A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第19話
だから3人で落ち着いて話そうと説得するのだが、男のヒートアップは依然止まりそうに無い。
「良いからこっち来いよ、オラァ!!」
このままだと埒が明かないのでどうするべきか……と思っていた矢先、家のドアからアーシアが
飛び出して来てアイヴォスに向かって叫ぶ。
「コルネール、その人とは別に何も無いわよ!」
「アーシア、お前は下がってろよ。今からこいつに、人の女に手を出した報いをしっかり受けて貰うんだからよぉ!!」
アーシアが飛び出して来るのが少し遅かったのが気になったアイヴォスではあるが、今はそれよりも
この目の前のコルネールと呼ばれたアイヴォスをどうにかしなければならない。
「下がる気は無いのか?」
「引っ込む気なんか微塵もねえよ。テメーが引っ込みゃそれで済む話だからなぁ!!」
「はぁ……」
仕方が無いとばかりにアイヴォスは溜息を吐いた。
どうやら話がまともに通じる相手では無い様である。
少しだけ付き合ってやらないと何時までもこの状態が続きそうで話が前に進まないみたいなので、
こうなったらやむを得ないと覚悟を決める。
「ここは狭い。この家の前でやろう」
「おーっし、わざわざ自分からボコボコにされに来るとは良い度胸だ!! おいアーシア、俺がコイツを
ボコボコにする所を良く見ておくんだぜ!!」
2人は家の前でそれぞれ刀と槍を構える。
アイヴォスは素手相手なら刀は抜かないつもりだったが、相手も武器を持っているのでここは抜いて
応戦するべきだろうと判断したからだった。
「やってやんぜ! 覚悟しやがれぇえええええっ!!」
無駄にハイテンションになるコルネールと、それを冷ややかな目で見つめるアイヴォスと、そしてハラハラしながら2人の行く末を
家の前で見守るアーシアと言う構図になった。
二刀流のアイヴォスに対してコルネールは素早く槍を突き出す。迷いは無い。
「……っん!」
だがアイヴォスはその槍を大小2本の刀の内の大の方で弾き、そのままがら空きのコルネールの足を素早く
革靴を履いた自分の足で払い飛ばす。
「うお!?」
空手ベースであり、軍で培った実戦形式の体術に関してもエリートクラスのアイヴォスはこんな所でビビる訳にはいかない。
「ちっ……少しはやるみたいじゃねえか!! なら上等だよぉ!!」
コルネールは油断していた自分にその叫びで活を入れ、再び槍を振り回してコルネールはアイヴォスに向かって行く。
スピードを乗せたコルネールの突き、薙ぎ払い、そして振り下ろし等をアイヴォスはギリギリで回避して行く。
だが、まだアイヴォスには余裕がある。
避けられないスピードでは無い以上、自分の動体視力でしっかりと見てからでも回避は可能だった。
「悪くは無い、が……」
突きを繰り出して来たコルネールのその槍を身体を捻って回避し、そのままぐるりと身体を回転させて
左の裏拳でコルネールの顔面を殴り飛ばす。
「ぐぁっ!!」
「まだまだ甘い」
コルネールがドサッと地面に倒れ込んだのを見て、アイヴォスはもう使う必要は無いと刀を2本とも腰の鞘にしまう。
頬の痛みに耐えつつ起き上がったコルネールは、それを見て再びヒートアップする。
「くっそ、なめんじゃねえええええええ!!」
再び槍を持ってアイヴォスにコルネールは向かうが、アイヴォスはそのままコルネールの右腕を思いっ切り捻り上げて槍を落とし、
グイッとコルネールの右肩の関節を回してやる事で前方にコルネールの身体を半回転させて背中から叩きつけた。
「ぐあ!」
背中から叩き付けられたコルネールだったが、手首を掴まれたままでも体勢を再び立て直して起き上がる。
しかしアイヴォスはそれを待っていたかの様に手首から手を離したかと思うと、コルネールの腹に空いている右手でボディブローを1発。
「ぐぅ!?」
みぞおちを的確に捉えられてコルネールが怯んだ所で、若干前のめりになった彼の身体をアイヴォスは全力で持ち上げて
地面にコルネールの背中を叩き付ける。
「がはぁ……っ!?」
「私は別に殺し合いをしたい訳じゃ無い。でもこのままだとそうなるかも知れないぞ」
アイヴォスは、今しがた投げ落としたコルネールの顔を見下ろしながらそう言う。
だがここで、アイヴォスからは本来コルネールが感じる事の出来る筈のあるものが無い事にコルネール本人が気が付いた。
「……テメエ、魔力が無いのか?」
「ああ、どうもそうらしい」
「そうらしいって……テメエ、一体何なんだよ?」
コルネールは何とか立ち上がって、油断無く槍を再び構えてそう言った。
魔力が無い事は最初に気が付かれるかと思っていたが、ヒートアップしていた事でそれに気が付くのが遅れてしまったらしい。
しかしそんな事は今のアイヴォスの問題では無い。
今の問題は、せっかくこのままアーシアの手引きがあって王都から脱出する手筈だった計画がこのコルネールのせいで
全てメチャクチャになりつつある事だった。
……が、次のコルネールの口から出て来たセリフが切っ掛けで事態は驚きの展開を見せる!!
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