A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第51話


何だかその身体つきや髪の色の仲間にもリオスは見覚えがある気がしていた。

「もしかすると、あの滝つぼで襲われたあの時の連中じゃあ……」

そうリオスは呟いたが、マスターの反応は冷めていた。

「それは知らない。だけど、その可能性がある事だけは言えるかも知れないな」

マスターの話によれば、その後に生き残っている人間が居ないかどうか火の回る屋敷中を

探し回ったのだが無惨にも屋敷中の人間が殺されてしまっており、火も屋敷を包み込んで来たので仕方無く脱出。

騎士団員や近所に住む住人達と協力して屋敷の火災は鎮火したが、大きな屋敷は呆気無く全焼してしまったのだと言う。

「証拠隠滅の可能性が高いな」

「うむ。私もそう思う。燃やし尽くしてしまえば誰が何の目的で屋敷に入ったのかと言う事を分かりにくく出来るかも知れんからな」

その話に続いて、マスターはこんな話題も出して来た。

「そう言えば……これは半年位前からかな。この国の各地で遺跡荒らしが勃発しているって話を貴方は聞いた事は無いか?」

「遺跡荒らし? いいや、それも全くの初耳だ」

そしてその遺跡荒らしの話を聞いた時に、リオスの脳裏にホルガーとのこんな会話がフラッシュバックして来た。



「そうそう思い出した。あんた、ドラゴンと古代遺跡の話は耳にしているか?」

「いや、初耳だ。どんな話だ?」

「この世界には色々な遺跡があるんだけど、そのどれもがその昔に滅びたと言う古代文明の名残り……。

しかも、一説によれば大きなドラゴンがそこを守っていると聞いた事があるんだ」

「どんなドラゴンなんだ?」

「そこまでは俺も知らない。だけどドラゴンは1匹じゃないらしい。ドラゴンはこの世界に住んでいる人間なら野生の姿で

見る事は良くあるんだけど、遺跡を守るドラゴンって言う存在は俺も分からないんだ」



何時ぞやのこんな会話を思い出したリオスは、前言撤回して言い直す。

「……あ、待ってくれ。もしかすると初耳では無いかも知れん」

「え?」

「もしかして、その遺跡荒らしが狙っているのは古代のドラゴンが居たとか、そう言う遺跡ばかりだったりしないか?」

「いや、そこまでは私も分からないが……古代のドラゴンの話はあるよ。前にその話を聞いた事があるのか?」

「ああ、その便利屋になのだが……」

今しがたフラッシュバックして来たその会話をマスターに話すと、マスターは腕汲みをして考え込む。

「その遺跡荒らしが、ここ4ヶ月位この国のあちらこちらで発生していてな。しかも遺跡荒らしの行動する順番は全く予想が出来ない。

地図で見た時に、最初に荒らした遺跡から距離が近くの遺跡に向かえばすぐに荒らせるのに、そこからわざわざ

遠くの遺跡を調べに行くんだ。不思議だよ」

「……それはあれか、何処の遺跡を荒らしにかかるのかって言うのを国に察知されない様にする為じゃないのか?」


そのリオスの予想にマスターは頷いて肯定した。

「その線が妥当かも知れんな。それと、その古代遺跡がまた新たに最近幾つか見つかったって話だったからこの国の

権力がある人間達はこぞってその古代遺跡を調査しにかかっているらしい」

「国に任せないのか?」

普通、そう言った事は国の調査チームがやる事なんじゃないかとリオスは考えるが、マスターの話の続きはそこも織り込み済みの様である。

「それもある。現に、騎士団と合同で古代遺跡の調査をすると言う事で動いているからな。だけどこうして殺人事件……それも権力の

ある人間ばかりが殺されているとなれば、無関係とは言いがたい。何故なら国よりも先に古代の文明やら何やらを発見し、それを国に

報告する事によって更なる権力の向上が見込める部分がるんだ」

「つまりは権力争いの一環と言う訳か」

世界が変わっても、人間の争いはただ単に野蛮に力で争うだけでも無いのは一緒かとリオスは苦笑い。

「そうだ。これは私の勝手な予想なのだが、権力を求めるが為に古代の遺跡に対して調査チームを向かわせた権力者や国の政治の

有権者達が、他の貴族に抜け駆けを許すまいと殺された……と言う気がするのだがな」


マスターの予想に、今度は先程自分の意見を肯定してくれたリオスが同じ様に肯定した。

「……何か、凄く良く分かる気がしないでも無い」

だとすると、もしや……と思ったリオスは失礼を承知でマスターにこんな予想もぶつけてみる。

「気を悪くしたらすまない。貴方の主人ももしかしたら」

「それは無いだろう」

「……そうなのか?」

リオスの予想を分かっていたかの様にマスターは首を横に振る。

「確かに私が仕えていた主人はそれなりに権力もあったし、それなりの財産も築いていた。だけどその様な古代遺跡とかの分明には興味が無いお方でな。

どちらかと言えば、新しい時代の人間の生活に役立つ様な文明を生み出す為に研究をされていたお方だったよ」

だから何故殺されたのかがまるで分からない、とマスターは悲しそうな目でリオスに語った。

「そうなると、俺ももうこれ以上の予想はつかないな。何処からか恨みを買ったとか、そう言う事でも無ければ殺される理由が見つからないだろうし」

理由も無いのに殺されるなんて、そんな話があってたまるか……と呟いたリオスはコップに入っている残りのお茶をグイッと一気に飲み干した。


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