A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第50話


「魔物」と言う単語をアーシアはこの世界の住人では無いアイヴォスに話し始める。

「魔物と言うのは異形の存在ね。この世界に存在している生物だったら、私達人間を始めとして

獣人や馬やワイバーンなんかの動物も勿論持ってるわ。後は草花もそうだしその辺りに落ちている

石ころでさえも魔力を持っている……って前に話したと思うんだけど、この世界に存在している

その魔力がねじれる事があるの。そのねじれによって魔物は生み出されるのよ」

「ねじれ?」

「ええ。私達みたいな人間を始めとする動物に限って言えば、生まれる時に魔力を親の体内から

受け継いで生まれるの。それが一般的なのね。でも、魔力のねじれから生み出される魔物と言うのは

この世界に自然発生するタイプなのよ」

「ん……すまない、もう少し分かりやすく説明して貰えないか」


魔力に関してさっぱりなアイヴォスは、ねじれからの自然発生と言う状況をどうしてもイメージ出来ない。

「ええと……魔力はこの空気中にも含まれているんだけど、本当に微量なものなのよ。でもそれが原因は

まだ分からないんだけど、何らかの理由で1か所に集中してしまう。そしてそこから魔力が合わさって、

それが空気中でねじれて魔物になるのよ」

「うむ、何となくだが分かる気がする。つまりねじれから生み出された生物が魔物となり、

人間や他の生物の脅威となる訳だな」

「うん。それも本当に突然で、場所も世界各地でランダムだから特定が不可能なのね。だから生み出された

魔物を随時討伐して行くしか対処の方法が無いのよ」

「成る程な……」

地球の野生動物が繁殖し過ぎて駆除しなければならない状況みたいなものだなー、と地球の事例を出して

考えてみればアイヴォスもすぐに理解出来た。


だが、アイヴォスにはまだ引っかかっている事がある。

「そう言えば、さっき「ねじれから生まれる魔物は自然発生するタイプ」と言ってたが……他にタイプがあるのか?」

それに対してもアーシアは丁寧に答えてくれた。

「他のタイプって言ってもその自然発生するタイプと合わせて2種類しかないわ。自然発生して討伐されていない

魔物から生み出される子供の魔物の事ね。それが成長して大きくなればいずれは親と同じ成体の魔物になるの。

中には繁殖力がかなり高い魔物も居るからそう言うのが繁殖したら騎士団や傭兵達はかなり手こずるだろうし、

商人や冒険者にも危険が及んだりするわね」

一通りそうやって魔力や魔物について説明を受けたアイヴォスは、ここでやっと防御魔術の話に会話を戻す。

「魔力も魔物も分かった。それではこの先、私がそう言う魔物の攻撃を受けても大丈夫な様に防御魔術の

実験をさせて貰いたい」

「そうね、そろそろやりましょうか。でもどうやってやれば良いかしらね?」

「そうだな……」

実際に攻撃が効くのか効かないのか、それを確かめる方法はこれしか無いだろうとアイヴォスが

導き出したやり方は……。


「それでは防御魔術を私の身体にかけた後で、君のパンチを私が受ける」

「えっ、良いの?」

「ああ。私にかけて私が攻撃を受けるのだし、そうしなければ結果としても良いものが得られないだろう。

防御魔術が私に効くのかどうかと言うのは、私が攻撃を受けるのが1番だからな」

「……分かったわ」

防御魔術は、相手の物理攻撃も攻撃魔術も100パーセントシャットアウトしてしまう

まさに「魔法」と言えるべきものだ。

しかし、その魔法はアイヴォスにはやはり効果が見られない。

「ど、どうかしら?」

「駄目だな……防御魔術も結局効果が無い様だ」

アーシアに貰ったボディブローは元々の2人の体重差だったり、そもそも体重が乗っていないヘナヘナパンチだったり、

男と女の筋力の違いはあれどもアイヴォスに防御魔術の効果が無い事を証明するには十分なものとなった。


「これで攻撃魔術も治癒魔術も防御魔術も私には効果が無い、と言う事が証明されたな」

「そうね……攻撃魔術が効かないなら敵なんて居ないんじゃない? って思ったけど物理攻撃は普通に

効くみたいだし……それに治癒魔術も防御魔術も意味が無いなら逆に戦場だとかなり不利になりそうね」

「かも知れないな」

と言っても、地球では魔術なんてものは無い。あっても防弾チョッキや防刃ベスト位の物だろう。

でも、アイヴォスは魔術の無い世界で生きて来たから余りショックは感じていなかった。

幾ら防弾チョッキを着込んでいても、例えばロケットランチャーを持ち出されてその弾丸に当たってしまえば

身体ごと木っ端微塵になってしまう。

防刃ベストを着ていたって、ベストの部分以外の場所に相手のナイフだったりマチェ−テが当たってしまえばベストの効果は無い。

そう言う経験は帝国軍の演習中にも無い訳では無いし、さっきの6人とのバトルだって小さな掠り傷を負ってしまっている。

傷つくのが怖いなら、最初から戦場に出なければ良い。

戦場に出て、自国の民を守るとはそう言う事なんじゃないかとアイヴォスは思っているからこそ、今の防御魔術や

治癒魔術の効果が無い事に余りショックを受けていないのだった。


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