲間達と一緒に

キャンプを張って過ごしていたからよ。発掘場所は洞窟の奥で、その洞窟の前にキャンプを張ったから

ヴァーンイレス王国軍が守る形だったし、カシュラーゼ軍がやって来たらすぐに分かるからね」


そこまでアーシアの過去の話を聞いて、アイヴォスの中に1つの予想が付いた。

「だから可能性があるとすれば、その発掘場所まで来る前から君の知り合いは殺されていた。そして殺された

知り合いにカシュラーゼ王国軍の服装をさせて装備も着けさせ、発掘場所を荒らし回った後に知り合いの死体を

置いておけば、カシュラーゼ軍の人間が単独行動をして発掘場所を荒らしたと見せ掛ける事が出来る、と言う訳か」

アーシアはアイヴォスの推理に頷く。

「ええ。しかもその死体の横に、魔石を詰め込んだ袋を横倒しにして中身も飛び散らせた状態で置きっ放しに

しておく念の入り様ね。更に争った形跡を偽装する為に、そのカシュラーゼ王国軍の格好をしている

私の知り合いだけじゃなくて、仲間割れを演出する為に「本物の」カシュラーゼ王国軍の人間の死体も

3人分用意していたんだから」


「……そうなると、前々からその魔石の発掘場所を荒らす計画を立てていたと言う可能性が高いな」

突発的に思い立った様なものでも無く、行き当たりばったりな計画とも思えない。

むしろ魔石の発掘場所が「数日前に」見つかったと言うのは嘘であり、本当はもっと前に見つかっていたのでは

無いだろうか? とアイヴォスは思ってしまう。

「そして魔石をカシュラーゼ軍に流すか、それとも何か別の用途に使うのかは定かでは無いが発掘して盗むべく

色々と準備をしていた。だが、その前にヴァーンイレス王国軍に発掘場所が発見されてそこで仕方無く偽装工作をして、

カシュラーゼがやった様に見せ掛けた……のか、カシュラーゼが本当にそこを採掘していたのか……」

しかし、2つ目の可能性は低いだろうともアイヴォスは考える。

「いや、やはりカシュラーゼ軍の死体まで用意して、更にヴァーンイレス王国の人間にカシュラーゼ軍の格好を

させている事も考えると……君には悪いが、その知り合いが裏切っていたって言う可能性も捨て切れないな」


考えれば考える程、どんどん底無しの泥沼にはまって行きそうなこの事件。

ただ単にカシュラーゼ軍の仕業に見せ掛けた裏切り者の仕業かと思いきや、本当にカシュラーゼ軍が

やったのかも知れないと言う可能性も出て来た。

謎が謎を呼ぶ状況だが、悩むアイヴォスに対してアーシアはズボンのポケットからゴソゴソとメモを取り出した。

「私の知り合いは裏切ってはいないわ」

「えっ?」

実はね、発掘場所が見つかったって聞いたその知り合いが私にコッソリこんなメモを渡してくれたの」

そう言いながらアーシアがアイヴォスに渡した、1枚の小さなメモ。

そこに書かれていたのは……。

「コルネールに気を付けろ……」


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