A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第51話
「それとこれも聞きたいんだが、アーシアはどうやってここまで来たんだ? 時間と距離を考えると
何処かで私を追い越したんだろう?」
馬を使って配達をし、それから野宿までしていた自分を一体何処でどうやって追い越したのだろうか?
そのアイヴォスの疑問に、アーシアはこの世界の常識で答えた。
「転送装置よ。ほら、貴方に話したじゃない……私の家に居た時に」
「ああ、そう言えばそんなのもあったか。と言う事はこの町まで一気に転送装置でワープして来たと。
でも王都のは確かカシュラーゼ軍に占領されているから使えないんじゃなかったか?」
そうなると話に食い違いが生じると思うのだが……とアイヴォスは考えたが、アーシアは
ここでアイヴォスに秘密にしていた事を話し始めた。
「確かに貴方の言う通り、本当は王都に転送装置があるからそれを使いたかったんだけど……でも実はもう1つ、
秘密裏に解放軍の人間でお金を出し合って買った転送装置があるのよ、貴方がコルネールと一緒に向かった、
城壁を超える為のあの抜け道の近くの家にね。だからそれを使えるし、この町にも転送装置があるから
ここに転送出来る様にセットして転送したのよ。これを使えば魔力が無い貴方を追い越すのは簡単だから、
貴方が色々とコルネールからの依頼をこなしている間に私が追い抜いたみたいね」
だが、それ以上に重要な事はやはり裏切り者の存在だ。
裏切り物が居ると言う事は、アーシアのやっているカシュラーゼ軍の戦術情報等のリーク作戦が
無駄になってしまうと言う事でもある。
「それではアーシア、最後に君の突き止めた裏切り者について教えて貰おうか」
「……まだ確証が持てた訳じゃ無いけど、それでも良いなら」
「構わん」
なら……とアーシアはその裏切り者の情報を調べるきっかけからまずは話し始めた。
「私、医療部隊に所属してはいるんだけど人手が足りないから、たまに事務の仕事も手伝う事があるのよ。
備品の管理だったりお金の管理だったり色々ね。それである時から備品が幾つか無くなってたりお金が
計算違いなのか分からないけど足りない事に気が付いた。これは明らかにおかしいって思って、私は自分で
その備品やお金の行方を調べ始めたの」
問題はその無くなった金の行き先、それから備品の中身も同じく気になる。
「無くなった備品って言うのは何だったんだ?」
「弾丸ね」
「え?」
「だから弾丸よ弾丸。拳銃の弾丸。ほらこうやって火薬と魔力をエネルギーにして、相手に向かって
弾を発射する機械よ。貴方の世界にはあるのかしら?」
拳銃?
もしかしてそれは、地球の戦場でメインの武器として使われる「あの」拳銃と言う認識で間違っていないのだろうか?
そもそもこんなファンタジーな世界に拳銃の存在があるのなら、1度お目に掛かりたいものだとアイヴォスは思う。
「同じ名前の物体はあるが、それが君の言っている拳銃と私の言っている拳銃と一致するかどうかまでは分からんぞ?」
「そうなの……。でも、多分貴方の言っている拳銃は同じものかも知れないわね。その前提で話を進めさせて貰うけど、
その拳銃の弾丸がチョコチョコ消えているのよ。消えているって言うか、解放軍への納入分からこっそり無くなっているって
言うか……とにかくそんな弾丸が無くなる様な事態が続くってなれば、当然こっちだって納入している国内の武器屋との
取り引きを止めなければいけないわよね?」
「それはそうだな。信用問題に関わるし、もし無くなった弾丸が何処かで悪用されでもしたらそれこそ大事件だ」
アイヴォスは地球で活躍する軍人だからこそ、本物の拳銃を始めとする重火器の怖さは身を持って知っている立場だ。
「その弾丸の行き先を、同じくそれに気がついていた解放軍のメンバー数人と一緒に調べたの。
すると、それが納入される前に少し抜き取られてカシュラーゼに横流しされている事が分かったわ」
「どうして分かったんだ?」
「その武器屋の店主を問い詰めたらあっさり自白したわよ。それからは文句を言わせずに契約は打ち切り、
そして別の武器屋から弾丸とか武器を仕入れる事になったんだけど……その納入出来そうな国内の数少ない
武器屋を探し回っている内に、今度は奇妙な噂を聞いたの」
「噂?」
何だかどんどん話がスケールアップしている様な気がするが、気になって聞き出そうとしているのは自分なのだから
ここで話をストップさせる訳には行かないアイヴォス。
しかし、ここでさっさと話をストップさせて足早にこの建物から出るべきだったと彼は後に後悔する事になる。
その後悔してしまう惨劇がこの後に起こるとは知らないまま、アイヴォスはアーシアの話の続きを聞く。
「ええ。弾丸と一緒に麻薬が出回っているってね。戦争に負けそうになって自棄(やけ)になっている連中に売りつけるとかそう言う
話を聞いたわ。実際に麻薬の密売所に行って潰した事もあったわよ。でも、出回っていたのは麻薬だけじゃ無かった……」
「え?」
「魔石も……この国内で色々掘り出されてカシュラーゼに密輸入されていた形跡を見つけたのよ。
そしてそこから、私は黒幕の手掛かりを見つけたわ」
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