A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第33話


コルネールに言われた配達先は、地図で見る限りでは確かにそれほど遠くない様だ。

しかししばしの時間は馬に揺られるのは近かろうが遠かろうが変わらないので、地球の事を思うついでに

アイヴォスは自分が習っている空手の事をもう1度思い出してみる。

空手と言うものは今の日本の1番南に存在している「沖縄」と言う場所で発祥した拳法である「手(ティー)」に

中国本土から伝わった武術がプラスされ、そこに他の日本の武術もミックスされる形で段々と発展と

熟成を重ねて今のスタイルがあるのだと言う。

大正時代に沖縄県から他の都道府県に伝わり普及した空手は、現在では色々な流派が存在しており、

日本発祥の格闘技として世界中に広まった。


空手の流派としては大きく分けて寸止めルールの「伝統派空手」、防具を付けて直接打撃の攻撃を当てて

ポイントを競う「防具付き空手」、そしてアイヴォスが習っている、防具無しで直接打撃を当てる試合形式の

「フルコンタクト空手」がある。

細かく分けていけばそれこそキリが無い空手の代表的なジャンルはこの3つと言えるが、元々の沖縄から

伝わった空手は今の打撃中心のテクニックの他にも取手(とりて)や、掛手(かけて)と呼ばれる関節技や

投げ技のテクニックもある。

更に棒術や釵(サイ)術、ヌンチャクと言った武器術も素手の格闘術と一緒に修行するのが当たり前だったのだ。


それから昭和に入ると1933年には空手が日本の武道であると正式に認められたものの、第2次世界大戦の

後にはGHQから出された指令から文部省が出した通達である「柔道、剣道等の武道を禁止する」と言うものがあり

一時的に空手の活動はストップ。

しかし「『空手』の文字はこの通達の中に含まれていないので禁止では無い」と言う解釈があり、結果として柔道や

剣道よりも早く活動再開されたと言うエピソードがある。

1964年には全日本空手道連盟(全空連)が結成され、空手の4大流派と呼ばれている日本空手協会(松濤館流)、

剛柔会(剛柔流)、糸東会(糸東流)、和道会(和道流)、それからそれ以外の流派を纏めている連合会、

防具付き空手の諸々の流派を統括しており、以前の全日本空手道連盟であった錬武会の6つの団体によって

統一的な秩序をもたらす事を目的とされた。


試合としての空手は、元々空手自体を試合化するのを否定していた空手家も多かった為になかなか実現には至らなかった。

だが1954年に錬武舘が防具付き空手のルールで「第1回全国空手道選手権大会」を開催し、空手では

最も古い全国大会として2000年を過ぎた現在も開催されている。

1964年の9月には全空連主催で伝統派寸止めルールの「第1回全日本空手道選手権大会」が日本武道館で開催された。

しかしその伝統派空手に疑問を抱いていた極真空手創始者の大山倍達が、今のフルコンタクト空手に繋がる

「第1回オープントーナメント全日本空手道選手権大会」と呼ばれる防具着用無しで素手と素足の直接打撃制、

そして足技以外での顔面攻撃は禁止の大会を代々木の東京体育館で開催した事で、空手界に旋風を

巻き起こしたのは有名な話だ。

その後も色々な流派が乱立したり、沖縄空手が国体への参加と同時に全空連への加盟をしようとした問題がこじれて大きな

トラブルに発展したりと様々なトラブルはあったものの、今ではやはり日本を代表するスポーツや武道として世界中で知られている。


アイヴォスの習っているフルコンタクト空手は、伝統派の寸止めルールとは違って実際に当てるものだ。

極真空手に代表される事から、「フルコンタクト」の名前で呼ばれる前は「実戦(実践)空手」の名前が使われていた。

広い意味では防具付き空手の流派を含める事もあるのだが、基本的には防具無しで素手と素足での試合形式の空手を指す。

1971年から大山倍達を主人公にした漫画の「空手バカ一代」で爆発的な人気がフルコンタクト空手に巻き起こり、

この漫画でフルコンタクト空手が一躍有名になったと言っても過言ではないと言われる程だった。

そして今から3年前の2013年3月には全日本フルコンタクト空手道連盟(JFKO)が発足し、極真ルールの

フルコンタクト空手を扱う団体の統括組織とされている。


フルコンタクト空手のオリンピック種目化を目標にしており、翌年の2014年5月には「第1回全日本

フルコンタクト空手道選手権大会」を開催し、意欲的に活動を行っている。

アメリカでは「フルコンタクト・キックボクシング」や「アメリカン・キックボクシング」とも言う、伝統派スタイルの空手に

ボクシングテクニックを導入した格闘技とされている。

基本的にはパンチやキックで攻撃するのだが、それこそあの魔力を持たない人間が使ってたのでは無いかと

アイヴォスが予想しているムエタイでおなじみの首相撲や膝蹴り、それからローキックは行われていない。

またその参加選手や団体は様々であり「空手」と銘打ってはいるものの必ずしも空手の経験は現在では

必要では無いのも1つの特徴だ。


A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第34話へ

HPGサイドへ戻る