A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第53話


あの町から帝都まで大体14日間で到着すると言われたのだが、その間に滝つぼから落ちた事を

始めとしてあの村で休んだりして時間が色々と延びた等の色々あった事が重なり、結果としてあの町から

スタートして20日後の昼にリオスはようやくこのイーディクト帝国の帝都であるグラディシラに辿り着いた。

センレイブ城を始めとして、町の至る所に魔術を使ったシステムが設置されているのだとか。

流石に首都だけあって町全体の広さもそうなのだが、行き交う人々の多さも並大抵のものでは無かった。

(しかし、本当にフリーパスで町に入る事が出来るなんてな)

流石に魔術が自分の身体から感じられ無い事で町の入り口の検問に引っかかるのでは無いかと思ったのだが、

検問の前には大勢の人間が並んでいた事、それからあのマスターから貰った通行証を係員の騎士団員に見せると

その偉そうな態度が一変し、すんなりと帝都の入り口を通してくれた。

馬車の御者とも帝都の入り口に入る前にお別れをして、いよいよこのグラディシラで自分の進むべき道を見つける時が

やって来た様であった。


(まずは腹ごしらえをしようか……)

路銀にはまだ余裕があるが食糧は殆ど底をつきかけていたので、ひとまずは腹も減った事だし……とリオスは

人通りでごった返す往来を行き交う人に声をかけ、その場所を聞き出したグラディシラの酒場へと向かった。

「あーあ、今は目も回りそうな忙しさだよ」

「ほんとほんと……祭りなのは良いけど、警備もちゃんとして貰わないとな」

グラディシラの酒場は帝都の酒場と言うだけもあり、町自体と同じく今までのどんな町の酒場よりも大きかった。

そこで適当によさげでリーズナブルな料理を頼んでからテーブルについてその料理を待ちわびていたリオスの耳に、

ふとそんな会話が近くのテーブルから聞こえて来た。

(祭り……?)

この世界にもカポエイラの本拠地のブラジルで世界的に有名な、リオのカーニバル的な行事が存在しているのか……と

リオスは興味本位で耳を傾けてみる。


しかし、その祭りの話の内容が何だか不穏な会話に変化して行く。

「毎年何かしらのトラブルが起こるじゃん? 祭りの時期には」

「あーそうそう。去年は酔っ払いの集団が暴れて10人位が重軽傷を負ったんだっけ?」

「その前の年なんか、事もあろうに火事が起こったんだっけ。確か大通りの料理屋だよ」

「だったな。本当、毎年賑やかなのは良いけど何か起こるんだよなぁ。今年こそ何も無ければ良いけど」

何だかその祭りはただの祭りでは無い様である。

(縁起の悪い話だ)

どうやら祭りの内容は秋に行われる帝都グラディシラの収穫祭らしいのだ。

(秋にしてはそこそこまだ暖かいな)

気候のせいなのかなーとリオスは思いながらも、寒くて身体が震えるよりはこう言ったひんやりとした気温が丁度良いと

思いつつ、丁度運ばれて来た料理に手をつけ始めた。


(良し、腹ごしらえもすんだな)

昼食を済ませたリオスは、まずはこのグラディシラの地理を把握する為に色々と見回ってみる事にする。

このグラディシラを始めとしたイーディクト帝国は商工に優れた帝国として有名であり、その為か帝都の至る所に色々な

ショップがあったり多くの商人が行き交う等して賑わいを構成している。

それでも、リオスはこの世界ではこの国しか知らないので他の国と比較する事は出来ない。

強いて言えば地球の自分の国との比較位ではあるが、地球のショップは今の時代においてはインターネットショッピングと

言う便利なシステムが存在している為に、ただ単に町中におけるショップの多さでは比較出来なかった。


(個人でインターネットショップ……つまりオークションか。今なら誰でも気軽にそう言った形式でショップを経営していたり

するからな、地球の場合は)

だから自分の国の首都と比較しても多いか少ないかと言う事についてだけ言えば、恐らく地球の自分の国の方が

多いだろうとリオスの中で結論に達した。

(やはり、そう言う便利さではどうしても地球に分があるのかもな)

この世界もこの帝国しか知らない訳だし、やはりリオスにとっては住み慣れた自分の世界の方が良いと感じてしまうのであった。

そんな気持ちを心の中に持ちながらグラディシラをブラブラ歩いていると、色々な建物や施設が目に入る。

過去の英雄であろう人間の銅像が建てられた広場だったり、魔術の授業や研究をしているのであろう……いわゆる

学院だったり、それから先程の酒場よりも更に活気づいている食堂が並ぶストリートだったりと、静かな所から賑やかな所まで

様々な町中のシーンを見られるのも、地球の国々の大半の首都と変わり無いだろうと思う。

(これだけ人間が集まれば、この様な風景になるのは世界が違っても自然の現象なのだろうな)


と、そう考えていたリオスの足をふと止めさせた建物が。

(ん……)

グラディシラの大通りに面した、大きなワインのボトルのオブジェが看板の一部になっているショップ。

それはつまり、一目見ただけで何を取り扱っているショップなのかが分かる為の物だった。

(酒屋……もしくは酒場か)

しかし、何故自分はこの酒屋が気になるのだろうか。

この類いの場所に、普段では縁の無い自分が。

(何かが引っ掛かる。何だ……?)


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