A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第21話


「良かったら他の解放軍の部隊に物資を馬で届けてくれないか? その報酬を旅の資金にすれば良いだろ?」

いきなりの事を言い出したコルネールに対して、思わずアーシアが口を挟む。

「ちょ、ちょっとそれってどう言う事よ!?」

「どう言う事って、そのままの意味だけど……」

「それは分かるわよ。見ず知らずの人に物資の輸送を任せちゃって、そしてそのまま物資を

持ち逃げされちゃったら終わりじゃないのよ!!」

自分の事を言われているのだが、側でそのやり取りを聞いているアイヴォス本人もそう思ってしまった。

(その気持ちは私も良く分かる。普通なら出会ってほんの少ししか時間が経っていない様な、それも身分も

しっかりしていない上に魔力が無いと言うこの世界では異端児の人間相手にそんな物資の配送役を任せるのは

理解が出来ないな)


それでもアイヴォスに取っては願っても無い話だ。

荷物を届けるだけで報酬が貰えるのであれば是非やらせて貰いたい訳だし、届ける荷物を開けて駄目に

してしまったり持ち逃げして換金する様な真似はしないと自他共に真面目な性格だと思っているが故に誓えるからだ。

「こいつの考えが最終的には大事だろ」

「私は任せるのは反対よ!」

「って言ってるけどあんたはどうしたい。やるのかやらねーのか、今ここで決めてくれ」

2人のやり取りを黙って聞いていたアイヴォスはコルネールにそう振られ、自分の考えをしっかりと伝える。

「報酬と引き換えなら是非やらせて貰いたい。勿論私は荷物を勝手に開けたりしないし、

持ち逃げしたりもしない。約束する」


真面目な顔と口調でそう言ったアイヴォスに、コルネールは1つ頷いた。

「そうか、だったら任せるぞ」

「私は知らないからね。貴方が指示出したんだから、貴方が責任取ってよ!!」

「わーってるよ。お前は昔からそうなんだよな。色々ギャーギャーうるせーんだよ!!」

「貴方は自分勝手過ぎるのよ! 何でも1人で勝手に物事決めて突っ走って、何時も後始末は他の人じゃないのよ。

そう言う所が嫌だったのよ私は!」

「おい、他人の前でみっともないだろ!?」

「言い出したのは貴方の方でしょうが!!」

「んだとぉ!?」

(参ったな、喧嘩始めてしまった……)


どうにもこの2人が別れてしまったのはお互いに嫌な部分があったかららしい、と言うのは目の前で座りながら

2人を交互に見比べるアイヴォスにも良く分かった。

しかしアイヴォスにはそう言う事はどうでも良いので、ひとまず冷静な口調で仲裁に入る。

「そう言う話は私が旅立ってからでも十分に出来ると思う。今はとりあえず、私のこれからの話をして貰えないだろうか」

冷静ではあるが力強くもある口調でアイヴォスがそう言うと、アーシアもコルネールも一瞬ポカンとしてアイヴォスの方を

見てから気まずそうな雰囲気を出し始めた。

「……わりぃ、変な所見せちまったな」

「とにかくそう言う事なんで、私はもうコルネールと貴方の話には口を出さないわ。後はコルネールから指示を貰ってよね」

色々ありはしたものの、とにかくこれで金の目途と仕事の目途が付いた。


だが、出発する前にアイヴォスはまだコルネールに聞いておかなければいけない事があった。

「ここを出る前にコルネールに色々聞きたいんだが」

「え?」

「まだ聞いていなかった、私以外の魔力を持たない人間の話だ。一体どう言う人間だったのだ? 場合によっては

その人間達に私は会えるかも知れないのだが、居場所とかは分かるか?」

もし会えると言うのであれば真っ先に会いに行きたい。

それが今のアイヴォスの本音だったが、コルネールからはそうもいかない回答が。

「俺は噂でしか聞いた事が無えよ、その魔力を持たない人間の話は」

だがアイヴォスは引き下がらない。

「では、その噂を知っている限りで良いから教えて欲しいのだ。私が地球に帰る事が

出来るヒントになるかも知れないからな」


食い下がって来るアイヴォスに、コルネールはその噂について思い出しながら答え始めた。

「思い出しながら言うから嘘や間違いがあっても勘弁してくれよな。俺がその噂を聞いたのは旅をしていた時だ」

「旅?」

解放軍の人間がそんなにのんびりしていて良いのだろうか?

アイヴォスは何か釈然としない感情を抱えながらも、そこは黙って話の続きを聞く。

「ああ。今から半年前に丁度半年間の休暇を貰って隣のアイクアルから右回りに旅をしていたんだよ。

そうしたらその旅の中で魔力を持たない人間の話を聞いたって訳さ。確か今から1か月と半分位前に

隣のエスヴァリーク帝国に現れたって話を聞いて、それとはまた別に今から9〜10ヶ月位前にソルイール帝国に

現れたって話も聞いた。丁度俺がその2つの国に入る前の話だな。俺は右回りでアイクアルからエスヴァリークまで

通って……あ、勿論カシュラーゼはワイバーンの移動手段で上空を通過しただけなんだけど、そのルートで

来たからタイミング悪く会えなかったみたいなんだな」

やはり物事はそうそう上手く行かないらしい、とアイヴォスは今のコルネールの話を聞いていて思ってしまうのだった。


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